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方向性を間違えるとミステリーはバラエティになり得る
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あるマンションの一室
そこには頭から血を流した一人の男の死体があった。
男の見た目からして歳は20代半ばくらいだろうか、シワひとつないその青年の顔には、苦悶の表情が浮かべられていた。
そして、その死体の隣には立ち尽くす1人の男
そう…
人殺しの田中だ
編集担当者「いやまてい!!!」
男「へ?」
編集担当者「いや、へ?、じゃないのよ。」
「答え分かっちゃったじゃん!もう犯人田中で確定じゃん!なんで余計な一言つけちゃったかな。」
男「なんで犯人を田中って決めつけちゃうんですか!!そんなこと一言も書いてないでしょ!!」
編集担当者「じゃあ犯人は?」
男「いや、田中ではありますけど」
編集担当者「よくさっきの勢いで俺の事怒れたね…?」
男「でも違う田中ですよ?」
編集担当者「なぜ、同じ苗字のキャラを入れようとしたかを聞くべきなのか、初手に人殺し田中をぶち込んだか聞くべきなのか、わかんなくなっちゃうよ!」
男「じゃあどうしたら良かったんですか!!!!!」
編集担当者「「人殺し」さえ消せばなんの問題もない気がするけど…」
男「じゃあそう言ってくださいよ!!」
編集担当者「なんで俺が怒られてるのかな…?」
「まぁいいや、人殺し消して続き読んでみるわ。」
男「お願いします。」
田中は、死体を横にして考えていた。
…なぜ、この男は死んでいるんだ…?
そう、田中には記憶がなかったのだ。
まず、この部屋はなんなんだ。
なぜ、僕はこの部屋にいるんだ。
田中の頭には様々な疑問が浮かぶ。
そして何よりも、自分の隣にある死体は一体誰のものなのか。
色々な事を考えている内に、田中はひとつの事を思い出す。
田中「あっ、そうだ。」
「俺、またやったんだ。」
編集担当者「はいダメー!」
男「何がダメなんすか!良いとこだったのに!」
編集担当者「一体今のどこら辺が良いとこだったんだよ…」
「人殺しの田中が出ちゃってるのよ!なんなら今度は犯人ですって言っちゃったのよ!」
男「こんな清々しい男の告白を!!!!あなたは、バカにするって言うんですか!!!!」
編集担当者「いや、読んでる側からしたら、気づいた時の田中すげぇ馬鹿みたいな顔してそうなんだけど…」
男「あんたってやつは!!血も涙もないのか!」
編集担当者が男の顔を見ると、男の目には涙がこれでもかというほど溜まっていた。
編集担当者「お前はなんでここまでの話で泣けるんだよ…」
編集担当者は呆れ果てている。
編集担当者「あのな?ミステリーなんだろ、これ?」
男「もちろんです。」
編集担当者「ミステリー小説の醍醐味ってのはなんだ?」
男は少し迷った様子を見せると軽そうな口を開いた。
男「まぁ、犯人誰だろなーとか、推理要素とか考えながら読めるとこっすかね?」
編集担当者「そうだろ?でも、この作品は表紙を開けたら、その醍醐味をぶっ飛ばした答えが乗ってる訳だ。」
「たとえるなら…そうだな、学校の小説とかたまに、序盤の方にペンでこいつが犯人です。とか書くバカいるだろ?それと一緒だよ」
男「あっ、それ俺っすね。」
男は間髪入れずに答えた。
編集担当者「あっ、だからか!納得納得…じゃねぇんだよ!」
「とりあえず、この田中のセリフも「何も思い出せない」とかでいいんだよ!」
編集担当者がそう言うと
男「了解です!!」
男は元気よくそう答えた。
編集担当者は相変わらず呆れ返っているが、セリフを変えて読み直すことにした。
田中「なんでだろ…何も思い出せない…」
そこで、田中はふとテーブルの方へ、視線を移す。
生活感漂う8畳程のワンルームの中に似つかわしくないものがそこにあったからだ。
血の着いたガラス製の灰皿だ…
きっとこの青年はこれで殴られたのだろう。
田中はそう思うと、ふとこの部屋に入った時の事を思い出した。
田中はそのマンションの前で隠れていた。
田中には1人の彼女がいた。
ショートカットで可愛らしい、そして何よりも優しい絵に書いたような素晴らしい女の子だ。
言うまでもないが田中にとって彼女は何よりも大切な人であった。
しかし、最近彼女が他の男とあっているという風の噂を聞いて今に至るのだ。
田中「何かの間違いであってくれ、頼むから…」
田中の思いは虚しく、彼女はそのマンションから別の男と仲睦まじそうに出てきてしまった。
田中の中には様々な感情が湧いた。
裏切った彼女への悲しみ、今まで気づくことの出来なかった自分への怒り、名前も知らないその男への怒り
田中はその感情のやり場を探す。
気づけばその男を追い、男の部屋に押し入っていた。
男は慌てているのか、怖がっているのか、とにかく落ち着かない様子であったが、それを差し置いて田中は男に質問した。
田中「おい、さっきの女の子とはどんな関係なんだ…?」
男「お、おい待てよ!いきなり押しかけといて、それがあんたになんの関係があんだよ!」
田中は男の話など聞かず、ジリジリと男によりながら聞き続ける。
田中「答えろよ…さっきの子とはどんな関係なんだよ…?早い…早く答えろ!!!」
田中はそう言うと男と掴み合いになり、テーブルの上にあったガラス製の灰皿を男の頭に目掛けて振りかぶったところまで思いますことが出来た。
田中「ギリ俺じゃない説はあるな、これ。」
編集担当者「適当すぎるやろ!!!」
いきなり編集担当者が大声を出した事に、睡魔に襲われていた男は目を大きく開いた。
男「うわっ!びっくりしたァ…」
編集担当者「いや、こっちがびっくりしたよ!途中いきなりシリアスになった!これ、ちょっと内容気になるぞ…?って呼んでたら、最後の田中適当すぎるでしょ!!」
「振りかざしたとこまで思い出したら、もうそこからが、今の状態だよ!」
すると男は呆れながら
男「最近の若者なんて、だいたいこんなもんでしょ?」
「担当さんはわかってないなー」
とニヤニヤしている。
編集担当者は少しイラつきながら
編集担当者「だとしてもだろ!もう折角いいとこかなってなってたのに…」
「もうここのセリフ消してそのまま行っちゃお」
男「もう…注文多いな…」
編集担当者「一応編集者だからね!?」
「文句言わないで続けるよ!」
そういうと嫌そうな顔をする男を尻目に、編集担当者は続きを読み始めた。
田中「あぁ…、俺やっちゃったんだ…」
田中は全てを思い出した。
よく考えてみれば、彼女はマンションからでてきただけで、何かしているところを見た訳では無い。
確認しようにも、田中は男を殺してしまった。
田中は焦りの中、この現場を何とかした。
編集担当者「だから急に適当!」
男「何がですか?」
キョトンとした男に、編集担当者は呆れながら
編集担当者「だから!こういう描写はしっかり書かなきゃダメでしょ!」
すると男は少し考えて
男「じゃあ描写ちょっと書き足したますよ…」
と嫌々ながら書き加え始めた。
五分ほどたって男ができたと言うので、編集担当者はその内容を確認する。
田中は焦りの中、まず血まみれの床を大急ぎで拭く。
どれだけ拭いても、拭けていないような気がして、何度も何度も拭き直す。
田中の手に握られた激落ち君はもうボロボロになっていた。
編集担当者「だからだよ!」
男「もうなに!!」
編集担当者「どこの世界に殺人現場の血液を激落ちくんで拭くやつがいるんだよ!」
男「とりあえず一旦読み切ってみてくださいよ!」
編集担当者「明らかにおかしいとこがあるのに?」
男「さっき書いたとこだから、一旦書き加えたところまでは読んでみてください!それから添削しましょ!」
男の意見に、編集担当者も確かにと思ったのか、少し落ち着いた
編集担当者「確かにそれもそうやね。ちょっと読み進めてみようか。」
そして一旦おかしいところもあるだろうが、書き加えた部分を確認してみることにした。
田中は部屋に飛散した血液を拭き切ると、一番の問題である青年の死体を見つめた。
ざっと見ても身長180cm程ありそうだ。
とりあえずタンスの中に隠すことにした。
頭がちょっぴり見えてるが問題ない。
書き加えた部分はここまでである。
それを確認した編集担当者は呼吸を整えて一言
編集担当者「流石にそれはダメだろ!!!!!!」
言い切った後の編集担当者の顔は清々しさのあまり、聖者のようであったと、後の編集部で語られている。
編集担当者「せめてギュッとタンスに入れとけよ!」
男「じゃあ…」
男は編集担当者からそう言われると、そっと原稿に…
「ギュッとした」
と書き加えた。
編集担当者「もうそれでいいよ!!」
編集担当者はこの日初めて男に妥協した。
諦めたのだろう…続きを読むことにした。
死体をタンスに隠した田中は一息つくと
ピンポーン
玄関のチャイムの音がした。
田中はいきなりの事でとにかく今自分がこの家にいる事がバレてはいけない、と思い居留守を使った。
しばらくすると玄関の方から声がした。
女「おーい、忘れ物したから取りに来たんだけど!いるんでしょー!」
田中は焦りとともに、悲しみが込み上げてきた。
その声は間違いなく彼女であった。
彼女「いるんでしょー?どうしたのー?」
田中はこのままではバレると思い、記憶の片隅にある青年の声を思い出しながら、声真似をしてこう言った。
田中(声真似)「いやね!いまね、ちょっっっとね、お取り込み中だからね、もうしばらく?もうしばらくお待ちいただけないでしょうかね?」
編集担当者「いやバレるだろ!!」
編集担当者はそう思って次の行へ目をやると
バレた
編集担当者「だろうな!」
男「おぉー!よく分かりましたねぇ」
鼻で笑いながら男は笑っている。
編集担当者「そりゃそうだろ!百歩譲って声が似ててもこんな喋り方するやついねぇだろ!」
その通りではある。ごもっともだ。
男もそう思ったのだろう。男も頷いている。
しかし、こう続けた。
男「まぁもうラストスパートなんで。」
と言うと編集担当者を急かしながら続きを読ませた。
彼女が玄関の前で声の主が田中だと気づき、話し出す。
彼女「えっ!?なんであなたがそこにいるの?!」
「シンジ君に何かしたの!?早くここ開けて!!!」
田中は動揺し、玄関を開けてしまった。
すると彼女は田中を問いただす。
彼女「なんでここにいるの!シンジ君はどこ!!なんなのよ!!!」
あの男はシンジという名前らしい。
しかし今はそんなことどうでもいい。
死体を隠したタンスだけは触らせる訳にはいかないと田中は思い、彼女にこう言った。
田中「タンスの中には何もない!!!」
編集担当者「下手くそか!!」
男「何が?」
男は相変わらず、編集担当者のツッコミ先がどこなのか気づいていない。
薄々読者の皆様お気づきだろうが、この男は救いようのないアホであり、愛すべきポンコツなのだ。
彼女「タンスの中に何かあるのね!」
編集担当者「バレたやん!!」
「これもうどうするつもりなんよ!」
編集担当者は意外とツッコミの声は止まらないが、続きが気になっているようでそのまま続きを読んだ。
彼女は田中の静止を振り切り、タンスへ直行した。
田中はタンスへと走る彼女の背中を見て、全てを告白する覚悟を決め彼女へ言った。
田中「ねぇ!!俺の話を…!」
彼女は田中が言葉を言い切る前にタンスを開けた。
すると、シンジの死体が彼女に覆い被さるようにして倒れ込み、彼女はバランスを崩し、テーブルの角で頭を打って彼女は死んだ。
田中はビックリした。
ビックリして死んだ。
ビックリ死だ。ビックリした勢いで体が逆くの字に折れ曲がり、腹から全て吹き出すという死に方である。
みんな死んだ。
男「どうですか!これ採用行けますかね?」
編集担当者「これはこれでありか…?」
そうこれは男と編集担当者の小説とはなにかを追い求める作者の悪ふざけなのである。
そこには頭から血を流した一人の男の死体があった。
男の見た目からして歳は20代半ばくらいだろうか、シワひとつないその青年の顔には、苦悶の表情が浮かべられていた。
そして、その死体の隣には立ち尽くす1人の男
そう…
人殺しの田中だ
編集担当者「いやまてい!!!」
男「へ?」
編集担当者「いや、へ?、じゃないのよ。」
「答え分かっちゃったじゃん!もう犯人田中で確定じゃん!なんで余計な一言つけちゃったかな。」
男「なんで犯人を田中って決めつけちゃうんですか!!そんなこと一言も書いてないでしょ!!」
編集担当者「じゃあ犯人は?」
男「いや、田中ではありますけど」
編集担当者「よくさっきの勢いで俺の事怒れたね…?」
男「でも違う田中ですよ?」
編集担当者「なぜ、同じ苗字のキャラを入れようとしたかを聞くべきなのか、初手に人殺し田中をぶち込んだか聞くべきなのか、わかんなくなっちゃうよ!」
男「じゃあどうしたら良かったんですか!!!!!」
編集担当者「「人殺し」さえ消せばなんの問題もない気がするけど…」
男「じゃあそう言ってくださいよ!!」
編集担当者「なんで俺が怒られてるのかな…?」
「まぁいいや、人殺し消して続き読んでみるわ。」
男「お願いします。」
田中は、死体を横にして考えていた。
…なぜ、この男は死んでいるんだ…?
そう、田中には記憶がなかったのだ。
まず、この部屋はなんなんだ。
なぜ、僕はこの部屋にいるんだ。
田中の頭には様々な疑問が浮かぶ。
そして何よりも、自分の隣にある死体は一体誰のものなのか。
色々な事を考えている内に、田中はひとつの事を思い出す。
田中「あっ、そうだ。」
「俺、またやったんだ。」
編集担当者「はいダメー!」
男「何がダメなんすか!良いとこだったのに!」
編集担当者「一体今のどこら辺が良いとこだったんだよ…」
「人殺しの田中が出ちゃってるのよ!なんなら今度は犯人ですって言っちゃったのよ!」
男「こんな清々しい男の告白を!!!!あなたは、バカにするって言うんですか!!!!」
編集担当者「いや、読んでる側からしたら、気づいた時の田中すげぇ馬鹿みたいな顔してそうなんだけど…」
男「あんたってやつは!!血も涙もないのか!」
編集担当者が男の顔を見ると、男の目には涙がこれでもかというほど溜まっていた。
編集担当者「お前はなんでここまでの話で泣けるんだよ…」
編集担当者は呆れ果てている。
編集担当者「あのな?ミステリーなんだろ、これ?」
男「もちろんです。」
編集担当者「ミステリー小説の醍醐味ってのはなんだ?」
男は少し迷った様子を見せると軽そうな口を開いた。
男「まぁ、犯人誰だろなーとか、推理要素とか考えながら読めるとこっすかね?」
編集担当者「そうだろ?でも、この作品は表紙を開けたら、その醍醐味をぶっ飛ばした答えが乗ってる訳だ。」
「たとえるなら…そうだな、学校の小説とかたまに、序盤の方にペンでこいつが犯人です。とか書くバカいるだろ?それと一緒だよ」
男「あっ、それ俺っすね。」
男は間髪入れずに答えた。
編集担当者「あっ、だからか!納得納得…じゃねぇんだよ!」
「とりあえず、この田中のセリフも「何も思い出せない」とかでいいんだよ!」
編集担当者がそう言うと
男「了解です!!」
男は元気よくそう答えた。
編集担当者は相変わらず呆れ返っているが、セリフを変えて読み直すことにした。
田中「なんでだろ…何も思い出せない…」
そこで、田中はふとテーブルの方へ、視線を移す。
生活感漂う8畳程のワンルームの中に似つかわしくないものがそこにあったからだ。
血の着いたガラス製の灰皿だ…
きっとこの青年はこれで殴られたのだろう。
田中はそう思うと、ふとこの部屋に入った時の事を思い出した。
田中はそのマンションの前で隠れていた。
田中には1人の彼女がいた。
ショートカットで可愛らしい、そして何よりも優しい絵に書いたような素晴らしい女の子だ。
言うまでもないが田中にとって彼女は何よりも大切な人であった。
しかし、最近彼女が他の男とあっているという風の噂を聞いて今に至るのだ。
田中「何かの間違いであってくれ、頼むから…」
田中の思いは虚しく、彼女はそのマンションから別の男と仲睦まじそうに出てきてしまった。
田中の中には様々な感情が湧いた。
裏切った彼女への悲しみ、今まで気づくことの出来なかった自分への怒り、名前も知らないその男への怒り
田中はその感情のやり場を探す。
気づけばその男を追い、男の部屋に押し入っていた。
男は慌てているのか、怖がっているのか、とにかく落ち着かない様子であったが、それを差し置いて田中は男に質問した。
田中「おい、さっきの女の子とはどんな関係なんだ…?」
男「お、おい待てよ!いきなり押しかけといて、それがあんたになんの関係があんだよ!」
田中は男の話など聞かず、ジリジリと男によりながら聞き続ける。
田中「答えろよ…さっきの子とはどんな関係なんだよ…?早い…早く答えろ!!!」
田中はそう言うと男と掴み合いになり、テーブルの上にあったガラス製の灰皿を男の頭に目掛けて振りかぶったところまで思いますことが出来た。
田中「ギリ俺じゃない説はあるな、これ。」
編集担当者「適当すぎるやろ!!!」
いきなり編集担当者が大声を出した事に、睡魔に襲われていた男は目を大きく開いた。
男「うわっ!びっくりしたァ…」
編集担当者「いや、こっちがびっくりしたよ!途中いきなりシリアスになった!これ、ちょっと内容気になるぞ…?って呼んでたら、最後の田中適当すぎるでしょ!!」
「振りかざしたとこまで思い出したら、もうそこからが、今の状態だよ!」
すると男は呆れながら
男「最近の若者なんて、だいたいこんなもんでしょ?」
「担当さんはわかってないなー」
とニヤニヤしている。
編集担当者は少しイラつきながら
編集担当者「だとしてもだろ!もう折角いいとこかなってなってたのに…」
「もうここのセリフ消してそのまま行っちゃお」
男「もう…注文多いな…」
編集担当者「一応編集者だからね!?」
「文句言わないで続けるよ!」
そういうと嫌そうな顔をする男を尻目に、編集担当者は続きを読み始めた。
田中「あぁ…、俺やっちゃったんだ…」
田中は全てを思い出した。
よく考えてみれば、彼女はマンションからでてきただけで、何かしているところを見た訳では無い。
確認しようにも、田中は男を殺してしまった。
田中は焦りの中、この現場を何とかした。
編集担当者「だから急に適当!」
男「何がですか?」
キョトンとした男に、編集担当者は呆れながら
編集担当者「だから!こういう描写はしっかり書かなきゃダメでしょ!」
すると男は少し考えて
男「じゃあ描写ちょっと書き足したますよ…」
と嫌々ながら書き加え始めた。
五分ほどたって男ができたと言うので、編集担当者はその内容を確認する。
田中は焦りの中、まず血まみれの床を大急ぎで拭く。
どれだけ拭いても、拭けていないような気がして、何度も何度も拭き直す。
田中の手に握られた激落ち君はもうボロボロになっていた。
編集担当者「だからだよ!」
男「もうなに!!」
編集担当者「どこの世界に殺人現場の血液を激落ちくんで拭くやつがいるんだよ!」
男「とりあえず一旦読み切ってみてくださいよ!」
編集担当者「明らかにおかしいとこがあるのに?」
男「さっき書いたとこだから、一旦書き加えたところまでは読んでみてください!それから添削しましょ!」
男の意見に、編集担当者も確かにと思ったのか、少し落ち着いた
編集担当者「確かにそれもそうやね。ちょっと読み進めてみようか。」
そして一旦おかしいところもあるだろうが、書き加えた部分を確認してみることにした。
田中は部屋に飛散した血液を拭き切ると、一番の問題である青年の死体を見つめた。
ざっと見ても身長180cm程ありそうだ。
とりあえずタンスの中に隠すことにした。
頭がちょっぴり見えてるが問題ない。
書き加えた部分はここまでである。
それを確認した編集担当者は呼吸を整えて一言
編集担当者「流石にそれはダメだろ!!!!!!」
言い切った後の編集担当者の顔は清々しさのあまり、聖者のようであったと、後の編集部で語られている。
編集担当者「せめてギュッとタンスに入れとけよ!」
男「じゃあ…」
男は編集担当者からそう言われると、そっと原稿に…
「ギュッとした」
と書き加えた。
編集担当者「もうそれでいいよ!!」
編集担当者はこの日初めて男に妥協した。
諦めたのだろう…続きを読むことにした。
死体をタンスに隠した田中は一息つくと
ピンポーン
玄関のチャイムの音がした。
田中はいきなりの事でとにかく今自分がこの家にいる事がバレてはいけない、と思い居留守を使った。
しばらくすると玄関の方から声がした。
女「おーい、忘れ物したから取りに来たんだけど!いるんでしょー!」
田中は焦りとともに、悲しみが込み上げてきた。
その声は間違いなく彼女であった。
彼女「いるんでしょー?どうしたのー?」
田中はこのままではバレると思い、記憶の片隅にある青年の声を思い出しながら、声真似をしてこう言った。
田中(声真似)「いやね!いまね、ちょっっっとね、お取り込み中だからね、もうしばらく?もうしばらくお待ちいただけないでしょうかね?」
編集担当者「いやバレるだろ!!」
編集担当者はそう思って次の行へ目をやると
バレた
編集担当者「だろうな!」
男「おぉー!よく分かりましたねぇ」
鼻で笑いながら男は笑っている。
編集担当者「そりゃそうだろ!百歩譲って声が似ててもこんな喋り方するやついねぇだろ!」
その通りではある。ごもっともだ。
男もそう思ったのだろう。男も頷いている。
しかし、こう続けた。
男「まぁもうラストスパートなんで。」
と言うと編集担当者を急かしながら続きを読ませた。
彼女が玄関の前で声の主が田中だと気づき、話し出す。
彼女「えっ!?なんであなたがそこにいるの?!」
「シンジ君に何かしたの!?早くここ開けて!!!」
田中は動揺し、玄関を開けてしまった。
すると彼女は田中を問いただす。
彼女「なんでここにいるの!シンジ君はどこ!!なんなのよ!!!」
あの男はシンジという名前らしい。
しかし今はそんなことどうでもいい。
死体を隠したタンスだけは触らせる訳にはいかないと田中は思い、彼女にこう言った。
田中「タンスの中には何もない!!!」
編集担当者「下手くそか!!」
男「何が?」
男は相変わらず、編集担当者のツッコミ先がどこなのか気づいていない。
薄々読者の皆様お気づきだろうが、この男は救いようのないアホであり、愛すべきポンコツなのだ。
彼女「タンスの中に何かあるのね!」
編集担当者「バレたやん!!」
「これもうどうするつもりなんよ!」
編集担当者は意外とツッコミの声は止まらないが、続きが気になっているようでそのまま続きを読んだ。
彼女は田中の静止を振り切り、タンスへ直行した。
田中はタンスへと走る彼女の背中を見て、全てを告白する覚悟を決め彼女へ言った。
田中「ねぇ!!俺の話を…!」
彼女は田中が言葉を言い切る前にタンスを開けた。
すると、シンジの死体が彼女に覆い被さるようにして倒れ込み、彼女はバランスを崩し、テーブルの角で頭を打って彼女は死んだ。
田中はビックリした。
ビックリして死んだ。
ビックリ死だ。ビックリした勢いで体が逆くの字に折れ曲がり、腹から全て吹き出すという死に方である。
みんな死んだ。
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