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好きもの令息
6 攫われる 下
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ユアンが覚えているのは、知らない大きな男だった。
その男に抱えて運ばれた。
幼かったから大きな男だとおもっただけで、実はそうでも無かったのかも知れないけれど。
そうして連れ込まれたのは地下で。
澱んだ空気と、酸っぱいような匂いがある部屋だった。
そこのベッドの上にどすんと落とされた。
幼いユアンは大きな声で泣きたかった。
でも口に布を押し込まれ、喋れない。
鼻で息をするたびに、すえた匂いが体に入ってきて、この匂いで体中が染まってしまいそうで怖かった。
ツンとした嫌な匂いが目に沁みて、涙がぼろぼろと溢れる。
「ああ、涙も綺麗だなぁ」
ねっとりと聞いた事のない声がした。
振り仰ぐと知らない男がいた。
その男はねとねとした手で頬を、髪を、首筋を撫で回す。
ウサギの様に足を括られ。
手を縛られ。
芋虫の様に転がったまま、ユアンは嫌々と頭を振った。
「俺の天使。ああ、やっぱりおまえは俺の天使だ。」
その男にべろべろと涙を舐め回され、生臭い匂いがむっとして、自分のほっぺたが汚れていく気がする。
忌まわしくて、怖くて、ユアンはひくっひくっとしゃくりあげた。
「どこに翼を隠してるのかなぁ、」
ひっひっひっと、引き攣った様な笑い声を上げながら、男は服を脱がせようとする。
手を縛られている為に脱がせられないと悟ると、イライラと貧乏揺すりをしながらハサミを取り出した。
「ぃいかい?服を切るよ。あばれたらおまえも切れちゃうからねえ。じっとしてるんだよぉ」
見えない。
冷たい金属が体に当たって、
ジャキッ
ジャキッ
と、ハサミの音がする。
服⁉︎
本当に服だけ⁉︎
ジャキッ
刻む音に身動きも出来ず。
ジャキッ
息さえ殺してユアンはじっとしていた。
肌に空気が当たる。
澱んだ空気とはいえ、肌から衣が外されてスースーする。
縛った腕にたぐられた服は重い。
よっこらしょ。とユアンを抱えてひっくり返す。
ああ… と、粘着く甘い殺してをあげて、ユアンの肩甲骨を撫で回す。
「ここに翼の跡があるね、
やっぱり俺の天使だったんだ」
心がいっぱいいっぱいで気が遠くなりそうだ。
頭がガンガンする。
でもその闇に逃げ込んだら、もっと怖い事になりそうで…。
「俺の天使。~~さあ、結婚式をあげようねぇ」
返事も出来ず、ふぅふぅと肩で息をするユアンに、男は囁く。
「もう離れはしないよ。ずっと一緒だ。」
ぢゅっ。
耳元で粘ついたリップ音がした。
鳥肌が立つ。
「体を繋げる前に、心を繋げなくっちゃねぇ。」
男は立ち上がると壁の戸棚からコップを持ってきた。
いきなり外された口の布に、はっはっと息を求めて口が開く。
すかさずそこにコップを当てて、液体を流し込んだ。
刺激が鼻を喉を焼く。
げほげほと、はくはくと空気を求めて海老反るユアンに、コップからそれを注ぎ続ける。
ぼとぼとと辺りに飛び散るその液の刺激臭の中で、ユアンの意識はくるりと裏返って行った。
その男に抱えて運ばれた。
幼かったから大きな男だとおもっただけで、実はそうでも無かったのかも知れないけれど。
そうして連れ込まれたのは地下で。
澱んだ空気と、酸っぱいような匂いがある部屋だった。
そこのベッドの上にどすんと落とされた。
幼いユアンは大きな声で泣きたかった。
でも口に布を押し込まれ、喋れない。
鼻で息をするたびに、すえた匂いが体に入ってきて、この匂いで体中が染まってしまいそうで怖かった。
ツンとした嫌な匂いが目に沁みて、涙がぼろぼろと溢れる。
「ああ、涙も綺麗だなぁ」
ねっとりと聞いた事のない声がした。
振り仰ぐと知らない男がいた。
その男はねとねとした手で頬を、髪を、首筋を撫で回す。
ウサギの様に足を括られ。
手を縛られ。
芋虫の様に転がったまま、ユアンは嫌々と頭を振った。
「俺の天使。ああ、やっぱりおまえは俺の天使だ。」
その男にべろべろと涙を舐め回され、生臭い匂いがむっとして、自分のほっぺたが汚れていく気がする。
忌まわしくて、怖くて、ユアンはひくっひくっとしゃくりあげた。
「どこに翼を隠してるのかなぁ、」
ひっひっひっと、引き攣った様な笑い声を上げながら、男は服を脱がせようとする。
手を縛られている為に脱がせられないと悟ると、イライラと貧乏揺すりをしながらハサミを取り出した。
「ぃいかい?服を切るよ。あばれたらおまえも切れちゃうからねえ。じっとしてるんだよぉ」
見えない。
冷たい金属が体に当たって、
ジャキッ
ジャキッ
と、ハサミの音がする。
服⁉︎
本当に服だけ⁉︎
ジャキッ
刻む音に身動きも出来ず。
ジャキッ
息さえ殺してユアンはじっとしていた。
肌に空気が当たる。
澱んだ空気とはいえ、肌から衣が外されてスースーする。
縛った腕にたぐられた服は重い。
よっこらしょ。とユアンを抱えてひっくり返す。
ああ… と、粘着く甘い殺してをあげて、ユアンの肩甲骨を撫で回す。
「ここに翼の跡があるね、
やっぱり俺の天使だったんだ」
心がいっぱいいっぱいで気が遠くなりそうだ。
頭がガンガンする。
でもその闇に逃げ込んだら、もっと怖い事になりそうで…。
「俺の天使。~~さあ、結婚式をあげようねぇ」
返事も出来ず、ふぅふぅと肩で息をするユアンに、男は囁く。
「もう離れはしないよ。ずっと一緒だ。」
ぢゅっ。
耳元で粘ついたリップ音がした。
鳥肌が立つ。
「体を繋げる前に、心を繋げなくっちゃねぇ。」
男は立ち上がると壁の戸棚からコップを持ってきた。
いきなり外された口の布に、はっはっと息を求めて口が開く。
すかさずそこにコップを当てて、液体を流し込んだ。
刺激が鼻を喉を焼く。
げほげほと、はくはくと空気を求めて海老反るユアンに、コップからそれを注ぎ続ける。
ぼとぼとと辺りに飛び散るその液の刺激臭の中で、ユアンの意識はくるりと裏返って行った。
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