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14部
ハロルド一家
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ある日の神の国
「おはようございまーす」
とハロルド神殿に珍客がやってきた。身長が五十センチほどしかない妖精のメリーアンである。
「あ、アンちゃーん、いらっしゃーい」
と出迎えたのはキュリアである。メリーアンはキュリアと同じ目線になるようにふわふわ飛んでいた。
「キューちゃんおはよー」
「おはよう。メリーアン」
ジェイクも挨拶した。
「おはよージェイジェイ」
メリーアンは妖精だが、神を敬うという概念はないようだ。名前も好き放題呼んでいる。
「今日はどうしたの?」
キュリアが聞いた。
「ハロタンに会いに来たの。奥にいるかな?」
メリーアンは勝手に部屋の奥に行ってしまった。
「ハロタン?」
「もしかしてお父さんのことかな?」
二人はあわててメリーアンを追った。
ハロルドはまだベッドの上だった。ハロルドの横にはどでかい黒い猫が一緒に寝ていた。
「おおう。猫と寝るハロタン。なかなか絵になるじゃん」
メリーアンは浮いたまましげしげと眺めつつ言っていた。
「アンちゃん。だめよ」
キュリアが小声で言った。
「なにが?」
ハロルドが目を覚まして三人を見た。
「なんだ?」
黒ネコがごろんと上を向いたので、メリーアンはクロのお腹をなでなでした。
「猫ってあったかいね」
「ニャーゴ」
「私も一緒にねたーい」
「一体何しに来たんだ」
ハロルドが体を起こして聞いた。
「ハロタンの体のサイズを測りにきたの。ママがハロタンの寝間着を作ってあげてって言うから」
「寝間着~? 別にいらん」
ハロルドはあっさり言った。
「いらないの? ママが言うから来たのにい」
メリーアンは頬を膨らませている。
「アンちゃん、ネマキって何?」
キュリアが聞いた。
「寝る時に着る服のことよ。私が出した糸で作った布で作るの。肌触りがいい生地にするわ」
「私もほしい! 私にも作って!」
「ぼくも欲しい! 寝間着なんて人間みたいだ!」
キュリアに続いてジェイクも目を輝かせている。
「いいよ。アシュラン様にはボタンがある服を作ってるんだけど、ジェイジェイはどうする?」
「ボタンがいいよ! ぼくボタン好きだよ!」
ジェイクがかなりボタンに興味を示していたので、「私もボタンがついた服がほしいな」とキュリアも興味を示した。
「いいよー」
「バリアスとヴァルにも聞いてくるからまってて!」
「マチルダはいるかな?」
ジェイクとキュリアは出て行き、メリーアンは黒ネコの上に乗っていた。子供達がみんな寝間着を作るとなると、ハロルドもちょっと欲しくなった。
「やっぱり私にも作ってくれ。ボタンじゃなく、ガウンみたいなのが欲しい」
「いいよーじゃあそこに立って。サイズを測るから」
「わかった」
ハロルドは上半身裸で寝ていたので、そのままベッドから降りて立っていた。メリーアンは飛んだままハロルドの周りを回っている。そしてハロルドの背中の筋肉をもみもみしていた。
「なんだ?」
「さすがハロタンいい背中してるね!」
「ハロタン?」
そこでようやくハロルドはおかしな呼び方をされていることに気がついた。
「二人もほしいってー」
ジェイクとキュリアが戻ってきた。
「マチルダはもういなかったけど、作ってくれる? マチルダはズボンタイプの方が好きかもね」
「いいよ。すぐに全部は作れないけど、まっててね。そのうちパンツも作るつもり」
「私のも作ってー」
「かわいいの作るねー」
「ぼくもぼくも」
「いいよーハロタンには猫の刺繍がついたパンツをつくったげるねー」
「猫の刺繍はいらない。お前は、ふてぶてしいとこが母親にそっくりだな」
神を神とも思わないその態度、どこかのだれかにそっくりだとハロルドは思った。
「父様は、犬の方がすきなの」
キュリアが言った。
「犬の刺繍の方がいいの」
「刺繍はいらんって」
「じゃあねー」
メリーアンはさっさと部屋を出て行った。
「まったく……変な妖精だ」
「父様が怒らなくてよかった。心配しちゃったわ」
キュリアはほっとしている。
「服ができるのが楽しみだなあ。ボタンボターン」
ジェイクはスキップするように去って行き、
「ボタンってそんなにうれしいものなのかな?」
キュリアは首をかしげながら去って行った。
それから五日ほどして、ハロルドの元にガウンが届いた。真っ白だが光沢があり、すべすべしていた。右胸に小さく剣の刺繍が右上を向いて入っていた。ジェイクの寝間着には青いボタンがついていて、キュリアの寝間着は薄いピンクのワンピースのような形状をしていた。こちらも前でボタンで留めるようになっている。バリアス達のはまだだ。
「ありがとう。メリーアンすごくうれしいよ」
「私もうれしい。すべすべね」
ジェイクとキュリアは喜び、ハロルドも「ありがとう」と素直にお礼を言っていた。
「安眠効果をつけておいたからねー」
「安眠?」
その夜、ガウンを着て寝たハロルドは、結構安眠できたのだった。
「おはようございまーす」
とハロルド神殿に珍客がやってきた。身長が五十センチほどしかない妖精のメリーアンである。
「あ、アンちゃーん、いらっしゃーい」
と出迎えたのはキュリアである。メリーアンはキュリアと同じ目線になるようにふわふわ飛んでいた。
「キューちゃんおはよー」
「おはよう。メリーアン」
ジェイクも挨拶した。
「おはよージェイジェイ」
メリーアンは妖精だが、神を敬うという概念はないようだ。名前も好き放題呼んでいる。
「今日はどうしたの?」
キュリアが聞いた。
「ハロタンに会いに来たの。奥にいるかな?」
メリーアンは勝手に部屋の奥に行ってしまった。
「ハロタン?」
「もしかしてお父さんのことかな?」
二人はあわててメリーアンを追った。
ハロルドはまだベッドの上だった。ハロルドの横にはどでかい黒い猫が一緒に寝ていた。
「おおう。猫と寝るハロタン。なかなか絵になるじゃん」
メリーアンは浮いたまましげしげと眺めつつ言っていた。
「アンちゃん。だめよ」
キュリアが小声で言った。
「なにが?」
ハロルドが目を覚まして三人を見た。
「なんだ?」
黒ネコがごろんと上を向いたので、メリーアンはクロのお腹をなでなでした。
「猫ってあったかいね」
「ニャーゴ」
「私も一緒にねたーい」
「一体何しに来たんだ」
ハロルドが体を起こして聞いた。
「ハロタンの体のサイズを測りにきたの。ママがハロタンの寝間着を作ってあげてって言うから」
「寝間着~? 別にいらん」
ハロルドはあっさり言った。
「いらないの? ママが言うから来たのにい」
メリーアンは頬を膨らませている。
「アンちゃん、ネマキって何?」
キュリアが聞いた。
「寝る時に着る服のことよ。私が出した糸で作った布で作るの。肌触りがいい生地にするわ」
「私もほしい! 私にも作って!」
「ぼくも欲しい! 寝間着なんて人間みたいだ!」
キュリアに続いてジェイクも目を輝かせている。
「いいよ。アシュラン様にはボタンがある服を作ってるんだけど、ジェイジェイはどうする?」
「ボタンがいいよ! ぼくボタン好きだよ!」
ジェイクがかなりボタンに興味を示していたので、「私もボタンがついた服がほしいな」とキュリアも興味を示した。
「いいよー」
「バリアスとヴァルにも聞いてくるからまってて!」
「マチルダはいるかな?」
ジェイクとキュリアは出て行き、メリーアンは黒ネコの上に乗っていた。子供達がみんな寝間着を作るとなると、ハロルドもちょっと欲しくなった。
「やっぱり私にも作ってくれ。ボタンじゃなく、ガウンみたいなのが欲しい」
「いいよーじゃあそこに立って。サイズを測るから」
「わかった」
ハロルドは上半身裸で寝ていたので、そのままベッドから降りて立っていた。メリーアンは飛んだままハロルドの周りを回っている。そしてハロルドの背中の筋肉をもみもみしていた。
「なんだ?」
「さすがハロタンいい背中してるね!」
「ハロタン?」
そこでようやくハロルドはおかしな呼び方をされていることに気がついた。
「二人もほしいってー」
ジェイクとキュリアが戻ってきた。
「マチルダはもういなかったけど、作ってくれる? マチルダはズボンタイプの方が好きかもね」
「いいよ。すぐに全部は作れないけど、まっててね。そのうちパンツも作るつもり」
「私のも作ってー」
「かわいいの作るねー」
「ぼくもぼくも」
「いいよーハロタンには猫の刺繍がついたパンツをつくったげるねー」
「猫の刺繍はいらない。お前は、ふてぶてしいとこが母親にそっくりだな」
神を神とも思わないその態度、どこかのだれかにそっくりだとハロルドは思った。
「父様は、犬の方がすきなの」
キュリアが言った。
「犬の刺繍の方がいいの」
「刺繍はいらんって」
「じゃあねー」
メリーアンはさっさと部屋を出て行った。
「まったく……変な妖精だ」
「父様が怒らなくてよかった。心配しちゃったわ」
キュリアはほっとしている。
「服ができるのが楽しみだなあ。ボタンボターン」
ジェイクはスキップするように去って行き、
「ボタンってそんなにうれしいものなのかな?」
キュリアは首をかしげながら去って行った。
それから五日ほどして、ハロルドの元にガウンが届いた。真っ白だが光沢があり、すべすべしていた。右胸に小さく剣の刺繍が右上を向いて入っていた。ジェイクの寝間着には青いボタンがついていて、キュリアの寝間着は薄いピンクのワンピースのような形状をしていた。こちらも前でボタンで留めるようになっている。バリアス達のはまだだ。
「ありがとう。メリーアンすごくうれしいよ」
「私もうれしい。すべすべね」
ジェイクとキュリアは喜び、ハロルドも「ありがとう」と素直にお礼を言っていた。
「安眠効果をつけておいたからねー」
「安眠?」
その夜、ガウンを着て寝たハロルドは、結構安眠できたのだった。
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