ざまぁされた悪役令嬢の息子は、やっぱりざまぁに巻き込まれる

たまとら

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その後

52 モリナロル ③

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いまモリナロルが居るのは、市場の真ん中で自家の所有する事務所の4階だ。
許可の無い者は入り込めない、プライベートな部屋だった。

市場を睥睨するその窓はモリナロルのお気に入りで、魔道具でこちらを見られる事なく
下の市場を観察する事が出来る。

誰も入り込めないように外には護衛兵を置き、結界まで張ってある部屋だった。



「凄く面白いことにしてるね♡」

感情のこもらない声が真後ろからした。
モリナロルは驚きで飛び上がりそうになった。
振り向いたそこに、見知らぬ者がいた。


黒い真っ直ぐな髪を肩の上で切り揃え。
切れ長な一重の目は黒曜石の様にキラキラ光っている。
どこかぼうっと平たく、つるんと卵のような顔はこれと言った特徴が無い。

正直、小さいが子供か大人か判別し難かった。




ふぅん。

と、彼は口元に指先を当てた。

「プライベートな空間にいきなり人が現れる。パーソナルスペースを無視して立っている。
なのに叫びも怒りもしないなんて、
君、やっぱり面白いや。」

まぁ、扉の外の護衛兵を呼んでも無駄だったよ。
ほら、この遮断する魔道具で、私の結界を上書きしてるからね。



それが、彼との出会いだった。


彼は名前なんてただの記号だから好きに呼んでほしいと言った。
子供なのか大人なのか。
女なのか男なのか、正直わからない。
人というにも何処となく違和感がある。


彼は人を動かすのは面白いといった。
ちょっと押すだけで予想外の変貌を遂げる人間というものは、凄く興味深いと言った。
その笑顔は綺麗だけど、背筋が凍る様だった。

彼は裏社会で"奴"とか"あの方"と呼ばれる恐怖の錬金術師だということは調査して直ぐにわかった。
だが、大男というものも美女というものもいる。
さらに人によって認識はさまざまだ。

そうやって訳がわからなくなった調査を、彼は肩をすくめて笑う。

「私を映して、人は自分の恐れるモノを見る。
だから私を正しく認識出来ないのさ。」

モリナロルが見ている姿も、本当なのかわからない。
知らないうちに誰かを投影しているのかもしれない。



彼はいつもふらりと現れる。
そして面白い事をして消える。
~~掴みどころが無かった。

その姿は初めて会った時と変わらない。
つるりとした頬。
何故か忌避感がわく綺麗な姿。


出会ってから何年か経って、祖母の葬儀に出た時。
お別れの花を遺体に捧げた時。
唐突にモリナロルは理解して。

そう、彼の違和感は…。

生きていないのだ。

彼は笑い、食べて、喋る。
でも生きていないのだ。

体の細胞が呼吸をしていない。
人の骸。
人の姿をしているのに、それが生きていないというだけで、こうもよそよそしく薄気味悪くなるものなのか。


モリナロルがようやく悟ったことを察して、彼は現れた。

「そうだよ。このボディは自動人形だ。」

誇らしげに彼は告げた。

変えればいいから楽なのさ。」

……訳がわからない。
魔石で動く自動人形を、自分の体にするってどうゆうこと?

「まぁ、それはおいおいね。どうせ君は私が必要になるんだから。」

そう言って少年の彼は笑った。




学園に入学して。
しばらく空白の時間が出来た。

モリナロルはそこでミラーテに出会う。
彼女の望みを叶える為に、決められた合図で彼を呼び出した。

「ねぇ。この国に"真実の愛"というブームを起こしてみないか?」

そう、モリナロルが告げた時。

彼はその一重の目を好奇心で溢れた様に煌めかせ、三日月型に歪めてにんまりと笑った。
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