ダークファンタジア番外編

ノクターン

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14部

○○○○って?

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 俺の名前はヤゲンという。普段は龍の国で美術商を営んでいるが、龍の一族ではない。俺の自慢は、この目だ。俺は、多分この世界でも稀な能力の持ち主である。人の嘘なども見抜くのも得意だし、相手の強さ、能力なども、大体はわかる。この世界にも有名な彫刻家の彫刻なども存在するが、超有名な彫刻家の作品ともなれば偽物も多い。俺は偽物かどうか見分けることもできるのだ。俺の店に並ぶ商品はすべて本物の美術品であり、それは胸をはっていえるし、龍の国の城などにも美術品を多く卸しているので龍王にも一目置かれている。今回はその龍王の依頼のようなもので、ここ蛇の国にやってきた。
「蛇の国の博物館に行き、神々の物が本物かどうか確かめろ」との依頼である。なんでもこの国の博物館には、神々の手をかたどった作品があるらしい。それが本当ならば、是非この目でみたい。と、喜んでこの国にやってきたわけだった。今は赤い月の時期だが、妻とはしばらく燃えるような赤い月も過ごしてはいない。
 
 龍の一族の者ではないので、わりと簡単に北の国境を抜けることができた。そして一晩宿に泊まり、翌朝、大きな街の博物館にやってきた。開館一時間前だが、すでに十人ほど並んでいる。
 開館の時間になり、最初の十人が中に入った。俺も最初の組である。中に入るなり、俺の前にいた老人は、手を合わせて「ありがたやありがたや」と言っていた。

 部屋に入りまず目に入ったのは、ダーナ様の石像だった。なかなかの作品である。俺は目をこらしてダーナ像を見た。
「聖地の職人プレイスによるダーナ像」
石像の横に札のような物が見えた。これが俺の能力である。この札は、他の者には見る事ができないのだ。
(聖地の作品か、そしてこちらのアリアス様の石像は……なんだと?!)

「技の神ジェラルド作、太陽の神アリアスの胸像」

なんと、札にはジェラルドの名前があった。石像にはただ、アリアス様の胸像としか書かれてはいない。

(まさか知らずに置いてるってことはないよな。どうしてジェラルド様の名前を書かない? それに、どうやっていただいたんだ?)

俺はどきどきしながら手の作品を食い入るように見ていった。

「戦いの神ハロルドの手」
「虹の神ラーズの手」
「風の神ウィルの手」
「火の神サラディンが手の形をくりぬいた板」
「水の神ラクアの神の力により維持されている作品」

(本物だ……全部本物だ……)

「ありがたやーありがたやー」
さっき前にいた老人は、アシュランの足の前でひざをついていた。

「最高神アシュランの足」

「本物だ……」
俺はつい声に出していた。この部屋にあるのは全部本物である。神が関わった作品で、勝手に作ったものではないのだ。

(こんなに一杯どうやっていただいたんだ?)

サントスの手だけは違っていた。

「土の神サントスが作った作品」

(でもサントス様が作られたなんてすごすぎるじゃないか」

俺はかなりの興味をもって神々の手を眺めた。手がこんなにも興味深いとは、これは新たな発見である。考えた者はかなりのセンスの持ち主だろう。その誰かの考えに、神々が興味を示してくれたようだ。

「いやーすごいな。ほんとうにすごい」

俺は心底感嘆した。龍の国からわざわざ来た甲斐があるというものだ。神々の作品の奥には、女性の石像が置かれていた。この国の王妃の石像である。

「妖精ミッケル作 王妃の石像」

(ミッケルさんの作品か? 妖精? ミッケルさんは妖精になったのか?)
俺はミッケルさんとは面識があった。かなり腕のいい職人で、龍の国には彼が作ったハロルド様の石像もある。かれはもうこの世にはいない。
(ということはこれはどこで作られたのだろう?)

 俺はかなり長い間石像を見つめていたようだ。「どうかしましたか?」と声をかけられた。振り向くと、戦士っぽい男が立っていた。
「あ、いえ、とてもいい作品だと思いまして。どなたの作品なんですか?」
 おれはかなりドキドキしながら聞いた。龍の国とこの国は仲が悪い。俺はあちら側の人間なので、ちょっとびびってしまった。別に誰かに危害を加えるために来たわけではないが、怪しい行動は慎んだ方がいいだろう。
「ああ、聖地の職人さんが作ってくださったようだ」
「そうなんですか」

(なぜミッケルさんの名前を出さないのだろう? それにしても、結構イケメンだな)
俺はつい、この国の戦士がどれほどの実力なのか知りたくなり、男の情報を見た。ちなみに人物の情報はすべてみられるわけではない。精神力を鍛えている相手ならば、なおのことである。目の前の男の情報も、「秘」が多かった。

「ミカエル 122歳 上級戦士 魔法力秘 体力秘 特殊能力秘
王妃の恋人(名声+20) ○○○○の恋人(性行時の好感度、10%アップ)」
その後は恋人や子供の名前が書かれていた。

(なんだこれ。この○はなんだ? しかも性行時の好感度アップって……なんかうらやましいぞ)
こんなの見たことがない。
どうして文字が出てこないのか、一体だれの名前が書かれているのか、俺はとても気になった。

相手の男が怪訝な目で俺を見ている。 俺はぺこりと頭を下げて、男から離れた。
(すごく気になるが、まさか聞けるわけがない)

「気になる。○○○○って何!?」
俺は博物館から出てつい声に出していた。

何はともあれ、この国での用事はすんだ。俺は商売柄、美術品を取り扱っている店などにも行ってみたが、そちらはたいして買いたい物はなく、夕方酒場で酒を飲むことにした。店内には五人ほどの客がいた。
そこに青っぽいキラキラした髪の戦士がやってきた。
「ヴィラ様いらっしゃいませ」
「こんばんは。マスター」
戦士はマスターに近づいて耳元でぼそぼそつぶやいていた。カウンターに座っていた俺は、ついその戦士の情報をのぞいてみた。
「ヴィラ 114歳 上級戦士 魔法力秘 体力秘 特殊能力秘
王妃の恋人(名声+20) ○○○○の恋人(性行時の好感度、10%アップ)……」

(え? さっきの男と一緒だ。○○○○の恋人。この男も? 共通の恋人ってこと?)

戦士が俺の視線に気がついてこちらを見た。おれはドキドキしながらもぺこりと頭を下げた。

その後、帰り際、北の国境でも、上級戦士に同じ情報があった。
(この国では王妃の恋人になると名声があがる。そして、○○○○って人は、よくわからんが、すごい人らしいな。 うらやましいぜ)
 俺は神々の手のことよりも、謎の女性のことを考えながら、蛇の国を後にしたのだった。
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