タクシーの運転手 矢田さん

ノッチ

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タクシーの運転手矢田さん

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彼女・いやそのおばちゃんの名は矢田琴美という。所謂女性タクシードライバーである。矢田さんと私は旧知の仲である。と言うのも二十年前にあるところで知り合った。あるところというのは、パチンコ店ASAHIである。アサヒと言う名前は、昔このちに朝日館と言う映画館があったことによる。天領日田には、その昔、シネマ劇場が五・六件あった。朝日館、朝日センター、日活、娯楽館、大映、東映、と言ったところである。今から数十年も前のことである。その映画に映し出されるスターは、高倉健、美空ひばり、吉永小百合、勝新太郎と言った豪華な顔ぶれである。やはり鶴田弘治も上げておかなければならないであろう。いや、石原裕次郎、萬屋錦之助、それから・・・・・・。
 銀幕のスターたちは、庶民の憧れの的であった。たとえば、健さんの仁侠映画を見終わると誰もが主人公になりきって、映画館を出ると肩で風を切ったものだった。今でもシネマに行くと、スターたちや、憧れのアニメキャラクターと自分を同化してだれを夢を描く。やはり庶民の心をぐっとつかむのだ。そういえば、純子さんと行ったターミネイターⅢで私はシュワルツネッガーになった気分になった。タフマン男のシュワちゃんとひ弱な伸ちゃんではあったが・・・。・・・・・・映画の話しはこのくらいにしておこう。
 
 矢田さんとわたしは、パチンコの人気台、フルーツパンチをきっかけに仲良くなった。まあ仲良くなったと言えば的屋の右近組のおやっさんに右近兄弟。日産レンタカーの村野さんや、大工のげんさん。飲み屋のママ矢野さん。おしどり夫婦のM夫妻。子顔で美人悦ちゃん。それから・・・・・・。数えあげたらきりがない。
 話をドライバーの矢田さんに戻そう。
 矢田さんはフルーツパンチがかかるとコーヒーをおごってくれる。他にも植木職人の中山さんや伊藤木工のBさん。イサゴタクシーの一ノ宮さん。これも同じように数えあげたらきりがない。またまた、横道にそれてしまった。読者諸兄には大変申し訳ない。
 さて、矢田さんがいましている仕事は、タクシーのドライバーである。口数が多いのが玉に瑕だが、人のよさそうなおばちゃんであり、誰からも好感をもたれる人である。いまでも、パチンコ屋に行っては、買ったり負けたりするそうである。今流行の機種は、北斗の拳、笑うせえるすまん、ガキでかだそうだ。パチンコの話になると、血が騒ぐのか、普段より饒舌になり少し私は面食らう。何を言おう、私はパチンコから卒業したからだ。
 そうかと思えば、そのおばさんは、ヘルパー二級の資格を持っているためか、子と介護のことになると神妙に話す。ところが、タクシー会社の内線がはいると、「ただ今、市役所前、継続中、済生会まで行って降車予定・・・」とそつなく答える。ナヴィゲーターである、タクシー会社の受付が、ぬれんくれんしていると「一〇八は継続中、他の車を回してください」と即答する。そして私にこういうのだ。「もっと、しゃんと受け答えすりゃ言いつに・・・。ぬれんくれんして・・・・・・」とボヤキが始まる。創かと思えば、「一〇五はしゃんとしちょる。F男酸は実直な人ばい。もう六十五は過ぎちょるとん」と他人を評価する。
 こんなこともあった。わたしの住む中城の近くの年のころは90歳ぐらいのおばあちゃんをタクシーで迎えに行くと、当の本人が出てこない。いぶかしげに思って玄関のドアを開けると、、なんとそのおばあちゃんが倒れてている。どうにかしてそのおばあちゃんをたたせて、タクシーに乗せ、救急指定病院の中央病院まで連れて行く。すかさず、「コチラ一〇八。島さんが玄関で倒れていました。中央病院まで向かいます。」とだけマイクで告げると、車を飛ばす。法廷速度を越える速さで車を走らせ、病院の医療スタッフにそのおばあちゃんを任せ、またせっせと行有無をこなしてゆく。なんとも早すごい女タクシー運ちゃんである。
 「ところで内藤さん、近頃パチンコ行ってる?そう、いっちょらんと・・・。朝10時から晩までフルーツパンチをしよったとん。それも同じ台ばかりに座って・・・・・・」と話を切り出す。同じダイとはパチンコ屋の一コーナーのことであって、ナンバーは266であった。代が空いているときは、私はこの台に座り続け、空いていないときには、適当に空いている台に座る。一度こんなこともあった。ひとりでに台を占有し、そのうちのいちだいがかかり、丸7500円のに連荘を当てた。私は知らぬ存ぜずのかおでよこの246に座り今までの負けていた一万円をたった千円で取り戻した。フルーツぷん千野でだまはまちまちで、大体、7500円から8300円と言ったところであった。脳喉^派民が活性化するのか、台がかかるとかなり興奮気味になる。続けて二千円分の球を打っていると今度は3連荘があたった。こうなるとこっちのものだ。続けて得って約6万の稼ぎになった。こうやって時間が三時間も四時間も過ぎてしまう。
 その頃私は、塾の講師をしていた。夕方4時ごろになると泣く泣くその台から離れなければならなかった。5時には小学生5年生と6年生の二人組みが塾にやってくるのだ。私は個別指導をしていた。小学生五年生・六年生に教える教科は国語と算数である。問題にはちゃんと解答があるので、すぐにその答えとなるヒントを生徒に教えることができる。ところがである。時には私立中学受験問題も会うのでそのときは困る。たとえば、算数の問題で、中学課程で教える連立方程式を使うことができない。こうなるとこっちも真剣に中尾になって問題とにらめっことあいなる。分からないときは、正直に生徒に謝って、後藤先生や数学の得意な後藤先生の息子である光弘に教えてもらう。二人とも値がいい人なので、優しく教えてくれる。いや光弘は数学の秀才なので、僕よりも数学のとき方がうまい。けれども人に教えると言うことになると僕のほうがうまく教えることができる。懇切丁寧なだけの講師ではあるが。しかし私が使用で塾にいけないときはこの光弘が自分に変わって算数を教えることによくなった。それでも生徒は何一つ文句も言わずに僕、いや、後藤塾についてきてくれた。光弘は父親の厳しい教育のもと、数学の秀才になった。五つ先生は少し劇甲型であったった目、光弘や、娘の瑞穂、次男の正行には疎まれる損座愛になったことは残念だった。
 あるとき光弘が数学の問題に答えられなくて、後藤先生にびんたを張られると言う事件が起こった。
「おいさん、また親父から殴られた。それも数学の問題のときなんです。僕のどこが悪かったのでしょうか?なんでぼくがなぐられなくちゃならいにんんですか?」
 そう、光弘の目には涙が溢れ出していた。顔の痛みより心の痛みが増していたのだ。僕は逡巡した挙句、次のような言葉を発した。
 「確かに文雄さんは気性が激しい。でもそれは、・・・そんなに激しい野の羽田だの気象のせいだけじゃないんじゃないか。それだけ数学、すなわち論理的に考える学問威信権威教えている証拠じゃないかな。それに個々でお前が我慢できたら確実にお前は成長する。それに文雄さんのような鬼の顔に耐えられるようになったら、これから裂きどんな人に知られようと文句を言われようと、お前は臆することなく対処できるようになる」そんなことを僕は言った。見る広は分かったような分からないような顔立ちで今ををすごすごと出て行った。自分の部屋に戻るためだ。しばらくしてハードロックの音楽ががんがん聞こえてきた。若者は悩む、それでいいんだ。みんななやんでおおきくなった、だ。もうあれから二十年が過ぎた。光弘は結婚して子供をもうけている。二人の姉妹だ。家族幸せに暮らしているそうだ。それに比べて僕は少ししか成長していない。いまだに結婚もしていない。僕はもう五〇だいくらなんでも結婚しなくっちゃ。その相手が純子さんになるのか、恵理子さんになるのか、はたまた悠さんになるのか分からない。いや少し愛して長く愛せる人を見つけよう。人生まだまだこれからだ。


                
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