Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

文字の大きさ
2 / 37

野球といえばミズノ

しおりを挟む
 そんなこんなで野球を始めることにした僕は、父と共に小学校の友達が所属していた少年野球チームの門を叩くことにした。
 土曜日の昼過ぎ。家を出て自転車で練習場に向かう。えっちらおっちらペダルを漕ぎ、俗に言う「山谷」と呼ばれる辺りをふらふら走っていく。
「こんなところに練習場があるのか。」
 そんな不安を感じ出したところで、少し先に全面をネットで囲まれた砂利の広場が見えた。近付くにつれオレンジ色のチームロゴが書かれた背中達が見え始めた。
「ここか。」
 植え込みの端に自転車を停めて中へ。緑色のネットを潜る。真っ先に気付いたのは友達のお父さんだった。
「お。いらっしゃい。」
 口の周りをぐるりと髭で囲んだ、友達のお父さんがにっこり笑った。
「今日は宜しくお願いします。」

 友達のお父さんの後に続き監督とコーチの元へ。事前に連絡を入れていたということもあり、歓迎してくれた。
「こんちわ。よく来たね。」
「今日宜しくお願いします。」
 父は緊張で立ち尽くす僕の頭を掴み、一緒にお辞儀をした。

 まずは見学ということになっていたのに、気付いたらバットを持ってバッターボックスに立っていた。
「とりあえず、まずやってみようか。」
 というコーチの提案により、いきなりバッティング練習をすることに。バットの持ち方を教えてもらいバッターボックスへ。
「ベース寄りに立ってみて。」
「うん。」
 言われるがまま立ってみた。足を肩幅からいの幅で開き、高橋由伸のようにバットを肩に当ててから、バットを起こす。気持ちはもう高橋由伸だ。右バッターだけれど。
 コーチがトスしたボールを打ってみてほしいとのことだったのだが、正直僕は心配だった。このまま撃ち抜いたらコーチの身が危ない。こっちはもう高橋由伸なのだ。コーチが怪我をしてしまうではないか。そんなことを考えている間に、コーチが投球モーションに入りボールを放った。
「もう知ったことか。」
放たれたボールを目掛けバットを振り抜く。
”ブンッ。ブンッ。”
 五分くらい振り続けただろうか。当然のことながらバットがボールに当たることはなかった。何度やっても擦りもしない。そのことが悔しくて、帰りには入団手続きをしていた。


 野球を始めるとなると、当然用具が必要になってくる。僕は父に連れられディスカウントショップのスポーツ用品コーナーへ。まずはグラブとボールを買うことにした。
 ボールは少年野球ではC球と決まっていたのでそれを籠へ。
 さて、問題はグラブである。グラブに関しては沢山の種類があった。投手用に内野手用に外野手用、キャッチャーミットにファーストミットとポジションによってグラブは違った。
 しかしながら、まだキャッチボールすらしていない僕は、ポジションがどこになるかなど到底想像も出来なかった。なんとなく眺めていたら父が一つのグラブを持ってきた。
「これでいいんじゃないか?」
 グラブに貼られたタグを見てみると、そこには”オールラウンダー用”と書かれていた。
「オールラウンダーって何。」
「どこのポジションでも使えるってことだ。」
 そんな夢のような物があったのか。瞳が輝きだす。
「どこにあったの。」
「そこだよ。なんで。」
「いや、他のメーカーのもあるのかと思って。」
「お前な。野球と言えばミズノって決まってるんだよ。だから、これでいいだろう。」
 有無を言わさずグラブが決まった。ミズノの黒いオールラウンダー用のグラブ。メーカーロゴはブルー。
 帰り道、父の運転する車の中でグラブにボールをパチパチと打ちつけながら帰った。初めて手にした自分のグラブに、僕の心もパチパチと弾けるように弾んでいたような気がする。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...