71 / 84
始まっていく
71 後始末
しおりを挟む
「まず、あのお薬を自分で飲むのよ。」
その女はアイスブルーの瞳を煌めかせて、にっこり笑った。
「それから口に含んでから、ザラドの頬を抑えて、口に流し込むのよ。ね♡すんごいお薬だから、もう止まれなくなるわよぉ。」
ねっとりとしたミラーテの声が市場の喧騒を、掻き消していく。
"月見の会"の警備の隙をついてザラドの部屋に忍び込むための手順を話しながら微笑むミラーテは、確かに美しかった。
紅い唇をきゅっと上げ、段取りを話すミラーテの姿に、声に、人は足を止める。
アレは"真実の愛"のお姫様じゃないのか?
人々は建物に浮かび上がった女の映像に、ざわざわと降り仰いだ。
「可愛い女よねぇ。そうやって騙されてザラドと心中してくれるんだから。うん♡本当に可愛いわぁ。」
甲高い声で笑う姿は、だんだんと人から言葉を奪っていく。
やがて口汚く罵る女に、辺りは音を無くした。
「んもぉ。しつこい‼︎
いいから目が金色に見える魔道具を作るのよ!産んだら直ぐに埋め込むんだから。そしたら私がこの国のマドンナになるのよ‼︎わかった!」
サモエドに映像を送っていた魔道具は、その日一斉にその映像を映し出した。
街の市場で。
騎士の訓練場で。
王宮の中で。
学園でも。
建物に鮮明な映像が投影された。
そこには王太子妃が笑う姿があった。
自分が国母として愛と尊敬を得るために、腹の子供に魔道具を作らせようとするミラーテ。
かつて産んだ王子を、"出来損ない"と罵って排除しようとするミラーテ。
ぼんやりとソレを見上げていた人々は、騎士は、文官は、真っ青になって王宮を降り仰いだ。
蜂の巣を突いたような騒ぎが王都中に湧き上がった。
どんなにモリナロルが情報操作しようと画策しても火は消せ無い。
デビュタントの夜会以来、びくびくと過ごしていた貴族も。
反撃の機会を伺っていた貴族も。
これを発端として王宮に足を向けた。
王宮の部屋でのんびりしていたミラーテは、引き摺り出されて王の前で髪を振り乱して叫ぶ。
『種無し』と揶揄されていた王太子は、それでも優しく
「罪は私にもあります。共に罰を受けます」
と、頭を垂れていた。
ザラドは被害者として部屋に保護された。
出自はともあれ公式に王子だ。
反論しようとするザラドに、セルカークは待てをかける。
膿を出し切ら無いと、サフィア親子を迎えに行けないと言われて黙るしか無かった。
サモエドはこのイベントを楽しんで打ち上げた。
王の執務机には、ミラーテとモリナロルが行って来た調査書をセルカークに託して置いてある。
これで隠しようもなく、情勢が変わる。
王太子妃はもっと堅固な牢獄に入れられるのは必至。
王太子も王位継承権が剥奪されるだろう。
モリナロルは罪人として裁かれるだろう。
あの家はすでに奥方が上手く固めている。
奴の首一つで治っていけばいい。
ザラドは王位継承権を返還したいと言っていた。
セルカークはサフィア様のいないままに王位継承権を復権させる事はしない。
レリアに至っては、いまだ王と王妃に会おうとしない。
こうやってみると、王位を継ぐものがいなくなる。
それは今まで放置していたツケだ。
王はどう判断するのやら。
~~ま、俺には関係ないけどね。
それよりも。
何故かセバスティンがいないのだ。
あの女にざまぁを返す為にひたすら証拠を集めていた、あのセバスティンが。
指定されたこの日に、
楽しいお祭り騒ぎのこの日に、
何故現れない!
サモエドの心の中にどんどんと黒いものが膨れ上がっていった。
その女はアイスブルーの瞳を煌めかせて、にっこり笑った。
「それから口に含んでから、ザラドの頬を抑えて、口に流し込むのよ。ね♡すんごいお薬だから、もう止まれなくなるわよぉ。」
ねっとりとしたミラーテの声が市場の喧騒を、掻き消していく。
"月見の会"の警備の隙をついてザラドの部屋に忍び込むための手順を話しながら微笑むミラーテは、確かに美しかった。
紅い唇をきゅっと上げ、段取りを話すミラーテの姿に、声に、人は足を止める。
アレは"真実の愛"のお姫様じゃないのか?
人々は建物に浮かび上がった女の映像に、ざわざわと降り仰いだ。
「可愛い女よねぇ。そうやって騙されてザラドと心中してくれるんだから。うん♡本当に可愛いわぁ。」
甲高い声で笑う姿は、だんだんと人から言葉を奪っていく。
やがて口汚く罵る女に、辺りは音を無くした。
「んもぉ。しつこい‼︎
いいから目が金色に見える魔道具を作るのよ!産んだら直ぐに埋め込むんだから。そしたら私がこの国のマドンナになるのよ‼︎わかった!」
サモエドに映像を送っていた魔道具は、その日一斉にその映像を映し出した。
街の市場で。
騎士の訓練場で。
王宮の中で。
学園でも。
建物に鮮明な映像が投影された。
そこには王太子妃が笑う姿があった。
自分が国母として愛と尊敬を得るために、腹の子供に魔道具を作らせようとするミラーテ。
かつて産んだ王子を、"出来損ない"と罵って排除しようとするミラーテ。
ぼんやりとソレを見上げていた人々は、騎士は、文官は、真っ青になって王宮を降り仰いだ。
蜂の巣を突いたような騒ぎが王都中に湧き上がった。
どんなにモリナロルが情報操作しようと画策しても火は消せ無い。
デビュタントの夜会以来、びくびくと過ごしていた貴族も。
反撃の機会を伺っていた貴族も。
これを発端として王宮に足を向けた。
王宮の部屋でのんびりしていたミラーテは、引き摺り出されて王の前で髪を振り乱して叫ぶ。
『種無し』と揶揄されていた王太子は、それでも優しく
「罪は私にもあります。共に罰を受けます」
と、頭を垂れていた。
ザラドは被害者として部屋に保護された。
出自はともあれ公式に王子だ。
反論しようとするザラドに、セルカークは待てをかける。
膿を出し切ら無いと、サフィア親子を迎えに行けないと言われて黙るしか無かった。
サモエドはこのイベントを楽しんで打ち上げた。
王の執務机には、ミラーテとモリナロルが行って来た調査書をセルカークに託して置いてある。
これで隠しようもなく、情勢が変わる。
王太子妃はもっと堅固な牢獄に入れられるのは必至。
王太子も王位継承権が剥奪されるだろう。
モリナロルは罪人として裁かれるだろう。
あの家はすでに奥方が上手く固めている。
奴の首一つで治っていけばいい。
ザラドは王位継承権を返還したいと言っていた。
セルカークはサフィア様のいないままに王位継承権を復権させる事はしない。
レリアに至っては、いまだ王と王妃に会おうとしない。
こうやってみると、王位を継ぐものがいなくなる。
それは今まで放置していたツケだ。
王はどう判断するのやら。
~~ま、俺には関係ないけどね。
それよりも。
何故かセバスティンがいないのだ。
あの女にざまぁを返す為にひたすら証拠を集めていた、あのセバスティンが。
指定されたこの日に、
楽しいお祭り騒ぎのこの日に、
何故現れない!
サモエドの心の中にどんどんと黒いものが膨れ上がっていった。
51
あなたにおすすめの小説
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで
Q矢(Q.➽)
BL
僕、吉田 嵐太はレッサーパンダの獣人である。
しかもアルファの勝ち組だ!
どんな女の子やオメガだって、僕の前ではめろめろだ!!
そんな僕がある日、におい惚れした相手とは…。
※本作品は獣人DKカップルのゆるラブオメガバースです。大学生になる終盤まで本格的なえちちシーンは出てきません。
*吉田 嵐太 (α)
私立 岩清水男子高等学校1年 Sクラス
獣種 レッサーパンダ 160/50→??
★さりげなく自己評価が高い傾向あり。
*壱与 瑞希 (ハイスペチートΩ)
私立 岩清水男子高等学校1年 Cクラス
獣種 グリズリー(ハイイログマ)
189/72 →192/74
★嵐太に盲目、育てたい俺のアルファ。
★前提
*純人類と動物の特性を持つ人類が混雑する世界。
*そのうえでオメガバースというα、 β、Ωという性別に別れています。
※オメガバース独自設定含みます。
※スローでゆっくり成長していくレッサー吉田とグリ壱与の恋を、基本ゆるく、時にはヤキモキしながら見守ってくだされば幸いです。
※11/30、本編完結。
多くの皆様にご覧いただき感謝に堪えません。最後まで楽しく書けましたのは皆様のお陰です。
嵐太と瑞希を愛して下さって本当にありがとうございました。
近々、卒業後の2人の生活を描いた短いお話を書きたいと思っております。
本当にありがとうございました(*^^*)
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
ノーマルの俺を勝手に婚約者に据えた皇子の婚約破棄イベントを全力で回避する話。
Q矢(Q.➽)
BL
近未来日本のようでもあり、中世の西洋のようでもある世界。
皇国と貴族と魔力が存在する世界。
「誰が皇子と婚約したいなんて言った。」
過去に戻った主人公が、自分の死を回避したいが故に先回りして色々頑張れば頑張るほど執着されてしまう話。
同性婚は普通の世界。
逃げ切れるかどうかは頑張り次第。
※
生温い目で優しく暇潰し程度にご覧下さい。
【完結済】王子を嵌めて国中に醜聞晒してやったので殺されると思ってたら溺愛された。
うらひと
BL
学園内で依頼をこなしていた魔術師のクリスは大物の公爵の娘からの依頼が入る……依頼内容は婚約者である王子からの婚約破棄!!
高い報酬に目が眩んで依頼を受けてしまうが……18Rには※がついています。
ムーン様にも投稿してます。
悪役令息の僕とツレない従者の、愛しい世界の歩き方
ばつ森⚡️8/22新刊
BL
【だって、だって、ずぎだっだんだよおおおおおお】
公爵令息のエマニュエルは、異世界から現れた『神子』であるマシロと恋仲になった第一王子・アルフレッドから『婚約破棄』を言い渡されてしまった。冷酷に伝えられた沙汰は、まさかの『身ぐるみはがれて国外追放』!?「今の今まで貴族だった僕が、一人で生きて行かれるわけがない!」だけど、エマニュエルには、頼りになる従者・ケイトがいて、二人の国外追放生活がはじまる。二人の旅は楽しく、おだやかで、順調に見えたけど、背後には、再び、神子たちの手がせまっていた。
「してみてもいいですか、――『恋人の好き』」
世界を旅する二人の恋。そして驚愕の結末へ!!!
【謎多き従者×憎めない悪役】
4/16 続編『リスティアーナ女王国編』完結しました。
原題:転んだ悪役令息の僕と、走る従者の冒険のはなし
りんご成金のご令息
けい
BL
ノアには前世の記憶はあったがあまり役には立っていなかった。そもそもあまりにもあいまい過ぎた。魔力も身体能力も平凡で何か才能があるわけでもない。幸いにも裕福な商家の末っ子に生まれた彼は、真面目に学んで身を立てようとコツコツと勉強する。おかげで王都の学園で教育を受けられるようになったが、在学中に両親と兄が死に、店も乗っ取られ、残された姉と彼女の息子を育てるために学園を出て冒険者として生きていくことになる。
それから二年がたち、冒険者としていろいろあった後、ノアは学園の寮で同室だった同級生、ロイと再会する。彼が手を貸してくれたおかげで、生活に余裕が出て、目標に向けて頑張る時間もとれて、このまま姉と甥っ子と静かに暮らしていければいいと思っていたところ、姉が再婚して家を出て、ノアは一人になってしまう。新しい住処を探そうとするノアに、ロイは同居を持ち掛ける。ロイ×ノア。ふんわりした異世界転生もの。
他サイトにも投稿しています。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる