俺と竜。ときどき王子。

たまとら

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辺境で大暴れ

13 お隣さんに会いました

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朝、母様にぎゅうぎゅうに顔を拭かれた。
耳の後ろをチェックされ、髪を解かされる。
上から2番目にいい服を着せられて、しっかり釦をとめられた。

「うん。」

右、左と仕上がりをチェックした母様は、満足げに頷いた。

そう、今日は父様に連れられてパパラチャに行く。ご挨拶というやつだ。

「いい、一点をじっと見てちゃダメよ。視線は遠くの山をぼんやり観てる感じにね。」

訳の分からないアドバイスを貰って、父様にぎゅうぎゅう抱き締められて、執務室に広げられた魔法陣に立つ。
なんか父様がぶつぶつと呟くと陣が光り始めた

あ。 前の景色が揺らぐ。
色が混ざって寄り集まって一点になって、ぐにゃりとなると、自分の中の血液がざっと頭から足へ落ちていった。
胃がぎゅっとなって眩暈がする。
足元に何も無い浮遊感が俺を突き放し、それが一気に硬い床になってふらついた。
喉から迫り上がる胃液をごくんと飲み込む。
目があげられない。
ドクンドクン頭で血が鳴る。

「大丈夫か。」

父様の声が耳もとでするけれど、顔を上げられなかった。
脇と脚を掬われて抱き上げられる。
…これ、お姫様抱っこって奴やん。
焦るけど、あかん。
何かリアクションしたらリバースしそう。

父様はソファにゆっくり寝かせてくれた。

「すまない。初めての転移で酔ったようだ。」

「無理も無い。教師が来るまでにまだ時間がある。寝かせといてやれ。」

聞き覚えの無い声。
ああ、パパラチャに転移したのか。
頭の中を忙しなく考えさせて、吐き気を散らす。
父様達はそのままそっと部屋を出て行った。



「なぁ、まつげ長いぜ。」
「男だよな。」
「ほっそいし。」

聞き慣れない声にハッとする。
ちょっと寝てたみたい。
しまったと思って目を開けたら、そこに二つの顔があった。
若葉色の目と青い目が丸く見開かれている。
そばかすのある日に焼けた顔は良く似てて、それがかっと真っ赤に染まった。

起き上がったキーランはどうしていいのか固まっている。
目の前にいる子供は、ポンヌの実のように赤くなったままモジモジもぞもぞ動いている…。


ドアがバタンと開いた。
「おっ、起きたのか。」

いつもの声にホッとする。
一緒に入って来たちょっと太めのおじさんが、にやりと笑う。

「なんだ、引き合わされるまえに覗きに来たのか」
そう言いながらその子供達の頭をがしがしする

「すみません、寝ちゃったみたいで。」
慌てて起き上がる。

「無理もない。初めての転移だ。」

おじさんはうんうんと頷く。
俺は失礼の無いように、仕込まれた通りに立ち上がるとかるく片膝をおって礼をした。

「キーラン・レ・ブルローティングです。
 はじめまして。」

「おお。」おじさんの目が丸くなる。
「立派なものだ。」
ちらりと目がそばかすの子達を見た。

「ベリル・レ・パパラチャです。」
「マラカ・レ・ジルコンです。」

声がかぶる。
体は父様に向けていても、俺に向けて声を上げる。
おじさんはくすくす笑いながら『60点だな』と言った。

「まあ、堅苦しい事は言わない。先生をお迎えに行きつつ、キーラン君を案内してあげなさい。」

「「はい。」」


こうやって、俺のパパラチャの時間が始まった。
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