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第6章
76.ケントの進化 <ケント視点>
しおりを挟む『セシルが闘技場でディアボロスを迎え撃つからすぐに来て』
頭の中に響く誰かの声。姿はなくとも俺には誰だかすぐに分かった。この声はルーンだ。セシルが単独で迎え撃つなんて無茶だ。今すぐ行かなければ!
ルーンが悪魔憑きだと彼女は言っていた。もしかすると彼が彼女に何か対策を教えたのかもしれない。
「エリーゼさん、俺はセシルのところへ、闘技場へ行きます。体もほぼ回復しましたし今なら奴と戦えるはずだ!」
俺の体を心配するエリーゼに後を頼んだあと城を出て急いで闘技場へ向かう。闘技場はここからそんなに離れてはいない。
目的の闘技場へ到着してまず目に入ったのがセシルにまさに襲いかからんと突進しているディアボロスの姿だった。セシルの間合いに入られてしまう。間に合わない!
それを目にした瞬間、頭には彼女の笑顔や怒った顔、今までに見せた表情が一度に流れた。彼女を絶対に失いたくない! 失って堪るかっ!!
その激しい感情に支配されると同時に周囲の景色が止まる。いや停止に近いほどゆっくりと動いている。気がつくと俺はセシルの方へ向かって走っていた。その間彼女のことしか考えていなかった。
驚くほどスローモーションな景色の中を駆け抜けそして間に合ったっ!!
――ガキーンッ!
「なんだと……? どこから現れた……?」
大剣の剣身で頭上から振り下ろされたディアボロスの漆黒の剣を防ぐ。
そして俺を見て奴が驚愕の表情を浮かべる。と同時に安堵する。これでセシルを失わずに済んだと。
「はっ……間に合ってよかった……」
「……ケント?」
セシルもまた驚きを隠せないようだったが俺も驚いた。彼女を絶対に失わないと思ったとき周囲の景色が急にゆっくりになった。そしてあのとき何かを掴み支配できた感覚がある。
剣身を合わせていたディアボロスの剣を思い切り弾いた。それに伴い奴が後ろに飛び退き一度距離を取る。
「セシル、援護を頼む」
「分かった。……ケント、ありがとう」
さっきの要領でディアボロスに向かって前進する。再び周りの景色がゆっくりになる。流石に奴本体はそれなりに速いが最初の戦い程ではない。
奴が遅くなったんじゃない。これは俺が速くなっているのか……。
その超加速状態でまんまと懐に入り込み奴の胴目がけて大剣を横薙ぎに右へ振りぬく。加護が進化したのか俺が進化したのか分からないがやれるだけのことをやるだけだ。
「ぐッ!」
「遅いっ!」
ディアボロスの体に初めて傷をつけた。そして横薙ぎから続けざまに斜め上に斬り上げる。
「がはッ!」
これもヒットした。するとディアボロスは強引にそのまま俺の胴目がけて上から斜めに振り下ろす。それを寸でのところで躱す。
調子に乗るとヤバいな。やっぱり強いわ、こいつ。
超加速状態の俺でもようやく躱せる程度の速度で漆黒の剣を振ってくる。この状態でやっと互角ってか? 大したもんだよ、この悪魔は。
こっちの攻撃のほうがより当たってはいるが奴の体はすぐに回復してしまう。こっちは一撃でも受ければ忽ち体力を奪われてしまう。全力で躱さなきゃいけないから無理して踏み込める分奴が有利か。
何度か剣戟を交わしながらもなんとか互角にやり合っていたそのとき。
「セシル! ケント!」
「大丈夫ですかっ!?」
どうやらハイノとワタルが来てくれたようだ。
「ケント、もう少し頑張ってくれ」
ハイノがワタルとともにセシルの方へ走って行く。何か作戦でもあるのか?
「任せてくださいっ!」
「ふん、舐めおって!」
あ、ディアボロスの表情が少し悔しそうに歪んだ。自分の思うように戦闘が運ばないのが歯痒いのか。奴のにやけ顔を崩せたのが小気味いい。ざまぁみろだ。こっちは神殿では散々お前にやられたんだからな!
「こちとらお前にやられて相当鬱憤が溜まってんだよっ!」
そう悪魔に叫びながら、姿勢を低くしその足元を横に薙ぎ払いつつそれを奴が飛んで躱したところで、真下から大剣の軌道を変え真上に斬り上げる。どうだ、俺の直角切り!
ん、なんだ? セシルが立ち上がり何やら俺の大剣に向かって何か魔法をかけている。
「ウィルお願い」
『分かったのよぅ!』
「『帯聖光』!」
セシルと俺にのみ見える光の精霊ウィルが眩い光の帯となって俺の剣に巻きつく。その瞬間俺のツヴァイハンダーは滅茶苦茶格好いい光を纏う大剣・ホーリーツヴァイハンダー改となった。
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