婚約破棄の後は不幸な少年と幸せに

フジ

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注意!前作とは雰囲気がかなり違うお話です。
悲しい感じを期待して読まれた方はすみません…。






「フィーリア!オレはお前と結婚しないことにした!今日からオレとお前は知らない人だ!」


陛下主催のパーティの入場を済ませ、会場にて家族と穏やかに談笑しながら陛下のご登場を待っていた際に、急に壇上に、である王子が現れた。
隣に肩丸出しで、これでもかというくらいのフリルと白粉をつけた女を連れて。

それだけでも、駆け出し壇上から叩き降ろしたい衝動に駆られるのに、その後の言葉にそれ以上の衝撃をもたらしたが、キョロキョロと壇上の下を不謹慎極まりない視線を浴びせ人々を不快にさせたと思ったら、私を見つけるなり、いきなりさっきの言葉を叫んだのだ。

いくら王子とはいえ、不躾な視線にヒソヒソと会話していた貴族達は、王子が、王家を蔑ろにする言葉に、唖然とした。
そしてフィーリアを気の毒そうに見てきた。

誰も何も言わない。母親は固まっており、父親は、あ、やら、う、やら言葉にならない言葉が口から出ている。
ここは自分がなんとかしないといけないのか、このお馬鹿さんのことを。

それはそうと、知らない人ってなんだ、他人って言葉を知らないのか。
そんなところが可愛い、と一部の女の子には人気らしいが、私には全く共感できない部分だった。


(…えっと、とにかくー)


「それは、婚約を破棄する、と仰っているのですか?」

「そうだ!っとと、違う。何だ、見知らぬ貴族よ、オレに何か話しかける時は名乗ってから話すようにしろ」

ふふん、と腰に手を当て、偉そうにする。いや、実際偉いんだけど、言ってることはお馬鹿すぎる。

お馬鹿なことを、お馬鹿に言うこの人は正真正銘お馬鹿なんだろう。


「いやいやいや…。」

あまりの馬鹿加減に、淑女あるまじき言葉を呟いてしまうも誰も咎めることなく、むしろ、その同じ言葉を思っていた。

あまりの王子の意識と学力の低さに頭痛がする。

本来の婚約破棄はもっと手続きと周りの承諾が必要になるので、破棄しましょうはい他人です!なんて行かない。というかいったとしても記憶は無くならないだろう。


「なんだ?ショックなのか?やっぱりオレと婚約を続けたいか?お前がどうしてもっていうならー

「婚約破棄の件、承知いたしました。王子が言うのであれば、陛下の了承はお済みのよう…。わたくしがここにいては王子も目障りでしょう、パーティの雰囲気も悪いと思いますのでわたくしは下がらせていただきますわ」

王子に最後まで言わせず、壇上と周囲に向かって淑女として完璧な礼をした。

「え、いや、フィーリア?」
ととぼけた声が耳に届くが引き止められた訳ではないので、さっき入ってきた入り口を振り返ると、ズサァ!と人の道が出来た。

「フィーリア、お、おい」
私の名前を呼ぶ王子の声と、いやぁ隣にいてぇという甲高い声がする方に背中を向けて歩き出した。
周囲に、ニッコリと視線を投げて。

お馬鹿だけどそれ以外のスペックはかなり高い超好物件の王子から婚約破棄されしかもこんな衆人の中知らない貴族と言われコケにされて、可哀想だという視線。
それら全てを一蹴し、人生で1番という笑顔を保ち、人の道を通り終えた。
そして、まだ階段を登り終えずにこちらを見ている貴族に礼をする。


「フィーリア!オレはただお前に嫉妬してほしかっただけなんだ~!フィーリアー!」


なんだそれ。

というか自分が立てた設定はどーした。

私は見ず知らずの貴族じゃなかったのか。

早く馬車に戻りたい、早く。

少しだけ小走りになりながら、手で口を抑える。眉が寄り、口元も引き締めており、周りが見ると泣きそうな顔だったのだろう。

気の毒そうにこちらを見てくる。


お待ちください、お待ちください!と警備の者が誰かを引き止めている声が後ろでした。
誰を引き止めているかなんてすぐわかる。だって一緒に私を呼ぶ声もするのだから。


早く馬車に乗らないと、しまう。


私の気持ちがー。



早く、早くー。




馬車に乗り込み、出して、と一言言うと、喧騒とした場からすぐに離れてくれる。

(ここならー…)
気持ちを吐き出せる。

やっと、誰にも見られずに、思いの丈を口に出せる。


「った…。」


私が、この日をどれだけ待っていたか。


手に力が入り、拳をつくる。そして


ガッツポーズをした。


「やっっったーーーー!」


(あぁ!あの王子と婚約破棄なんて、嬉しすぎるんだけどー!)


やった、やったー!とここ10年ほど抱えていた悩みがごっそりなくなり清々しい明日が待っている!とフィーリアは幸せを噛み締めた。





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