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24番のホームラン
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僕の父は野球が好きだった。夕飯の時はいつも野球中継を観ていたし、地元の友人達とZOO(ズー)という草野球チームを作り、週末になれば近所のスポーツセンターにある野球場で練習や試合をしていた。家から野球場が近かったこともあり、ユニフォーム姿でグラブとバット、スパイクを持って意気揚々と家を出る。
僕や母、妹も週末になれば野球場に連れて行かれていた。当時はルールが分からないだけでなく、そもそも野球の何が面白いのか分からなかったし、野球をする父を見ても格好良いなんて思ったことはなかった。野球場の土や芝の匂いも好きじゃきったし。いや、好きじゃないというより寧ろ嫌いだった。終わった後に近所の定食屋で食べるラーメンだけを楽しみに行っていた。土臭いユニフォームやスパイク、汗の染み込んだキャップの良さなど分からなかった。
そんな僕にも転機が訪れる。小学二年生のある夜、いつも通り夕飯を食べながら野球中継を観ていた時だった。
”カキーン”
心地良い打球音が鳴り、画面に視線をやると、打球が綺麗な放物線を描いて観客席に吸い込まれていった。
「ホームラン。ホームランです。」
テレビの中継の解説者が声高らかに叫ぶ。リプレイ映像が映し出されると、24番の背番号を付けた選手が勢い良くバットを振り抜きボールを弾き返していた。爽やかな笑みを浮かべ小走りでベースを回っていく。ホームインするとチームメイトとハイタッチ。ヘルメットをペチペチ叩かれたりもしていた。チームのマスコットキャラクターであるジャビットのぬいぐるみを観客席に投げ込んでベンチへ戻っていく。
「お父。今の誰。」
気付くと僕は父にそんなことを聞いていた。
「24番だから新人の高橋だろう。」
当時ルーキーだった高橋由伸。彼のホームランだった。あまりに美しい放物線に、湧き上がる歓声に、爽やかな笑顔に僕は一瞬で虜になった。
「お父。野球やりたい。」
気付いたら父にそう告げていた。
「どうしたんだ。急に。」
「なんだっていいじゃん。野球やりたいんだよ。」
「そうか。」
この時の父の嬉しそうな、いや、嬉しさをなんとか隠そうとしている表情は今でも覚えている。
こうして僕のBaseball Side Storyは幕を開けた。いや、本当は生まれた時にはもう始まってたのだけれど。
僕や母、妹も週末になれば野球場に連れて行かれていた。当時はルールが分からないだけでなく、そもそも野球の何が面白いのか分からなかったし、野球をする父を見ても格好良いなんて思ったことはなかった。野球場の土や芝の匂いも好きじゃきったし。いや、好きじゃないというより寧ろ嫌いだった。終わった後に近所の定食屋で食べるラーメンだけを楽しみに行っていた。土臭いユニフォームやスパイク、汗の染み込んだキャップの良さなど分からなかった。
そんな僕にも転機が訪れる。小学二年生のある夜、いつも通り夕飯を食べながら野球中継を観ていた時だった。
”カキーン”
心地良い打球音が鳴り、画面に視線をやると、打球が綺麗な放物線を描いて観客席に吸い込まれていった。
「ホームラン。ホームランです。」
テレビの中継の解説者が声高らかに叫ぶ。リプレイ映像が映し出されると、24番の背番号を付けた選手が勢い良くバットを振り抜きボールを弾き返していた。爽やかな笑みを浮かべ小走りでベースを回っていく。ホームインするとチームメイトとハイタッチ。ヘルメットをペチペチ叩かれたりもしていた。チームのマスコットキャラクターであるジャビットのぬいぐるみを観客席に投げ込んでベンチへ戻っていく。
「お父。今の誰。」
気付くと僕は父にそんなことを聞いていた。
「24番だから新人の高橋だろう。」
当時ルーキーだった高橋由伸。彼のホームランだった。あまりに美しい放物線に、湧き上がる歓声に、爽やかな笑顔に僕は一瞬で虜になった。
「お父。野球やりたい。」
気付いたら父にそう告げていた。
「どうしたんだ。急に。」
「なんだっていいじゃん。野球やりたいんだよ。」
「そうか。」
この時の父の嬉しそうな、いや、嬉しさをなんとか隠そうとしている表情は今でも覚えている。
こうして僕のBaseball Side Storyは幕を開けた。いや、本当は生まれた時にはもう始まってたのだけれど。
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