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終結に向けて
77 レリアの帰還
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そこに降り立った時。
レリアは屋敷がうず高い残骸になっている事に愕然とした。
ブスブスと煙をあげる木材と外壁の崩れた匂いが、わっと全身を取り巻いた。
庭園の薔薇は熱と圧力の恐怖に怯えて、叫ぶように香りを放っている。
その匂いが混ざり合って結界の中を充満して、頭をわんわんと叩くような物になっていた。
しかもソレらはクリスタルの温室のような結界によって、キラキラと照らされている。
目までが沁みるように痛い。
ベルガーは直ぐに刺激のある匂いを風で巻き込んで撹拌した。
そのままレリアの周りを結界で覆って、臨戦態勢をとる。
初めてこの場に訪れたセルカークは、きょろきょろと頭を動かした。
全能力を使って探索する。
そして、
「サフィア‼︎」
と叫んで走り出した。
崩れた玄関ホールの前に人影があった。
大理石で作られた階段が、窓枠やカーテンをまとった壁の残骸を載せて、瓦礫の山の中にかろうじて聳えている。
そしてその前に、白い大きな繭と。
それを背に庇うように手を広げたサモエド。
その前に立つサフィアが見えた。
「サァフィアッ‼︎」
セルカークは全身を使ってありったけで叫ぶ。
声に振り向いたサフィアの元へと駆け寄って抱き締めようとするのを、白い腕がふっと停めた。
サフィアは小首を傾げた。
唇は半開きであどけない。
その濃葡萄色の瞳はキラキラと輝いて、不思議そうにセルカークを見つめている。
白銀の髪が緩やかに踊っている。
細い首と、ドレスによって持ち上げられた双丘。
たおやかな肩。
咲き始めた蕾のようなその姿に、二人は驚愕した。
"乙女"
ほとんど同時に、レリアとセルカークの頭の中に、その単語が焼き付いた。
レリアは学園に入ってから母様とは会っていなかった。
久しぶりに見る母様は、記憶の中と寸分違わない。
いや、それよりも若くなっている。
目の前の女性は母様だ。
母様なのに。
ほとんどシャルアと同年に見える。
学園に入学するからと挨拶を交わした時の母様よりも、随分と若返って見える。
セルカークは夢で何千何万とサフィアに会っていた。夢でしか会えていなかった。
自分がこの15年のうちに成熟化したように、サフィアとて肩の丸みや目元に熟成した姿があると思っていた。
でもこの目の前の女性はあの日のまま。
その手に口付けを落とし、神父の前で愛を誓ってくれた、あの日のまま。だ。
時の気配を感じさせないその姿に、一瞬二人は動きを止めた。
「あなた、だれ?」
15年もの時を封じ込めているその女性は、セルカークをひたりと見据えてそう尋ねた。
その口元が上がっていく…
「ベルガー!頼むっ、ベルガー‼︎」
サフィアの視線から解き放たれ、サモエドは糸が切れた様にぐらりと膝を着いた。
レリアとベルガーが、見つめ合うサフィアとセルカークから離れ、サモエドを抱き起こす。
「頼む。レリアは俺がなんとしても守る。だから塔へセバスティンを運んでくれ。
塔の回復の棺の仲に入れて来てくれ!」
自分を起こしたベルガーの手をぎゅっと握ってサモエドは懇願した。
その指先は冷たい。
「このままだとセバスティンは保たない。
頼む!」
ボサボサのダークブラウンの髪はあちこち焦げていた。
逡巡するベルガーの手をレリアも掴む。
「頼む。僕からも頼む。おまえなら転移出来る。セバスティンを助けてくれ。」
そう、セバスティンはレリアの小さな世界になくてはならない者だ。
レリアの安全で迷うベルガーに、安心できるようにとサモエドは目の前で防護結界を重ねた。
しかもそれは今この屋敷を覆う八角形の核の物だ。
今までにないその防護壁が、キラキラと身体の周りを回り始めた。全てを弾く結界だ。
「頼む。急いでくれ!」
サモエドの声に頷くと、ベルガーは転がる繭を抱き上げてふわりと転移した。
レリアは屋敷がうず高い残骸になっている事に愕然とした。
ブスブスと煙をあげる木材と外壁の崩れた匂いが、わっと全身を取り巻いた。
庭園の薔薇は熱と圧力の恐怖に怯えて、叫ぶように香りを放っている。
その匂いが混ざり合って結界の中を充満して、頭をわんわんと叩くような物になっていた。
しかもソレらはクリスタルの温室のような結界によって、キラキラと照らされている。
目までが沁みるように痛い。
ベルガーは直ぐに刺激のある匂いを風で巻き込んで撹拌した。
そのままレリアの周りを結界で覆って、臨戦態勢をとる。
初めてこの場に訪れたセルカークは、きょろきょろと頭を動かした。
全能力を使って探索する。
そして、
「サフィア‼︎」
と叫んで走り出した。
崩れた玄関ホールの前に人影があった。
大理石で作られた階段が、窓枠やカーテンをまとった壁の残骸を載せて、瓦礫の山の中にかろうじて聳えている。
そしてその前に、白い大きな繭と。
それを背に庇うように手を広げたサモエド。
その前に立つサフィアが見えた。
「サァフィアッ‼︎」
セルカークは全身を使ってありったけで叫ぶ。
声に振り向いたサフィアの元へと駆け寄って抱き締めようとするのを、白い腕がふっと停めた。
サフィアは小首を傾げた。
唇は半開きであどけない。
その濃葡萄色の瞳はキラキラと輝いて、不思議そうにセルカークを見つめている。
白銀の髪が緩やかに踊っている。
細い首と、ドレスによって持ち上げられた双丘。
たおやかな肩。
咲き始めた蕾のようなその姿に、二人は驚愕した。
"乙女"
ほとんど同時に、レリアとセルカークの頭の中に、その単語が焼き付いた。
レリアは学園に入ってから母様とは会っていなかった。
久しぶりに見る母様は、記憶の中と寸分違わない。
いや、それよりも若くなっている。
目の前の女性は母様だ。
母様なのに。
ほとんどシャルアと同年に見える。
学園に入学するからと挨拶を交わした時の母様よりも、随分と若返って見える。
セルカークは夢で何千何万とサフィアに会っていた。夢でしか会えていなかった。
自分がこの15年のうちに成熟化したように、サフィアとて肩の丸みや目元に熟成した姿があると思っていた。
でもこの目の前の女性はあの日のまま。
その手に口付けを落とし、神父の前で愛を誓ってくれた、あの日のまま。だ。
時の気配を感じさせないその姿に、一瞬二人は動きを止めた。
「あなた、だれ?」
15年もの時を封じ込めているその女性は、セルカークをひたりと見据えてそう尋ねた。
その口元が上がっていく…
「ベルガー!頼むっ、ベルガー‼︎」
サフィアの視線から解き放たれ、サモエドは糸が切れた様にぐらりと膝を着いた。
レリアとベルガーが、見つめ合うサフィアとセルカークから離れ、サモエドを抱き起こす。
「頼む。レリアは俺がなんとしても守る。だから塔へセバスティンを運んでくれ。
塔の回復の棺の仲に入れて来てくれ!」
自分を起こしたベルガーの手をぎゅっと握ってサモエドは懇願した。
その指先は冷たい。
「このままだとセバスティンは保たない。
頼む!」
ボサボサのダークブラウンの髪はあちこち焦げていた。
逡巡するベルガーの手をレリアも掴む。
「頼む。僕からも頼む。おまえなら転移出来る。セバスティンを助けてくれ。」
そう、セバスティンはレリアの小さな世界になくてはならない者だ。
レリアの安全で迷うベルガーに、安心できるようにとサモエドは目の前で防護結界を重ねた。
しかもそれは今この屋敷を覆う八角形の核の物だ。
今までにないその防護壁が、キラキラと身体の周りを回り始めた。全てを弾く結界だ。
「頼む。急いでくれ!」
サモエドの声に頷くと、ベルガーは転がる繭を抱き上げてふわりと転移した。
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