24 / 63
押しかけ護衛はNoとは言えない
5 世界のスタンダードギャップ
しおりを挟む
ジャダはいわゆるラノベの世界のまんまな男だった。
まず王都から遠い領地の、領主一族だ。
番も無く後を継ぐ事もなく、冒険者ギルドに自分の立身を掛けていた。
ちょっと甘えん坊な従兄弟に泣きつかれて護衛の仕事も受けたりする。
そんなナイスガイでマッチョな男の主食はやっぱり干し肉だ。
齧ってワインで流し込む他は、その辺にあるモノを刻んで煮てぶち込む。
それを基本に生きて来た。
実家や王都のタウンハウスでは、そりゃ豪華で美味い食事が出てくる。
それはコックという生き物のおかげだと思い込んでいたから、自分で生み出せるものでは無いと思っていた。
自分が扱える食べ物は干し肉一択だと信じていた。
その信念がレンに全否定されたのだ。
その玉砕具合は、飛んできたシャトルをラケットどころかロケットランチャーに原型留めないくらいにメタメタにされた様な激しさだった。
ジャダは反撃の言葉すら浮かばずに棒立ちになっていた。
今までおとなしくて我慢強くて可愛いと思っていたレンが
差し詰めポメラニアンがブラッドウルフに変貌したような衝撃だった。
「どうせ街で買い物したり、やがて慣れる為に出るんだからさ」
耳を垂れたようなジャダに、レンはぐいぐいと熱く迫ってくる。
買い物!それも食材‼︎
俺は煮物も炒め物も、コレよりマシに作れる自信があるぞっ‼︎
その迫力と激情に、ジャダは押し流されて行った。
スケジュール的に一週間後に買い物コースのつもりが大幅にずれて来た。
真面目にクソの付くジャダは、ここで膝を屈した訳だった。
思えば"なんとか主導権を握ってね"とリンドルム担当官に念を押されていた関係が、この時に崩壊したのだ。
飛び出さない。
人に付いてったりしない。
そんなお子様な注意を繰り返されて、額に怒りマークを浮かべたままそれでもレンは外に出た。
道行く人はやっぱり賑やかな色合いだ。
女の人はふんわりと袖の膨らんだブラウスと、足首まであるスカートを履いている。男の人は薄茶色のシャツに黒っぽいズボンとベストやジャケットを着ていて、腰から剣をぶらさげていたりしてる。
緑やオレンジの色が溢れる髪色の中で、メッシュ入りの黒髪は地味で目立たずに人目を引かないのに良し!と思った。
「ジャダさん!今日はゴードマトンの串焼きだよ!」
「ジャダさん‼︎メーブナがはいってるよっ!」
キョロキョロ歩いていると物売りの女性から声が掛かる。
その目は明らかに♡だ。
だろうねー ジャダはイケメンマッチョな上に腰の低い出来杉くんだ。
そのスッと伸びた背筋も、わんこ系の笑顔もグッときちゃうよね。
うんうん。
人の恋の攻防戦にニヤついていたら、足元の石畳にすっとかげが横切った。
振り仰ぐと、建物の間の空にでっかいナニかがとんでいる。
あのシルエット。
デカいあのシルエットは。
先細りのごつい尻尾は…
「ドラゴンだぁ‼︎」
レンは石畳を蹴った。
飛んでいく跡を追おうとした身体が、襟を掴まれてぐえっと跳ねる。
ムッとして振り向くとジャダの目が怒っていた。
……すいません…
お子様注意を聞かなかったレンの手はぎゅっと捕獲された。
デカい手に握り込まれて振り払えない。
いや…男同士で手繋ぎって…どんだけダメな子供やねん。
がっくりしたのはレンだけで、
ひゃあぁぁぁっと甲高い声があちこちから上がった。
「あんた誰だい⁉︎」
デカい袋を抱えた洗濯のおばちゃんがストレートに聞いて来た。
「えっと、俺、ジャダの…」言いかけて止まった。
同郷という設定だ。でも俺は何になるんだろう?
友達?親戚の子?あれ?
「あ、レンは…」
言いかけたジャダをおばちゃん達(集まって来ていた)が手で止める。
はあぁんという満足そうな顔のまま、ぽんとレンの肩を叩いた。
「いいんだよ、何も言わなくったって」
「ジャダさんはいい男なのになんで独り身なんだろうって言ってたんだよ」
「あんたがもういたんだねぇ」
「安心おし。あたし達はあんたの味方だよ!」
「ジャダさんはいっつも惣菜買ってくから、身体に良くないっておもってたんだよね」
「嫁さんとして旦那の健康管理もちゃんとしなよ」
「安くて美味い野菜の店を教えたげるからね!」
怒涛のように押してくる言葉は、レンの男心にヒビを入れた。
違う。
そうじゃ無い!
そんな弱々しい声はおばちゃん達に聞こえなかった。
「弟という事にしましょう‼︎」
その夜、ちゃんとしたスープと野菜炒めを皿に盛ってからレンは主張した。
まず王都から遠い領地の、領主一族だ。
番も無く後を継ぐ事もなく、冒険者ギルドに自分の立身を掛けていた。
ちょっと甘えん坊な従兄弟に泣きつかれて護衛の仕事も受けたりする。
そんなナイスガイでマッチョな男の主食はやっぱり干し肉だ。
齧ってワインで流し込む他は、その辺にあるモノを刻んで煮てぶち込む。
それを基本に生きて来た。
実家や王都のタウンハウスでは、そりゃ豪華で美味い食事が出てくる。
それはコックという生き物のおかげだと思い込んでいたから、自分で生み出せるものでは無いと思っていた。
自分が扱える食べ物は干し肉一択だと信じていた。
その信念がレンに全否定されたのだ。
その玉砕具合は、飛んできたシャトルをラケットどころかロケットランチャーに原型留めないくらいにメタメタにされた様な激しさだった。
ジャダは反撃の言葉すら浮かばずに棒立ちになっていた。
今までおとなしくて我慢強くて可愛いと思っていたレンが
差し詰めポメラニアンがブラッドウルフに変貌したような衝撃だった。
「どうせ街で買い物したり、やがて慣れる為に出るんだからさ」
耳を垂れたようなジャダに、レンはぐいぐいと熱く迫ってくる。
買い物!それも食材‼︎
俺は煮物も炒め物も、コレよりマシに作れる自信があるぞっ‼︎
その迫力と激情に、ジャダは押し流されて行った。
スケジュール的に一週間後に買い物コースのつもりが大幅にずれて来た。
真面目にクソの付くジャダは、ここで膝を屈した訳だった。
思えば"なんとか主導権を握ってね"とリンドルム担当官に念を押されていた関係が、この時に崩壊したのだ。
飛び出さない。
人に付いてったりしない。
そんなお子様な注意を繰り返されて、額に怒りマークを浮かべたままそれでもレンは外に出た。
道行く人はやっぱり賑やかな色合いだ。
女の人はふんわりと袖の膨らんだブラウスと、足首まであるスカートを履いている。男の人は薄茶色のシャツに黒っぽいズボンとベストやジャケットを着ていて、腰から剣をぶらさげていたりしてる。
緑やオレンジの色が溢れる髪色の中で、メッシュ入りの黒髪は地味で目立たずに人目を引かないのに良し!と思った。
「ジャダさん!今日はゴードマトンの串焼きだよ!」
「ジャダさん‼︎メーブナがはいってるよっ!」
キョロキョロ歩いていると物売りの女性から声が掛かる。
その目は明らかに♡だ。
だろうねー ジャダはイケメンマッチョな上に腰の低い出来杉くんだ。
そのスッと伸びた背筋も、わんこ系の笑顔もグッときちゃうよね。
うんうん。
人の恋の攻防戦にニヤついていたら、足元の石畳にすっとかげが横切った。
振り仰ぐと、建物の間の空にでっかいナニかがとんでいる。
あのシルエット。
デカいあのシルエットは。
先細りのごつい尻尾は…
「ドラゴンだぁ‼︎」
レンは石畳を蹴った。
飛んでいく跡を追おうとした身体が、襟を掴まれてぐえっと跳ねる。
ムッとして振り向くとジャダの目が怒っていた。
……すいません…
お子様注意を聞かなかったレンの手はぎゅっと捕獲された。
デカい手に握り込まれて振り払えない。
いや…男同士で手繋ぎって…どんだけダメな子供やねん。
がっくりしたのはレンだけで、
ひゃあぁぁぁっと甲高い声があちこちから上がった。
「あんた誰だい⁉︎」
デカい袋を抱えた洗濯のおばちゃんがストレートに聞いて来た。
「えっと、俺、ジャダの…」言いかけて止まった。
同郷という設定だ。でも俺は何になるんだろう?
友達?親戚の子?あれ?
「あ、レンは…」
言いかけたジャダをおばちゃん達(集まって来ていた)が手で止める。
はあぁんという満足そうな顔のまま、ぽんとレンの肩を叩いた。
「いいんだよ、何も言わなくったって」
「ジャダさんはいい男なのになんで独り身なんだろうって言ってたんだよ」
「あんたがもういたんだねぇ」
「安心おし。あたし達はあんたの味方だよ!」
「ジャダさんはいっつも惣菜買ってくから、身体に良くないっておもってたんだよね」
「嫁さんとして旦那の健康管理もちゃんとしなよ」
「安くて美味い野菜の店を教えたげるからね!」
怒涛のように押してくる言葉は、レンの男心にヒビを入れた。
違う。
そうじゃ無い!
そんな弱々しい声はおばちゃん達に聞こえなかった。
「弟という事にしましょう‼︎」
その夜、ちゃんとしたスープと野菜炒めを皿に盛ってからレンは主張した。
84
あなたにおすすめの小説
従者は知らない間に外堀を埋められていた
SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL
転生先は悪役令息の従者でした
でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません
だから知らんけど精神で人生歩みます
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる