ダークファンタジア番外編

ノクターン

文字の大きさ
97 / 119
新作小話

ラーズのぼやき

しおりを挟む
 神の国にて――

 ガーベラの神殿の寝所にて、ラーズとガーベラは仲良くなったところだった。
「ガーベラ、実は話があるんだけど」
 とラーズが切り出した。
「なあに」
「もう一人のガーベラのことなんだ。何度も接しているうちに、彼女自身を抱きたくなってきたんだよ。抱いてもいいかなあ」
「まあ、彼女も望んでいると思うわ。是非そうしてあげて」
 ガーベラは嫌がるところか、むしろ勧めていた。
「ガーベラは、妖精には嫉妬するのに彼女にはしないんだね」
 ラーズは奇妙な面持ちである。
「だって、彼女はいまや私の分身なんだもの。姿が違っててもそうなの。彼女は私が無理だったものをもたらせてくれた。私にとっては恩人だわ。彼女がいなかったら、私の周りもいろいろ違ってたと思うの」
「そうかな。彼女がいなくたってこうなっていたのかもしれないよ」
「無理無理。絶対無理よ。ラーズに愛されたら、彼女の愛のステージも一つあがるわね。うふふ」
 ガーベラはむしろ喜んでいるくらいである。

 ところが、ラーズがゆりにそういう話をもちかけても、ゆりの方は冗談としかとらなかった。

「まあ、彼女って奥ゆかしいところがあるわよね。決める時にはばしっと決めるのにね」
 とガーベラ。
「確かに、決める時にはばしっと決めるのにな」
 ラーズは笑いながら言っている。
「ラーズの方から押してあげたらいいじゃない」
「そうだな。そうしよう」

 こうしてラーズはゆりに話があると伝言して、寝室に行った。ところがこの夜は、ラーズにとっては奇妙な夜になったのだった。


「夜這い、成功した?」
 翌日クーリーフンはラーズを見かけて聞いた。その話をラーズから聞いていたのである。
「ハロルドに睨まれないようにね。ハロルドの彼女への愛はすごいからね」
「うーん、なんだかすごく面白い夜だった。実は抱いてないんだが、彼女に奇妙なことが起こって、蛇の女の子が彼女にとりついたんだ。それでその彼女といちゃいちゃした」
「はあ。蛇の女の子?」
「いやあ、なんかすごかったな。彼女がガーベラになれてる片鱗をみた気分だな」
「ふーん、彼女で興奮したことはしたんだ」
「興奮した。次は最後までしたいな。彼女が誘ってくれるのを待ってみようかな♪」
 こちらから押してばかりというのもつまらないので、ラーズはちょっと待ってみることにした。

 ところが、ハロルドからすぐに妙な話を聞いた。ゆりがハロルドを儀式に誘ったというのである。しかもハロルドは乗り気ではないようだ。

(私と成功したからハロルドともしたいって思ったのかな? 思い切って誘ったんだろうに断るなんてなあ)

「神のプライドなんてばからしい。一生気にしてろ」
 ラーズはハロルドのプライドの高さに呆れた。

 だがその後、ゆりもなかなか会いに来てくれないのでゆりの元に行ってみると、なんとゆりの様子が変わっている。

「ハロルドめ、手を出したな。っていうか、手を出すの遅すぎた気もするが……」
 ハロルドがゆりのことを知ってからかなり時が経っていた。今まで手を出さなかったことの方が驚きである。
(さては、私に先を越されたくないと手をだしたんだな。あの時やっといたらよかったかもなあ)
 ラーズはちょっと残念に思ったが、こうなったら今からって時に、なんとオルガまでやってきた。
(聖地でもこんなに他の神と鉢合わせることはないのに、ここはどうなってるんだか)
 しかもゆりは神の国にきたのにラーズに会いに行かずにサラディンに会っていたようである。
(普通はあっちで私といちゃいちゃパターンだろう。自信なくすな。確かに君は人間の女にはあり得ない精神構造してるよ)
 ラーズは、ゆりも神の国であの続きをしたいと思っているだろうと思っていたのだが、そうではないようだ。これはラーズにとってはちょっとショックだった。


「女の子を虜にする魅力くらいはあると思ってたんだけどなあ……」
 ラーズのぼやきを聞いてクーリーフンは笑っていた。
「サラディンと何があったのかも気になる。覚えてないっていうんだぜー」
「あ、それ、僕のせいかも」
 クーリーフンはそこに気づいた。
「どういうことだ?」
「ルティアナに媚薬をあげたんだよね。ルティアナはそれを二人に使ったのかもしれない」
「媚薬? 余計なことをするんじゃない」
 ラーズは驚いている。
「でもサラディン、突然人間界に飛んじゃったなんて……笑っちゃ悪いけど笑っちゃうなあ」
 クーリーフンは肩をふるわせて笑っている。
「サラディンに言っちゃうぞ」
 ラーズはすね顔である。
「言わないでよ。怒られちゃうよ」
「じゃあ私にも媚薬をくれ」
「ラーズは持ち前の魅力でなんとかして」
 クーリーフンはラーズの手を握っていた。
「その持ち前の魅力に自信をなくしている。彼女の中でも一番になれないとは」
「だから彼女はガーベラになれてるの。ラーズが一番になっちゃったら、もう無理でしょ」
「そうかな」
「そうだよ。あれだからなれてるんだよ」
「くそー、こうなったらハロルドよりも気持ちいいと言わせたい。夜這いに行こうかな。それとももっとこっちでしてからの方がいいかな。子供ができることもあるかもしれないしなあ」
 ラーズは一人でぶつぶつ言っている。
「楽しそうでよかったね」
 クーリーフンは、そんなラーズを残して去って行ったのだった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...