妖精王の味

うさぎくま

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18、最高の一夜

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 二人の呼吸音しか聞こえない静かな室内。

 抱きしめあったまま(無論下半身は繋がったまま)エティエンヌフューベルの呼吸が通常に戻るのを待っていた凛音は、やっと痙攣が落ち着き呼吸が整ってきた今、再度呼びかけた。

「……エティエンヌフューベル様?」

「…すまない、大丈夫…だ」

「なんで謝るのですか?」

 なんで?と言われてもだ。もうそれは大失態を犯したエティエンヌフューベル。
 凛音からは軽蔑とまではいかなくとも、理想からはほど遠いと思われ残念がられると思っていた。しかし違った。

「………凛音は、私の情けない姿を見て。なんとも思わないのか?」

 キョトン。しばし、硬直。エティエンヌフューベルの言った台詞は言葉として理解はしているが、内容は全く理解出来ない。

 いったい何処が情けないのだろうか?

 視界全てにはおさまりきれないほどの大きな純白の翼、髪も瞳も全てが紫の高貴な色を纏い。恐ろしく綺麗な顔に、男性らしい長身と引き締まった身体。御立派過ぎる巨根の生殖器。身から出る汗も臭くなく甘露のような甘さときた。

 ふざけてるとしか思えない程の『美』の体現者エティエンヌフューベルが情けない?

「うん?? ……………………あっ!」

 やっと思い立った凛音は、思わず笑ってしまう。笑い過ぎするといけないと思うと、人はさらに笑いたくなるものだ。
 笑いに耐えている凛音は、とても可愛らしいし、笑う度に膣内が締まるので大変気持ちいいのだが〝男として〟は辛い。

「…凛音…」

「あーすみませんっ、すみません! あまりにもエティエンヌフューベル様が可愛いくて、じゃなくて、えーと、格好良過ぎてどれだけ好きにさせるんですか?」

 好きですと言われた台詞より、可愛いと言われた事のショックで身体が強張る。


 両生具有の姿だった時に言われた可愛いを、この男の姿になってもまだ言われるとは思っていなかった。

(「可愛いとは? 男としては見れないという事か?凛音をイカす前に勝手にイッて堪え性がなく残念だという事か?」)

 己の考えは的を射ている。今から挽回しようにも、動けばきっとまたすぐ射精してしまう。エティエンヌフューベルも年齢からいうとかなりの年長者だが、実体験はない。
 噂には聞いていた性行為がこれ程、気持ちいいとは思わなかったのだ。

 考えこむように黙ってしまったエティエンヌフューベルに、凛音は「あっ語意を間違えたか!?」と焦る。

「気持ち良くなって頂けて嬉しいですから。多少早漏でも大丈夫ですよ! それだけ私の体内なかがいいって事でしょう? それにプラス エティエンヌフューベルは絶倫だから、誇れます!」

「…早漏? 絶倫? どういう意味だ?」

「あっ…と。気にしないでくださいって事です」

 綺麗な顔が何やら言いたげに、じとーと見てくる。話をそらす為もあるが、凛音にも人並みに性欲はあるのだ。
 というかエティエンヌフューベルを前にすると性欲が振り切れている気がしてならない。


「あっの…このまま動いたり…出来ます?」

「このまま? ………こういうことか?」

 返答と共に正解かを確認するべく、エティエンヌフューベルは動いた。
 凛音の身体をゆるやかに抱きしめたまま、腹筋を意識し、その場で軽くバウンドさせる。太いだけでなく竿の長さも長く素晴らしいから成せる技。

 大きくバウンドさせても抜けたりしないし、しっかり強度があるから尚 串刺し感が半端ない。

 要するに気持ちいいのだ。


「あぁんっっんっ!! ぁんっ、ぁんっ!!」

 粘着質な水音は凛音のものか、エティエンヌフューベルのものか、結合部からは互いのカンユザイなる液体が、とめどなく流れる。

 ぐちょ、ぐちょ、ぬちゃっ、ぐちょ、ぬちゃっ


「ンッ! ンッ、あぁ…しまるっ、このあたりか?気持ちいいのは」

 湾曲した男根の先端が、凛音の快楽スポットを見事に擦り上げていく。


「ぁんっ、待ってぇー、お腹がぁっぁんっ」

「待たない。凄い締め付けていて、待てとは?」

「おかしくなっちゃいますぅ! ぁんっっ、やダァ、中が、中で、気持ちっよく、なんて。ありえ、ないっ!?」

「あぁ、これは。しばらく抜きたくないな…」

 ぐちょ、ぐちょ、ぬちゃっ、ぐちょ、ぬちゃっ、身体が上下にバウンドされ、胎内を掻き回されていく。
 全体重乗せても危なくない、安心感抜群のエティエンヌフューベルの肉体は、快楽のみを凛音に提供してくれる。

「あぁんっ(気持ちいいよっ)、ぃやぁぁぁんっ(あったかいよっ)、ぅあぁぁぁぁぁんっぃぃ(好きぃー)!!!!」

 こうしたら相手はどうか?などと凛音は思わず、自分だけで初めて絶頂を迎える。
 イク瞬間には力加減無しでエティエンヌフューベルにしがみつき、見事に叫びながらイッた。


 ビクンッと跳ねる凛音の身体を優しく包み込んでから、エティエンヌフューベルも満足な顔で我慢せず吐精する。

 ビュルッ ビュルッ ビュルッ ビュルッ ビュルッ ビュルッ 。

 イッてる最中に胎内に広がる熱い液体で、さらに身体が快楽に溺れていく。

 身体と心が満たされて、それは涙となり凛音の頬を流れ落ちる。
 ボヤける視界でも文句なしに美しいエティエンヌフューベルが、凛音の顔をみて満足気に微笑む。


「なん…で、そんな、笑って…るん…ですか?」

「決まっている。凛音が気持ち良さそうだからだ。胎内なかが気持ちいいのは、締め付けで分かる。だが心までは、私には分からない」

「心?」

「本心からこの行為を望んでいるか、ということだ」

「望んでます!! 望んでますよ!? なんで今更、そんなことを!?」

 はじめての快楽と、全体重を乗せても力強いエティエンヌフューベルに対して、凛音の心の甘えたい願望が目覚め子供帰りしてしまう。

 ブワッと涙を出し、しゃくりあげながら必死に否定する凛音の全てを、溶かすような瞳で微笑む愛しい人に撃沈する。


「なん…で、そんな風に、笑うんですか?」

「凛音が可愛くてな。男の性になれて良かった…」

 もう一度抱きしめて合い、互いの愛を確かめ合う凛音とエティエンヌフューベルだったが、いち早くこの異常な状況に凛音が気づく。

(「心も身体も満足だよ。…うん? あれ? 膣内にあるエティエンヌフューベル様の立派過ぎるアレ。まだガッチガチ…なのは何故? あれ?」)

 冷静になればなるほど疑問が凛音の脳内を飛び交う。それも長くは続かず、疑問はすぐエティエンヌフューベルが解決する。



「…この男性体も慣れてきた。そろそろ本番にいってもいいか? このままだと結構辛い」

 爆弾発言をかますエティエンヌフューベルに凛音は目を剥いた。

「はぁ?? えっ、まだするんですか? えっ!? だって何度も出してましたよね!? ドバドバとっ!?」

「この可愛いらしい耳は飾りか?」

「むっ。失礼ですねっ!?飾りじゃありませんっ。ぁんっ!!
 エ、エティエンヌフューベル様っ!?」


 反論するが、バウンドされ巨根が再度子宮口にささり、脳内に星が飛ぶ。

「この状態を身をもって理解していて、まだするか。と私に聞くか?
 妖精族の性行為は長い。一度入れたら、最低でも半日は挿入したままだ」

「のぅわぁぁぁぁぁー!? あれだけ出してもまだ!?」

「散々焦らされて、溜まりに溜まっているからな。
 私の辛かった日々を思い出してくれ。やっとこうして凛音と身体を合わせれるのに、この状態で私を放り投げるのか?」

 悲しげなエティエンヌフューベルの表情に、見事に胸を撃ち抜かれた。

「そんな、の、言われたら。無理って言えないですぅー」

「では、決まりだな。対位を変える、凛音は力を抜いて構わない」


 危なげなく大きな手が凛音の背を支え、ゆっくりとベッドに押し倒される。対位を変える時でさえ、性器どうしはガッツリ繋がったまま。

 凛音は未来への不安を、自分自身で質疑応答し、地の果てまで行って帰ってこなくなりそうな意識を、現実にとどめる。


「あんっ、(あぁ…ヤバイっ。相性が良過ぎてヤバイ。)んあっ! (こんなの半日は無理だよー)あぁんっっっ!! (奥にっ くるぅーーー)イヤァァァァァ!!」

「いい声だ」

 体重を凛音に乗せないよう、両腕でその麗しい彫像のような肉体をささえ。だが、下半身はピッタリと合わせては離れてを何度も繰り返す。

 全く萎えない巨根の硬さと長さと弾力を、その身で受け続ける凛音の意識はすでに朦朧としていた。

 はじめてか!? と疑問はつきない、上手過ぎるストロークを卑猥な水音を響かせながら動く。

「ぅあぁぁぁっ、あっ、あっ、あっ、まってぇ、もぅ、あっ、あっ、あっ、おかしっくっぅぅ!!」

 ビジュッルッ、ビュッ、ビビュジュ!!!

 叩きつけるように胎内に放たれるエティエンヌフューベルの精液を、限界まで受け止める。
 しかし量が多く、繋がった場所から溢れてでてくる。


「あっ、あぁ……」

「止まらない。あぁ、流れてしまうのは仕方ない。また入れたらいいだけだな」

「ひっ!! エティエンヌフューベル様、まっ、まって」

「どうした?」

「少し休憩したいですっ、壊れちゃうっ」

「私が壊れるような抱き方をするとでも? 意識があるのだから大丈夫だ」

「い、意識なくなる、まで!? するんですか?」

「当然だ。それと凛音。いくら気持ちいいからといって、叫び過ぎると喉を痛める。少し叫ぶのは抑えろ。
 凛音は何もしなくて構わない。私が動くし、凛音のいいところは把握した。快楽だけを感じていたらいい」

「そんなっ、違う。そんなの」

 グチュっと、わざと音を聞かせながらゆっくりと巨根の返しになっている場所までを引きぬき。またグチュッと音を鳴らしながら、ゆっくりと膣内に巨根の茎を埋めていく。

「はぁぁぁぁぁんっ!!!(声の我慢無理っー!!)」

 と叫ぶ凛音に、快楽ではない苦痛を負わせる気がないエティエンヌフューベルは腰を振りながら思考する。

「…あっ、口を塞げばいいか」

 性行為中だとは思えないほど穏やかに微笑み、エティエンヌフューベルはさらに身を屈め、凛音の唇に己の唇を重ね合わせた。

 もう凛音は諦めた。

 エティエンヌフューベルは叫び狂う凛音の声を奪いながら、身体を優しく撫で続ける。

 重なり合う性器は熱く激しくぶつかり合うが、唇は優しく合わさりネットリ舐め上げられ、胸や腰は形を確認するように愛おしく添わす程度。

 大事に大事に、壊れ物のように扱われ、なおかつ快楽に落とされる。


「エティ、エンヌ、フューベル、さ、ま…」

 唇の中から放たれた小さな声もエティエンヌフューベルは聞き逃さない。

「どうした?」

「……いっぱい、好きになってもいいですか? 気持ち悪いくらい好きになってもいいですか?」

 卑猥な音が止む。静かな室内には凛音の願望が口から飛び出してくる。

「…毎日キスしたいです、毎日…一緒に寝たいです。毎日ぎゅっとしてほしいです。
 毎日……好きって……言って…ほしい…です」

 凛音の甘え声は最後は、涙交じりの嗚咽となっていく。

 ずっと〝お姫様〟になりたかった。あちらの世界では叶わなかった願いを、凛音は吐露する。


 エティエンヌフューベルは腰を振るのをやめたまま驚いている。そんな驚いている顔さえ、整っていて美しい。

 また対位を変えるのか?エティエンヌフューベルは凛音の腰を掴む。身体に触れる様子が、一々優しい。それがまた涙をさそう。

 胡座をかいたエティエンヌフューベルの上に跨ぐよう凛音を座らせる。当然立派な巨根が子宮にささり、凛音は呻き声を上げてしまう。


「ぐっうっっ(でかっ!!!)」

「凛音」

 紫色の高貴な色を纏う瞳が、凛音を見据える。

「もっともっと好きになってくれ。気持ち悪いくらい好きになってくれ。
 毎日キスをしよう。毎日一緒に寝よう。毎日この愛しい身体を抱きしめよう。
 毎日好きだと、いや。愛していると言おう。凛音は私のたった一人の運命の相手だ」

 幸せから身体に力が入り、膣内が喜びから埋まっているブツを容赦無く締め上げる。

 ブシャ、ビュクッ、ビュクッ、ビュクッ、と最愛の人の胎内に精を放つ。エティエンヌフューベルは快楽に震える凛音の腰を逃すものかと、抱えこんでいる。

「あっ、あっ、あっ、」

「ァァッ、締まり具合が最高だな。凛音の身体は、本当に素晴らしい…」

 至近距離で見るエティエンヌフューベルの顔は、凛音の拙い語彙力では表現出来ないほど美しく艶やかで色気が漏れまくり、過去最高に素晴らしかった。


「エティエンヌフューベル様…」

「なんだ?」

「…好き」

「あぁ、私は〝愛している〟」

 わざわざ言い直したエティエンヌフューベルに凛音は「むっ」とする。凛音に「愛してる」と言えということだろう。

 恋に恋をしてる頭お花畑のカップルか、理想を詰め込んだドラマや漫画みたいに、凛音には言えない。

「凛音、言ってくれ」

 エティエンヌフューベルからの催促に、唸ってしまう。

「凛音」

 諦めないのか、色気を撒き散らしながら再度求めてくる。「ほらっ、言ってくれ」と言わんばかりに見つめられたら、言うしかないだろう。


「…ぁ…あい…して…ます」

 小さな声。本当に凛音の声は小さかったが、真っ赤な顔で目には涙を溜められたら、エティエンヌフューベルもこれ以上は攻めれない。
 本当は「好き」「愛してる」と言葉でも欲しいのだ。しかし今は我慢の時。

 エティエンヌフューベルを受け入れている凛音の身体(膣内)は、正直に「愛してる」を示すように蠢きエティエンヌフューベルの性器を、ぎゅーと締め上げているのだ。

 今はこれで許してやろうと思う。


「ありがとう。凛音、愛している」

 ピッタリと抱き合う二人の夜は、まだまだ明けはしない。


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