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第二章
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しおりを挟む追手を振り切り、ゼロスとリリアは古い街道を外れて、廃墟となった古代文明の小規模な『データ図書館』へと辿り着いた。
リリアが持つレシピの断片をゼロスが解析し、足りないピースが起動装置だと断定された。
その「魂の起動装置」を目的地と定め、場所を特定するためにさらに解析を進める。
「ここよ。この紋章は、レシピが生まれた場所を示す古代文字だわ!」
リリアは興奮し、埃を被った石の台座にレシピの断片を置き、古代文字の解読を始めた。
ゼロスは、周辺の警戒と並行して、リリアの解析を手伝った。彼の古代知識と、リリアの柔軟な錬金術の知恵が組み合わされると、解析スピードは飛躍的に向上した。
そして、一つの巨大な石板の謎が解けた瞬間、リリアは両手を叩いて跳び上がった。
「やった! 解けたわ! 次の場所がわかった! ゼロス、成功よ!」
リリアは満面の笑みを浮かべ、歓喜の声を上げた。その笑顔を見たとき、ゼロスのシステムに、以前記録された「苛立ち」や「怒り」とは全く異なる、軽快で心地よいデータの流れが観測された。
『感情データ:高い充足感。名称:喜び。定義:目標の達成、または対象リリアの幸福な状態に連動して発生する、継続を推奨される思考』
ゼロスは、これが「喜び」という感情だと初めて知覚した。それは不快なノイズではなく、効率を向上させるボーナスデータのように感じられた。
しかし、その「喜び」のデータが流入した直後、彼の身体に異変が起こる。
「……何だ?」
ゼロスがふと外に目を向けたとき、遠くの森に、帝国軍の斥候の微かな影を捉えた。
少し前から、ゼロスは管理者であるゼノンと連絡を断っていた。
それが原因だろう。次の瞬間、ゼロスは剣を構えようとするが、彼の判断が一瞬、遅れた。
「……戦闘シミュレーション開始。……? なぜ最適な迎撃タイミングを弾き出せない? 思考の優先順位が……リリアの笑顔の残像に、わずかだが奪われている……?」
リリアの無邪気な「喜び」の感情を受け入れた代償として、「兵器ゼロス」の機能が、わずかだが低下したのだ。
彼は、自分が「完璧な兵器」から、「不完全な人間」へと変わり始めている恐怖を認識した。
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