足元に魔法陣が湧いて召喚されたら、異世界の婚活だった件

たまとら

文字の大きさ
31 / 63
押しかけ護衛はNoとは言えない

12 可愛いは許しの呪文じゃ無い ジャダ

しおりを挟む
黒い髪のつむじから、銀の光が流れている。
肩に届きそうな髪は下ろされていて、歩くたびにふわりと浮いて広がって銀の光をちかりと弾く。
ちょっと足元が躍っているのを、多分本人は気がついていない。
藍色の瞳の中に銀河がキラキラと瞬いて、嬉しそうなレンから目が離せない。
こんな街中に子綺麗で可愛い能天気小僧がいたら、すんごく目立つに決まってる。
すれ違う奴等が口を開けて見惚れているから、目力を込めて追い払った。

ギルドにどんな思い入れがあるのか。
レンはギルド目指して頑張った。
もともと学ぶ事に慣れていたのか、地理も歴史も魔法陣の書き方も。
真面目にコツコツと頑張った。

環境の変化でメンタルを心配してたのに、ありがたい事にまるっきり杞憂に終わった。
そして俺から合格をもぎとって、晴れてギルドに向かっている。

ギルドは国中にあるし、登録は身分証としてだと思ってたのはどうも俺だけだったようで、レンは一直線に頑張った。

浮足だっていたレンは、ギルドに近付くと増えていく冒険者達の
ゴツくて小汚い人相と獲物を見る視線を敏感に察知して、スッと俺の後ろに回り込んだ。ふっふっふ。可愛いじゃないか。
そのままローブで顔を隠させてから、ギルドに入った。


レンは建物の中で立ち止まってキョロキョロしている。
珍しそうで楽しそうで何よりだ。
ああ、人の空いてる時に来て良かった。

フードには軽く認識阻害を付与してあるから、外さなければ絡まれる事は無い。
と思ってたのに…

ぬあぁんで、自分からフードをとるっ‼︎
挨拶をきちんとって、何処の坊っちゃまだ‼︎

可愛いからって許されると思うなよ。

指示に従えないメンバーがいると連携が取れなくてパーティは全滅するんだぞ!

目の前のタコは勿論、向こうの酒場でもひゆっといきを飲んだ音がした。

くっそ。
もう一度言う。
可愛いからって許さんぞ。

ジャダの怒りに気付かずに、レンはひょこひょこと入り口横の掲示板に行く。
ジャダは気配察知で酒場から何人かが動き出したのがわかった。
うん。ちょっと痛い目見ないとわからないよな。実地研修ってヤツだ。
ジャダは相手に殺気や暴力の気配が無いことを確認して、背中を向けたままにした


レンが目を見開いている。
口を半開きにした顔は真っ赤だ。
黒曜石が涙の膜でうるうるとぬめって、藍色の中の銀河は点滅してる
………そんな切羽詰まった顔、見たことないぞ‼︎
ほどほどに振り向いたジャダはソレを見て胃の辺りがしくっと軋んだ。

その男は両腕を壁に付けて、その中にレンを囲っていた。

近い!
近いぞっ‼︎

しかもその手は髪に滑らせて頬を撫でて顎へと伸びていく。

ばっきゃろぉっ!

ダッシュで男の襟首を掴むと横に投げた。


「ジャダッあぁ‼︎」

叫びと一緒にレンが飛び込んでくる。
おわっ‼︎ 咄嗟に踏み込んで受け止める。
レンの手がぎゅっとシャツをつかんで胸に縋り付いた。
細かくぶるぶる震えている。
怖かったのかときゅうん♡と同時に
くんくんくん、と匂いを嗅がれた。

レンの髪がぐりぐりと胸を擦る。
ふんふんふん、レンの頬がぴったりとくっつく。
動揺しながらも抱きついたレンを抱え上げた。

はっはっは、くんくんくん。
子犬の様にせわしなく呼吸をしながらレンが胸にくっつく。
高い体温と柔らかい身体に眩暈がしそうだ。

か、可愛いじゃないかぁ……
いや、許さないけどな。

そんなに怖かったのか?
これで懲りてくれるよな?うん。

周りからの生温い視線の中で、密着されるのは満更でもなかった。
でれりとヤニ下がる自分を叱咤激励して、ジャダは無表情を作り上げた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

狂わせたのは君なのに

一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...