婚約破棄のその先は

フジ

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番外編

ゲイツと地下牢

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「何を言って、るんだ」
こいつはここまで馬鹿だったのか?今の俺たちの現状的に会いに行くなんて不可能だろ。
そんな簡単に会いに行くことができたらマリーに会いに行くさ

言葉にならない激情が喉まで迫り上がる。そのままマイクに感情をたたきつけようとした。

「僕、なんだ」

「は?」

「僕が、父上や家を売った」

マイクは切羽詰ったような、悩んで悩んで悩み抜いたような声音を絞り出した。
触れたら今にも泣きそうな顔をしているが、ここまでお人好しだったか、とも拍子抜けする。
お前がチクるなんて予想済みだし、状況的にも分かるさ、離縁してすぐに父上が捕まったとなると事情を知っているヤツがチクったなんて。
使用人が警察に駆け込む可能性は低い、あいつらもおこぼれをもらっていたからな。

「お前は昔から不正とか嫌ってたもんな、いずれ誰かに父上を止めて欲しくて話すんだと思ってた。…まぁそれで良かったんじゃねーの?」
「…父上が処刑されるんだ」

うん、まぁそうだろうな。で、何が言いたいんだこいつは。今俺は考えないといけないことが山ほどあるってのに

「僕は、止めて欲しかっただけなんだ、まさか処刑だなんて、兄上、どうしよう、僕…」

ユーリも死んだって…マイクが入口でへたり込んだ。身体が震えて、顔色も白い。
チッ、何の覚悟も無く動くからこーなるんだ。
昔からこいつはこーだ。自分のちゃちな正義を振りかざして、それがどう転ぶかなんて考えもしない。
ふつうに考えてみりゃ、王のお金を着服してたなんて重罪だ、苦しまずに1発で死なせてくれる方が有難い話だよ。

イライラする

「ユーリと父上に、一目会いたくて、サンライス家と大臣には話をして、父上と会うのを一度ならいい、って言われて…兄上いっしょに…」

都合の良い話だと自分でも分かっているのだろう、言葉を最後まで続けられないのもマイクの性格だ。

簡単に言うと、処刑される原因を作ったのは自分だけど、許して、父上の最後を一緒に見て悲しもう、ってこったろ。

なんでこいつはこんなに激甘なんだ。
自分の中の考えに従ったんだったら、暗い顔せずに堂々としてりゃいーのに。こーゆーところが気に食わねえ。

それよりも…王側の大臣とサンライス家は何を考えてるんだ?マイクの心情はどうであれ功績を立てのは立てた。それを褒美では無く、父の面会で済まそう、って腹か?それともマイクを使ってもっと情報をひき出すつもりなのか?

父上には悪いが、もうあんたには興味は無い。だけどー。

「…いいぜ、俺もついていく」


マリーに会える、それだけが頭をしめていた




「こ、ここに父上が…」

城に訪れると案内が待っていて、すぐに地下牢に連れて行ってくれた。
綺麗に整えられていた庭や外観と違い、ゴツゴツとした石が露出しており、灯りもポツリポツリとあるだけだった。

兵が灯りを照らすと怯えて柵の後ろに行く奴と、がなりごえを上げてこちらを挑発する声とわかれていた。マイクは血や声にいちいち怯えて、案内の兵の近くに寄っては、大丈夫ですよ、と声を掛けられていた。
俺はといえばこんな奴らはスラムにどこにでもいる、と一瞥しただけで歩いている。

「こちらです」
目の前に一際暗い柵があった。大きな柵は錆びて、黒く変色している血なども所々についていた。

父上!とマイクが柵を構わず掴む。
さっきまでの怯えはどうした、と思いながらも、そこまで父上のことを心配していたのか、と第三者のように思う。


マイクとゲイツか、と言う声がするも、俺には父に興味が無い。
「…女は」
俺は案内の兵に声を掛けると、刺した奴のことですか、と言われる。その、奴呼ばわりにカッと胃の底が熱くなるも、抑えて、そうだと声を絞り出す。

それはできかねます、と言う兵に金貨3枚を握らせて、案内しろと2人に聞こえないように言う。

「兄さん!!」

声もかけずに行こうとすると、後ろからマイクが呼び止めた。振り返ると、柵にマイクは縋り付いているも、父上はその反対の壁に背中をつけて、頭から細く血を流し、片目に流れ込んでいてそれを拭う気力も無いようだ。
髪の毛はボサボサで、服も血だらけ。暴行されたのか、頬も腫れて、見るも無残な格好。それでも、片目でこちらを見ていた。

「…じゃあな」

父上でなくなった男は、クク、と口角を上げる。ゲイツ、元気でな。と言われた気がしたが言葉にして聞きたいわけでも無い。

この男にさんざん殴られ、裏の稼業を手伝わされた。表の稼業はマイクが。ただ褒めもされず、淡々と冷淡な仕事をした。それに文句があるわけでもないが、この男とはとっくに親子の感情を持って接してはなかった。

愛されたいと思っていたわけではない。

ただ少しでも気にかけてくれたらよかったのにー。



案内しろ、と兵に声を掛け、今度こそ2人に背中を向けた。

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