俺と竜。ときどき王子。

たまとら

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辺境で大暴れ

2 フィーリアの実

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夜なのに、空の蒼が透明に見える。
暗いのになんか明るい。
ふわふわした雲が薄い紫色してる。
桃色の月が丸い。
ものすごくでっかくて、手を伸ばしたら触れそうだ。 むりだけど。

フィーリアの実を収穫する為に、浮き足だった館からひっそり抜け、夕方には木の上で毛布を巻き付けてスタン張っている。
まだ花が咲き始めたばかりだ。
枝の上に立ち上がった花達。
大きな花びらが、ゆっくり目覚めていく。
甘い匂いが漂い始めて、ちょっとお腹が鳴った。

下を見ると草がざわざわ揺れている。
山のあちこちから魔獣が集まって来ているようだ。 大丈夫。
奴等は木に登れない。
こんなに高い所にいるんだ。大丈夫。
あとは満月の光で実に成るのを待つだけ。


キーランは衣装合わせをするクロディーヌを思い出していた。
クロディーヌはプラチナブロンドと紫の瞳をしている。はっきり言って美人だ。
その目に見つめられると姉様なのにドキドキする。王立学園は大半が貴族だ。
だからパーティやお茶会があるらしい。
そんな所に行ったら、もう、もう、大変に違いない。
なんでかって言うと、母様とそっくりだから。
もう少ししたら双子に見えると思う。
(あれ、それって母様の方がいろいろチートって感じ?)
そして母様は王太子にも求婚された社交界の花だったそうで。
そりゃ、腕まくりしてさやえんどうを剥いてる姿も、凄く絵になるし。
にっこりすれば、行商のおじさんもおばさんも手の上で転がしちゃうし。
いやぁ、美しいって武器だよね。って思う。

そんな母様がなんでココにいるかというと、駆け落ちしたから。
そう、顔はいいけど貧乏な田舎の脳筋マッチョに一目惚れしたそう。
それをあっけらかんと言う母様はかなり強い。

なんとか公爵令嬢だった母様は、やっぱりその美しさに口を開けて呆けた父様と駆け落ちした。そして勘当されたそうだ。
まぁ、無理も無い。
でも自分で髪を解かす事もなかった筈なのに、今じゃ、洗濯も乳搾りもメイド仕事もバッチリだ。

そんな母様が、姉様の入学で火がついた。
兄様は学園を卒業して王宮で文官をしている。
そこから社交界の流行りのドレスだの靴だの小物だのをチェックしている。
イラストを送らせて怒涛の様に支度している。
他の令嬢に気後れさせない様にって、いや、もう、すんごくリキ入ってる。

魔石は自分の魔力を込めて、恋人同士が交換したり、自分を守ったり、連絡とったりといろいろ使える。
でもウチは貧乏で、そこまで気も金も回っていない。だからおれは姉様に良い魔石を送りたい。


シャリン。

貝殻のような硬質な音がした。
見るとフィーリアの花が咲き誇っている。
マグノリアの様な形の、蝋燭と蝋燭台のようなこの花は、花弁が俺の手ぐらいあって、薄いけれど硬い。

そして、やっぱりこの木の花は白銀だ。
俺と同じ髪色。
町のフィーリアは紫色だから、やっぱり違う。来て良かった。
どんな魔石になるんだろう。

月の光を浴びながら、シャリン シャリンと綺麗な音を立てて花びらが散っていく。
中にあった蝋燭の様なめしべがキラキラとあわく光だす。
ふんわりと光が大きくなっていく。
ストロベリームーンの光のなで、フィーリアの実が、どんどん大きくなって行く。



ごくりと唾を飲んでその時を待つ。
地上の魔獣もぴくりともしない。
風が止んで音が全くしない。
耳が痛いくらいだ。

大きな光が実の中にキュゥっと吸い込まれていく…。
光がくっと無くなると、そこには月光を反射して金色の水晶が生えていた。


グワアァァ!

魔獣の叫びがする。
幹が体当たりを受けてゆさゆさ揺れた。
暗闇の中で目が不気味に赤く光ってる。

大丈夫。 
ここ迄は登って来れない。
大丈夫。
呪文の様に唱えながら、太い枝をぎゅっと腿に挟んで、手当たり次第ナイフで収穫していく。
次々と革袋に突っ込む。
腿でいざりながら枝の先に進む。
そして再び収穫する。

凄い。大きいもので10センチくらいある。
立派な魔石だ。
怖さも忘れて収穫していると、頭上に羽ばたきが沸き起こった。

はっと振り仰ぐと、桃色の月の中に幾つもの影が上を旋回している。

鳥?
夜なのに?

それがぐんぐん近づいて来ると、恐怖で鳥肌が立った。

竜。

竜だ。

竜が魔石を食べに来た。



そうだ。木の上に取り残された魔石は無かった。

馬鹿だ俺。
竜じゃん。
竜が食べに来るじゃん。



頭上で啄み出す巨大な影に俺は固まった。

上に竜。
下に魔獣。

俺 ピンチ!
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