【完結】追放された錬金術師、現代の「食品添加物知識」で辺境の村をたった3日で救う

ふじ朔太郎

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「ユウキ、お前はもう用済みだ」


 目の前に立つのは、王都の領主の息子、ゼイン・フォン・ヴェルナー。きらびやかな衣装をまとい、鼻で笑っている。

「王都付き宮廷錬金術師など、名ばかりの無能。作った薬草茶の保存期間が三日と持たないお前など、いても邪魔なだけだ」
「保存期間は、今ある材料ではあれが限界です。もっと別の材料が仕入れられれば、期間も品質も変えられます」

 ユウキは冷静に反論した。

 彼はこの世界に転生して十数年。

 とある王国の都で宮廷錬金術師として、限られた知識と資源で薬を作ってきた。

 だが、現代日本のの知識を持つユウキから見れば、この世界の保存技術は原始的すぎた。

 だがその反論に、ゼインが声を荒らげる。

「うるさい! さっさと出ていけ! その辺の村で、そのまま飢え死にでもするがいい。お前の作った地味な薬草茶など、誰も欲しがらないからな!」

 吐き捨てるように言われて、ユウキは溜息をついた。

「わかりました。では早速、私めはこの理不尽な王都から離れましょうか」

 わずかな皮肉を込めて言い返す。ゼインは、「フンッ」と鼻を鳴らした。


 そうしてユウキが辿り着いたのは、地図の端にある痩せた村、エルナだった。

 家屋も質素で、道も整備されていない。

 行き交う人々はボロ布を繕った服に身を包んでいる。ユウキは村の入り口で、あまりに想像と違う景色を前に立ち尽くした。

「あんたが、王都から送られてきた錬金術師?」

 突然声をかけられて目を向ける。村からユウキを出迎えたのは、村長代理だという十代の娘リナだった。

 日焼けした顔に、警戒心が滲んでいる。訝しげに見られて、ユウキは慌てて名を名乗った。

「ユウキといいます。その錬金術師で合ってると思うけど……今はただの流人かな」
「流人~?」

 リナはユウキの荷物を間近で見て、さらに顔を曇らせた。

「王都からは、すごい賢者が来るって聞いてたのに。あんた、薬草も道具もほとんど持ってないじゃないか」
​「私は道具よりも、知識で薬を作るので」

 リナは信用してない様子だったものの、しぶしぶユウキを村の中へ案内した。

 だが、​村の状況は思ったより悲惨だった。

「ひどい食糧不足だ。特に、せっかく狩りをした肉や、摘んだベリーがすぐに腐ってしまう」

 リナがまず案内したのは、村の貯蔵庫だった。そこには、わずかに残った保存食が積まれていたが、その大半に青いカビが生え、異臭を放っている。

「なぜだ。塩もちゃんと振ったのに、一週間も持たずにこうなる」

 倉庫番のおじさんが悔しそうに言った。

 ユウキはカビが生えた保存食に近づき、じっと観察する。そして、「たぶん」と口を開いた。

「これは……カビの繁殖スピードが異常に速いですね。単なる塩分濃度や温度の問題では、ないみたいだ」

 ユウキの頭の中で、前世の知識がよぎる。

 前々から知っていたことだが、この世界の塩は精製度が低すぎる。そのため、塩に含まれる不純物が逆に保存を邪魔し、さらにこの地域の高い湿度が、特定種の耐塩性カビを活性化させているようだった。

 ユウキはわずかに口角を上げる。

「おじさん。この村の腐敗問題は、私の知識で解決できますよ」

 おじさんは「そうなのか! ありがたい!」と喜びを口にするが、対してリナは怪訝な顔をした。

「知識~? 本当にあるの~?」
「まあ、任せて」

 そう返してユウキは静かに微笑んだ。そして続ける。

「大昔でありながら最新の知識、食品保存化学を見せるから。私に、村で一番安い『酢』と『木の灰』をください」

 彼はおじさんにそう、お願いをした。
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