【完結】魂のレシピと、クローン英雄の証明

ふじ朔太郎

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第二章

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 ​山間の細い道を歩き始めて三日目のことだった。

 二人が立ち寄った小さな村で、リリアは病気の子供に薬草を調合していた。

 そこに、怪しげなローブを纏った集団が現れた。

 「狂乱の錬金術師」カインが送り込んだ、レシピを狙う追手だ。

「おい、小娘。その『魂のレシピ』の情報を渡せば、命だけは助けてやる」
「なんであんたたちに……! 来ないで!!」
「騒ぎ立てても無駄だ!」

 男たちがリリアを取り囲む。リリアは、恐怖で顔を青ざめさせながらも、子供を庇って後ろに下がった。

 ゼロスは静かに剣を構える。

『戦闘シミュレーション:開始。敵の武器、魔法の種類から最適な攻撃パターンを計算』

 シミュレーションは数瞬で完了し、敵を無力化する完璧な手順が示された。

 しかし、ゼロスの脳裏に、リリアが攻撃され、あの工房で経験した「悲哀の涙」を流す光景が、シミュレーション結果を上書きするようにフラッシュバックした。

『システム警告:防御優先順位、対象リリアへ異常集中』

「貴様らが、この対象を損傷させることを許可しない」

 ゼロスの声は、初めて微かに震えた。彼は最適解の通りに敵の急所を狙うのではなく、剣に過剰な光のエネルギーを集中させ、敵の存在を完全に消し去るほどの、無駄な、そして感情的な攻撃を放った。

 戦闘は一瞬で終わった。敵の残骸が消え去った後も、ゼロスのレギオンを握る手は、微かに震えていた。

​「ゼロス、ありがとう……」
「感謝は不要だ」

 ゼロスは冷たく返した。彼のシステムは、今の衝動を懸命に分析していた。

『感情データ:高密度な攻撃性。名称:怒り。定義:対象への危機的状況に対し、理性を超えて発生した衝動的なエネルギー』

 ゼロスは初めて、自分のシステムに記録されていない「熱」を感じていた。

 それは、彼の「完璧さ」を脅かす、制御不能なエネルギーだった。彼は恐怖すら覚えた。この得体の知れないエネルギーが、本当に人類の求める「魂」なのかと。
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