177 / 303
16、トラン動乱
第175話 白い魔導師たち
しおりを挟む
リューズの配下、白い魔導師が背後からセレスに襲いかかる。
1人の白い魔導師が生み出した巨大な闇の固まりは、セレスの羽が触れるとその光を飲み込んでゆく。
「無礼者メ!闇ヨ、飲ミ込メ!」
真っ黒なその闇は、魔導師の声に反応して大きく広がり、セレスをひと飲みにしようと襲いかかった。
「無礼はお前よ、不埒者!」
セレスは振り向きざまに左手を上段から振り下ろしてそれを一閃し、両断した闇に腕輪のある右手を広げると一瞬で吸い込まれる。
あまりにもあっさりと無効化された力に驚いた魔導師の横で、もう1人が杖を振って巨大なドラゴンを生み出す。
「飲ミ込ンデシマエ!」
ウヲオオオオオオォォォ
人を一飲みしようかと言うほどのドラゴンが、青い炎を吐きながらセレスに向けて雄叫びを上げた。
「うるさい!」
ドラゴンの咆哮に、セレスが一喝して一気に向かい、くるりと舞ってドラゴンの顔に蹴りを入れた。
「バッ馬鹿ナ!巫子ガ蹴ッタ?!」
ドラゴンの身体は紙のように蹴られた場所が吹き飛び、セレスの羽がまるで巨大な手のように形を変えて引きちぎって行く。
ギャアアアアアアア……
「ククク、なんともろい作り物よ!」
「マ、マサカ! コノヨウナコトガッ!」
その場にいた白い魔導師達が、ひるんで身を引いた。
「オ、オノレ地ノ巫子!我ガ力ヲ見ヨ!」
自分たちの力が通じない焦りに、それでもまた術を繰り出そうとする白い魔導師たちを見下ろし、セレスが翼を元に戻すと腹立たしそうにため息を吐いた。
「愚か者よ、思い出すが良い!遙か昔、せいせいたるお前を神木のようだと言うたはこの私だ。
この有様、お前を神木と定めて下さったヴァシュラム様に顔向けできぬわ!不届き者!
すべての神木であった物よ!おのれを思い出し聖なる大地に返れ!
汝が役目は破壊にあらず!この地の守りと悟るがよい!
地に祝福あれ!」
「ナニッ!?」
白い魔導師達の手にある、杖がブルリと震えた。
セレスの言葉に応えるように、杖からニョキニョキと枝が伸び、根が生える。
それはズシンと重く、魔導で空飛ぶ魔導師達が次々と地面へと引き戻されていく。
杖は木に戻り、地に根を張ろうとしてところ構わず、城中の魔導師の杖さえもが一斉に反応した。
「ツ、杖ガッ!!」
「オオ!杖ガ!」
セレスの元に急ぐ城内の魔導師も、床に根を張る杖に足を取られ、先に進む事が出来ない。
そうしていると、突然駆け寄ってきた兵たちが白い魔導師達を背後から、または正面から、そして囲むように次々と切っていった。
「オノレ!人間ゴトキガ!ギャアア!!」
抗う事も出来ず、杖に縛られていた魔導師は切られて杖とローブを残して消えてゆく。
そして、落ちたローブの中には奇妙なほど大きな虫や爬虫類の死骸が転がっていた。
「今こそ決起だ!化け物の魔導師達を排除しろ!
元の平和なトランに戻すときぞ!」
「おお!」
「おおお!!白い魔導師達を切れ!」
声の響く中、廊下でエルガルドが叫び、部下たちが剣を振り上げ雄叫びを上げて走る。
エルガルドは横に立つ王子に一礼し、周りの兵にうなずいた。
その後ろには、帰ったはずのアトラーナの騎士たちが控えている。
「あの魔導師の部屋は?」
「あの輝いている所だ、だがすでに崩れてしまって危険だ。
下から外に回ろう。」
「承知した。少しでもセレス様のお近くに参る。」
「セレス様の邪魔をしてはならぬ。適当に距離をとってお見守りせよ。」
うなずきあってエルガルドたちに先導され、セレスの元へと急ぐ。
トランの人々は、セレスが行動を起こすときこそ千載一遇のチャンスとばかりに、王子の指示で準備を急いでいたのだ。
時を置けば、必ずリューズが予見で先読みしてしまう。
だからこそ、この数時間のうちに人を集め、水面下で伝達し、行動を起こす時を待ちじっと息をひそめていた。
ただ、杖を無効化される事は思ってもいないことだったが、白い魔導師達は次々と宿り主を殺され、その数を減らしていく。
「東の塔はあのままでは全壊しますが。」
「良い、この化け物どもを一掃するためなら、セレスにくれてやる。
壊れたらまた作ればよい、それだけの技術はこのトランにはあるのだ。
塔の再建はこのトラン王家再生の礎となろう。」
「は」
王子が進むと、床に根を張る杖の横に切り捨てられたローブから瀕死のトカゲが這い出してきた。
「まさか、人でさえもないとは……」
王子は眉間にしわ寄せ、腰の剣を振り上げる。
すると側近がその手を遮るように抑えた。
「御身の剣が汚れます。」
「構わぬ。汚れも知らぬ王になる気はない!汚れを知って、本物の王となるのだ。」
王子は、ちゅうちょ無く剣を振り落としトカゲの首を落とす。
そして、切られてヒクヒクと身体を震わせるトカゲに、さげすむような目で見下ろし、プイと顔を背けた。
1人の白い魔導師が生み出した巨大な闇の固まりは、セレスの羽が触れるとその光を飲み込んでゆく。
「無礼者メ!闇ヨ、飲ミ込メ!」
真っ黒なその闇は、魔導師の声に反応して大きく広がり、セレスをひと飲みにしようと襲いかかった。
「無礼はお前よ、不埒者!」
セレスは振り向きざまに左手を上段から振り下ろしてそれを一閃し、両断した闇に腕輪のある右手を広げると一瞬で吸い込まれる。
あまりにもあっさりと無効化された力に驚いた魔導師の横で、もう1人が杖を振って巨大なドラゴンを生み出す。
「飲ミ込ンデシマエ!」
ウヲオオオオオオォォォ
人を一飲みしようかと言うほどのドラゴンが、青い炎を吐きながらセレスに向けて雄叫びを上げた。
「うるさい!」
ドラゴンの咆哮に、セレスが一喝して一気に向かい、くるりと舞ってドラゴンの顔に蹴りを入れた。
「バッ馬鹿ナ!巫子ガ蹴ッタ?!」
ドラゴンの身体は紙のように蹴られた場所が吹き飛び、セレスの羽がまるで巨大な手のように形を変えて引きちぎって行く。
ギャアアアアアアア……
「ククク、なんともろい作り物よ!」
「マ、マサカ! コノヨウナコトガッ!」
その場にいた白い魔導師達が、ひるんで身を引いた。
「オ、オノレ地ノ巫子!我ガ力ヲ見ヨ!」
自分たちの力が通じない焦りに、それでもまた術を繰り出そうとする白い魔導師たちを見下ろし、セレスが翼を元に戻すと腹立たしそうにため息を吐いた。
「愚か者よ、思い出すが良い!遙か昔、せいせいたるお前を神木のようだと言うたはこの私だ。
この有様、お前を神木と定めて下さったヴァシュラム様に顔向けできぬわ!不届き者!
すべての神木であった物よ!おのれを思い出し聖なる大地に返れ!
汝が役目は破壊にあらず!この地の守りと悟るがよい!
地に祝福あれ!」
「ナニッ!?」
白い魔導師達の手にある、杖がブルリと震えた。
セレスの言葉に応えるように、杖からニョキニョキと枝が伸び、根が生える。
それはズシンと重く、魔導で空飛ぶ魔導師達が次々と地面へと引き戻されていく。
杖は木に戻り、地に根を張ろうとしてところ構わず、城中の魔導師の杖さえもが一斉に反応した。
「ツ、杖ガッ!!」
「オオ!杖ガ!」
セレスの元に急ぐ城内の魔導師も、床に根を張る杖に足を取られ、先に進む事が出来ない。
そうしていると、突然駆け寄ってきた兵たちが白い魔導師達を背後から、または正面から、そして囲むように次々と切っていった。
「オノレ!人間ゴトキガ!ギャアア!!」
抗う事も出来ず、杖に縛られていた魔導師は切られて杖とローブを残して消えてゆく。
そして、落ちたローブの中には奇妙なほど大きな虫や爬虫類の死骸が転がっていた。
「今こそ決起だ!化け物の魔導師達を排除しろ!
元の平和なトランに戻すときぞ!」
「おお!」
「おおお!!白い魔導師達を切れ!」
声の響く中、廊下でエルガルドが叫び、部下たちが剣を振り上げ雄叫びを上げて走る。
エルガルドは横に立つ王子に一礼し、周りの兵にうなずいた。
その後ろには、帰ったはずのアトラーナの騎士たちが控えている。
「あの魔導師の部屋は?」
「あの輝いている所だ、だがすでに崩れてしまって危険だ。
下から外に回ろう。」
「承知した。少しでもセレス様のお近くに参る。」
「セレス様の邪魔をしてはならぬ。適当に距離をとってお見守りせよ。」
うなずきあってエルガルドたちに先導され、セレスの元へと急ぐ。
トランの人々は、セレスが行動を起こすときこそ千載一遇のチャンスとばかりに、王子の指示で準備を急いでいたのだ。
時を置けば、必ずリューズが予見で先読みしてしまう。
だからこそ、この数時間のうちに人を集め、水面下で伝達し、行動を起こす時を待ちじっと息をひそめていた。
ただ、杖を無効化される事は思ってもいないことだったが、白い魔導師達は次々と宿り主を殺され、その数を減らしていく。
「東の塔はあのままでは全壊しますが。」
「良い、この化け物どもを一掃するためなら、セレスにくれてやる。
壊れたらまた作ればよい、それだけの技術はこのトランにはあるのだ。
塔の再建はこのトラン王家再生の礎となろう。」
「は」
王子が進むと、床に根を張る杖の横に切り捨てられたローブから瀕死のトカゲが這い出してきた。
「まさか、人でさえもないとは……」
王子は眉間にしわ寄せ、腰の剣を振り上げる。
すると側近がその手を遮るように抑えた。
「御身の剣が汚れます。」
「構わぬ。汚れも知らぬ王になる気はない!汚れを知って、本物の王となるのだ。」
王子は、ちゅうちょ無く剣を振り落としトカゲの首を落とす。
そして、切られてヒクヒクと身体を震わせるトカゲに、さげすむような目で見下ろし、プイと顔を背けた。
0
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる