ダークファンタジア番外編

ノクターン

文字の大きさ
93 / 119
新作小話

土の精霊?

しおりを挟む
 「ランララ~ン」
 ご機嫌で畑を耕していたのは土の神、サントスである。土の神だけに、土をいじくっている時が彼が最も安心できる時である。神様は野菜などはあまり食べないのだが、動物たちが食べるための野菜の畑もある。今サントスが植えようとしていたのはイチゴの苗である。
「かわいいイチゴ、ガーベラが喜ぶといいんだけど……」
 サントスはガーベラが美しい唇でイチゴを食べる所を想像していた。
「ガーベラにイチゴは合う。きっと合う!」
 苗を植えて人間界では一月ほど、イチゴの苗は大きくなっていた。サントスは毎日水をあげているおかげだろう。そしてもう一月ほど経って、イチゴの緑の実がなってきた。
「あ、イチゴの実がついてるよーかわいい!」
 ネルも喜んでいる。
「うまく育つといいんだけど」
 とサントス。
「大丈夫じゃない?」
「敵がいるからなあ……」
 サントスには敵がいる。その敵は、昔自分の神気から生まれた聖獣モグウサギたちだった。彼らは土の中にもぐって生活しているので、時々畑の下を移動してしまうのだ。土の中にはモグラたちも住んでいる。
「念のため、ボスモグラの寝床から離れてるんだけど……」
 サントスが「ボスモグラ」と呼んでいるモグラはかなり大きく畑を時々荒らすのだが、ボスモグラが通り過ぎた後に何かを植えるとよく育つのだった。信じられないことにアシュランは「あれは土の精霊だ」と言っている。

「精霊が獣の形をしているのは珍しいが、駆除しないように」
 とアシュランが言っているので、サントスも彼を邪魔にはしていない。ただ彼をよけて植えているだけである。この前違う場所が荒れていたので、サントスはイチゴを違う場所に植えたのである。
 
 さらに月日が経ち、イチゴもちらほら赤くなってきた。
「いい感じだ!」
 もう少しで収穫だ、と思っていたころ畑に来てみると、土はわやくちゃになり、イチゴがあちこちかじられていた。
「あーあ、モグラさんの仕業かなあ」
 ネルは残念そうだ。
「イチゴを食べたのはネズミや鳥たちだろうけど、土がすごく盛り上がっているから、ボスモグラがきたのかも」
「ボスがきたの?」
「きたかもね」
 畑の土は、普通のモグラの荒らし方ではなかった。モグウサギの荒らし方とも違う。
「ボス、たまには顔を見せてくれればいいのにね」
「そうだね。そういえば顔をみたことはない……」
 ふと見ると、盛り上がった土の中から真っ白い獣の手が出ていた。
「キュウ」
「鳴いた」
「あれがボスかな?」
「手がでかいからそうかもね」
 二人がじっとしていると、ひょいっと白い手が伸びて土色の毛並みが見えた。少しとがった口が見えて、すぐ土の中に引っ込んでしまった。
「猫くらいにでかいモグラだったなあ。あれがボスかな」
「でかかったねえ」
 ボスがいた所に行ってみると、土の中に大きな穴が開いていた。

 結局イチゴは5個ほどしか取れなかった。ガーベラの所には綺麗なイチゴが二個いっている。
「まあ、かわいいイチゴね!」
 ガーベラは喜んでイチゴを食べてくれたので、サントスもうれしかった。

 後日その場所にブルーベリーの苗を植えるととてもたくさんの実がなった。やはりあのモグラはボスモグラだったのかもしれない、と思ったサントスだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

処理中です...