9 / 96
第1章
9.完了報告
しおりを挟むセシルはザイルの町に戻り冒険者ギルドへ向かう。町は行きかう人々が多く既に夕方の喧騒に包まれている。
ギルドに到着したあと討伐完了の報告をしようとカウンターへ向かった。カウンターにいたのは昨日と同じ受付嬢のレーナだ。
「こんにちは、レーナさん。討伐完了の報告に来ました。これがゴブリンの魔石です。ゴブリンは雑魚が11体で、ボスのゴブリンロードが1体でした。合わせて計12体です」
いつもより少し声のトーンを落としてレーナに告げたあとカウンターに魔石を置いた。彼女は驚いたように魔石を見てそのままセシルに目を向けた。
今の場合もそうだがこれまでの周囲の反応を見る限り、どうやら自分のような子供がゴブリン討伐をするのはかなり稀なことのようである。昨日の『てんぷら』のようなトラブルを避けるためになるべく目立たないほうがいいと思った。
揉め事は避けるのがベターだ。
「……C級のゴブリンロードと11体のゴブリンをあなた一人で倒したんですか!?」
レーナが驚きの声をあげる。お願い、声を抑えて……。
「はい、なんとか……。できれば他の冒険者に分からないようにしていただけると助かります。僕みたいな子供が魔物の討伐をするとまた他の冒険者に絡まれるかもしれませんから。だからボスの首は解体場で出してきます」
「分かりました。……本当にセシルさんには驚かされてばかりです。なるほど。確かに目立たないようにしたほうがいいかもしれませんね。では奥の解体場へどうぞ」
促されるまま解体場へ行き、デニスにゴブリン討伐の旨を伝えゴブリンロードの首を差し出す。ゴブリンロードの首の額にある刺青のような痣を見た途端デニスは驚いて声をあげる。
「おいおい、それはゴブリンロードか!? まさかまた一人で討伐したってんじゃないだろうな……」
レーナさんと同じような反応に思わず苦笑してしまう。
「はい、僕一人でやりました。魔石はカウンターに出してきましたが、首はどうしましょうか?」
「いや、まあ首はゴブリンロードをやったって証明にはなるが特に素材になるわけじゃない。こっちで処分しておこう。特にゴブリンロード単体の討伐依頼が出ているわけじゃないから依頼完了報酬はそのままだな。だがこれはお前の討伐記録に記載しておこう。昇級が早まるかもしれん」
ゴブリンがゴブリンロードに進化した場合ゴブリンの額に刺青のような痣が浮かぶ。これで首だけでもゴブリンロードのものだと判断できるのだ。
それはともかく別に昇級はしなくてもいいんだけどな。ああ、でもランクが上がると今回のように人助けしやすくなるのかなぁ? うん、でもやっぱり今は目立ちたくないな。
興奮したように話すデニスにちょっと逡巡して答える。
「いえ、特に今のままのランクでいいです。あんまり目立ちたくないんです。てんぷらがあるかもしれないので……」
「てんぷら? なんだそりゃ……。まあいいや。昨日のワイルドボアは解体終ってるから肉を持っていってくれ」
そう言ってデニスが冷蔵室から5匹分の肉が入った袋を渡してくれたので、すぐにそれをアイテムバッグに入れる。
カカシ村でギュンターさんに手持ちのお肉全部渡しちゃったからな。これだけあればソフィーにもたくさんお裾分けできる。喜んでくれるかな?
それをさっさかバッグに放り込んで解体場を出て受付カウンターへ向かった。
受付カウンターでレーナさんと話す。
「セシルさん、こちらが依頼完了の報酬になります。大銀貨15枚になります。ゴブリンロードが居たということですので難易度はかなり高かったでしょうが、報酬は依頼時のものとさせていただきます。申し訳ございません」
「いえ、大丈夫です。問題ありません」
すぐに買取りのお金をバッグにしまいレーナにお礼を言って冒険者ギルドを後にした。
カカシ村も救えたと思うし初めての依頼は成功した。そしてお金もお肉も手に入った。全てが上手くいってとても満足だ。
もう既に辺りは薄暗くなっていた。急いで貧民街へ向かう。ソフィーの家に着くと2人が笑顔で迎えてくれた。まるで自分の家のようでほっとする。そして二人の顔を見られてとても嬉しかった。
「ただいま、ソフィー、ベンノさん!」
「おかえり! 大丈夫? 怪我はない?」
「おう、おかえり! ゴブリン討伐はうまくいったかい?」
「うん、特に怪我はない。討伐も無事完了したよ。ただわたしが行ったときにはもう犠牲になってた人がいてね……」
ゴブリンの犠牲になった若者と彼の死を悲しんでいた婚約者の女性のことを思い出しながら、カカシ村での出来事を二人に話して聞かせる。
「ふむ、なるほどな……。俺は魔物と戦ったことがないからあまり分からないんだが、ゴブリンはそんなに強くないのか?」
「ええ、単体はそこまででも。ただ奴らは基本群れで行動する習性があるんです。だから大体ゴブリンの集落へ行くと10体以上は居ることが多いんです。群れるとそれなりに工夫しないと無傷で討伐するのは普通は難しいと思います」
セシルの話を聞いてソフィーが感心したように言った。
「セシルって本当に強いのね……。私を助けてくれたときも思ったけど、女の子で私と同じくらいの年でそんなに強い子なんて見たことないわ。ううん、大人でも見たことない」
「うん、そのことなんだけどね。ちょっと今回思ったんだけど、あんまり派手に動き回るとまたてんぷらになるでしょ? だからこれからはなるべく目立たないようにやろうと思うの」
絡まれて人を傷つけるのは嫌だし時間も無駄にするしね。
「……う、うん、もう十分目立ってたような気がするけど、揉め事が起こらないようにするのがいちばんね」
「そうだなあ。冒険者ギルドには時々柄の悪い冒険者がいるからな。目立たないようにするのが得策だろう。出る杭は打たれるっていうしな」
「ええ、そうですね……」
ただ冒険者とのトラブルを避けたいだけじゃない。あまり注目を集めて聖女の孫である自分の素性がばれるのが怖い。一応幻影のペンダントで髪の色を黒髪に偽装してはいる。だけど自分は若い頃のおばあちゃんそっくりらしいので、目立って王国の間諜の目にでも留まったらきっと面倒なことになる。
2人と楽しく会話をしながら夕食を済ませた。そのあと魔洗浄を自分にかけて体を綺麗にしてからそのまま寝床に入らせてもらった。
ああ、浴槽を買ってきて置かせてもらうのを忘れてた。そんなことを考えながら横になった途端、多分かなり疲れていたのであろうセシルはあっという間に深い眠りについた。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる