ダークファンタジア番外編

ノクターン

文字の大きさ
20 / 119
14部

たまにはこんな日も

しおりを挟む
 雪が降り積もるある日のことである。城の周りはムサカの魔法で温度調節されていたので、城の侍女達も大勢城にとどまっていた。街に住んでいる者もいるのだが、寒いし雪が降っているので城からの行き来が大変なのである。戦士達は街の皆さんのため建物の雪下ろしや、食べ物の調達が困難な家庭には食べ物を配ったりと大忙し、ミカエル達もゆりといちゃいちゃする間もなく働いている。とてもじゃないが城から街への道を雪かきなどできないと思っていたが、なんとヴォルフがやってくれたので、みなありがたく思っていた。

「王妃、話を聞いてください」
そんな頃、ミカエルがゆりの部屋にやってきた。
「さっき西の街の見回りをしていたんですが、よくわからないんですが、なぜか女性に拝まれました」
「拝まれた?」
「その女性は私にすごく感謝してると言って泣きながら拝んでいました」
「……そうなんだ」
「どうやら土の祭りの時みたいですよ」
「ああ。あの時の!」
「おかげで結婚できましたって言ってましたよ」
「そうなんだ。よかったな。そういえば、オレンジの木は大丈夫かしら」
「一応布で覆ってますがね。今度行ったときに確認してみますね」
「お願いね」

(ミカエルの男ガーベラ様、ミカエルの声で歌とかも聴いてみたい。ハインリヒの声に負けないくらいうまいはず)

「ところで、私に来た神様って……」
「男ガーベラ様? もう半端なくいい男で性格もよくて、そして絶倫。多分、いや絶対に絶倫。愛欲の神様だから」
「絶倫、うらやましいですね」
ミカエルは真面目に言っていた。
この国では絶倫の男は尊敬される。
「私としては男ガーベラ様の信者を増やしたい。今のところ私の侍女くらいしか信者がいないから」
「私も男ガーベラ様に会ってみたいな」
「歌も楽器も上手なんだよねー。歌を聴きたいなー」
などと言っていたらミカエルの肩がぴくりと揺れた。
「では希望に応えて」
などと言っている。
「えー本当にガーベラ様ですか!? やったー!」
ゆりは大喜びだった。

ゆりは自分だけが楽しむんじゃもったいないので、城の広間で歌ってもらうことにした。手が開いた侍女達もやってきている。ミカエルに入った男ガーベラはハープを弾きながら歌を歌っていた。
「この図、新鮮!」
侍女達はうっとりと聴いている。
(ミカエルの声でも、やっぱりいい!)

「星の瞬き ふたりを包んで
言葉じゃ足りない 想い溢れる
君の温もり そっと抱きしめて
夜明けまで 夢の中 ふたりで

道の向こう 見える景色
ふたりの歩幅 重ねて進もう
小さな幸せ 集めてく
未来の地図 君と描いて

かわいいあなた いつまでも愛してる
どんな時も 僕がそばにいるから
君の笑顔 未来を輝かせて
この愛を 永遠に守りたい」

男ガーベラは三曲ほど歌ってくれた。
ゆりも侍女達も泣きながら拍手しまくった。
「最高に素敵です!」
「ガーベラ様の石像が欲しいです!」
「全世界の女性にガーベラ様を見せたい!」

ゆりと侍女はその後も男ガーベラの話で盛り上がった。

その後、ラクシュミからミカエルに思念が来た。
―城で歌ってたって本当か? 私の侍女が見たらしいぞ
―え? 記憶にないですが
―ハープもすごく上手だったらしいぞ
―ハープ? 弾いたことはないですよ
―……だよな

ラクシュミはその話をゆりにしなかったので、真相は謎のまま、終わったのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...