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そして王宮
30 ザラド
シャルアのアクアマリンの目が、
じっと。
じっと、見極めるようにザラドを見ていた。
呆けたザラドを上手くリードして。
繋いだ手で、ホールをステップで誘導している。
いつものアルカイックスマイルなのに。
ザラドにぐんと迫ってきた。
シャルアはいつも一歩引いている。
その出来の良すぎる頭は、正直目障りでザラドのコンプレックスを刺激した。
「シャキッとしなさい。皆んなみてるわよ。」
今も、弟にするように諭している。
動揺していたザラドは、はっとして。
自分の粗を見つけようと目を皿の様にしている貴族の前で、ぐっと背すじを伸ばした。
「レリアから伝言があるの。」
その言葉に、かっとマグマが噴き上がる。
そうだレリア。
あの温室の妖精。
俺を騙して。
俺を嗤って。
金色の目で。
俺を、
俺を、
ガッ‼︎
と足の甲を踏まれた。
痛みが背骨に駆け上る。
ぐるぐるしてた思考がぱっと霧散して、ザラドは痛みにシャルアを睨んだ。
「貴方、馬鹿みたいに裏表がないのよ。それはすっごく好き。でも、それじゃ社交界では無理なのよ。もっと考えなさい。」
そう、いつも上から言う。
そしてそれは大概正しくて、反論出来ずに怒鳴り返すしかない。
むっとするザラドに、
笑顔!と、短く告げてシャルアは囁く。
「自分は騙された。自分は嗤われている。
そんないじけた事をブツブツ思うより、現実に目を向けなさいよ。」
いつまでもリードされるのに業を煮やして、腰に当てた手に力を入れたが、シャルアは笑顔のまま軽くいなした。
「私だって結婚はごめんだって思ってるわ。
それにレリアは大事な従兄弟よ。
貴方の事も小さい時から知ってる。
だから、これ以上ぐちゃぐちゃにしたくないの。」
「はあっ?」
何を言う気だ。
何も変わらない。
自分の心に抗うように、ザラドはぐんと横を向き、ダンスのステップを速くした。
難なくそれに付いていきながら、シャルアは手に力を入れてザラドの耳元に顔を近づける。
「考えて。悪役令嬢と"真実の愛"について」
キーワードのように、その言葉で赤い闇が噴き上がった。
そうだ。
ソレが俺をこんな境遇に落とした。
そいつの為に皆んなが俺を嘲笑う。
レリアですら。
レリアですら、俺を嗤っていたんだ。
ねっとりした赤い闇が頭を染めていく。
ずきんずきんと、傷みが脈動する。
何も考えられなくなっていく…
「貴方のお母様は、本当に清く正しいの?」
その言葉は、闇の中で、白い刃物のように突き刺さった。
「世間で言う悪役令嬢は、本当にお母様を虐めてらしたの?」
「は、母上は…」
シャルアはダンスの動きのまま、王太子妃を見る位置にザラドを無理矢理リードした。
ザラドの視界には、自分の母親がいる。
ストロベリーブロンドの髪を高く結い上げ、ティアラを飾り。
ドレスは最新の女の子向けのものだ。
落ち着きのある熟女には、ちょっといやかなりイタい。
あちこちに付いた宝石が、キラキラ光り、そのギラギラした目をさらに目立たせていた。
自分と同じアイスブルーの目は血走っている。
壇上で人目があるというのに、イライラと爪を噛みながら背中を丸めている。
その隣にいる父上は、青褪めたまま、レリアの方を凝視していた。
あの二人が清く正しい真実の愛だって?
「お前なんか産まなきゃ良かった!」
「そいつを見えない所にやって!」
そんな、ヒステリックな声が頭にこだまする。
あの女が正しいだって?
虐められる女の子だって?
赤い闇が薄れていく。
かっとして周りを見ない自分は、あの女に似てるに違いない。
そんな自分が正しくあれるというのか…
「レリアから伝言よ。」
ザラドが落ち着いたのを見て、シャルアは囁いた。
『話がしたいので、明後日、あそこで』
ダンスが終わって礼をして。
別れる。
もうザラドの頭は冷え切って。
でも、何も考えられなくなっていた。
じっと。
じっと、見極めるようにザラドを見ていた。
呆けたザラドを上手くリードして。
繋いだ手で、ホールをステップで誘導している。
いつものアルカイックスマイルなのに。
ザラドにぐんと迫ってきた。
シャルアはいつも一歩引いている。
その出来の良すぎる頭は、正直目障りでザラドのコンプレックスを刺激した。
「シャキッとしなさい。皆んなみてるわよ。」
今も、弟にするように諭している。
動揺していたザラドは、はっとして。
自分の粗を見つけようと目を皿の様にしている貴族の前で、ぐっと背すじを伸ばした。
「レリアから伝言があるの。」
その言葉に、かっとマグマが噴き上がる。
そうだレリア。
あの温室の妖精。
俺を騙して。
俺を嗤って。
金色の目で。
俺を、
俺を、
ガッ‼︎
と足の甲を踏まれた。
痛みが背骨に駆け上る。
ぐるぐるしてた思考がぱっと霧散して、ザラドは痛みにシャルアを睨んだ。
「貴方、馬鹿みたいに裏表がないのよ。それはすっごく好き。でも、それじゃ社交界では無理なのよ。もっと考えなさい。」
そう、いつも上から言う。
そしてそれは大概正しくて、反論出来ずに怒鳴り返すしかない。
むっとするザラドに、
笑顔!と、短く告げてシャルアは囁く。
「自分は騙された。自分は嗤われている。
そんないじけた事をブツブツ思うより、現実に目を向けなさいよ。」
いつまでもリードされるのに業を煮やして、腰に当てた手に力を入れたが、シャルアは笑顔のまま軽くいなした。
「私だって結婚はごめんだって思ってるわ。
それにレリアは大事な従兄弟よ。
貴方の事も小さい時から知ってる。
だから、これ以上ぐちゃぐちゃにしたくないの。」
「はあっ?」
何を言う気だ。
何も変わらない。
自分の心に抗うように、ザラドはぐんと横を向き、ダンスのステップを速くした。
難なくそれに付いていきながら、シャルアは手に力を入れてザラドの耳元に顔を近づける。
「考えて。悪役令嬢と"真実の愛"について」
キーワードのように、その言葉で赤い闇が噴き上がった。
そうだ。
ソレが俺をこんな境遇に落とした。
そいつの為に皆んなが俺を嘲笑う。
レリアですら。
レリアですら、俺を嗤っていたんだ。
ねっとりした赤い闇が頭を染めていく。
ずきんずきんと、傷みが脈動する。
何も考えられなくなっていく…
「貴方のお母様は、本当に清く正しいの?」
その言葉は、闇の中で、白い刃物のように突き刺さった。
「世間で言う悪役令嬢は、本当にお母様を虐めてらしたの?」
「は、母上は…」
シャルアはダンスの動きのまま、王太子妃を見る位置にザラドを無理矢理リードした。
ザラドの視界には、自分の母親がいる。
ストロベリーブロンドの髪を高く結い上げ、ティアラを飾り。
ドレスは最新の女の子向けのものだ。
落ち着きのある熟女には、ちょっといやかなりイタい。
あちこちに付いた宝石が、キラキラ光り、そのギラギラした目をさらに目立たせていた。
自分と同じアイスブルーの目は血走っている。
壇上で人目があるというのに、イライラと爪を噛みながら背中を丸めている。
その隣にいる父上は、青褪めたまま、レリアの方を凝視していた。
あの二人が清く正しい真実の愛だって?
「お前なんか産まなきゃ良かった!」
「そいつを見えない所にやって!」
そんな、ヒステリックな声が頭にこだまする。
あの女が正しいだって?
虐められる女の子だって?
赤い闇が薄れていく。
かっとして周りを見ない自分は、あの女に似てるに違いない。
そんな自分が正しくあれるというのか…
「レリアから伝言よ。」
ザラドが落ち着いたのを見て、シャルアは囁いた。
『話がしたいので、明後日、あそこで』
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別れる。
もうザラドの頭は冷え切って。
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