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22、城の地下道
第228話 リュシーの告白
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ゆらゆらと何本ものろうそくの火が揺らめき、王子の部屋を照らす。
風が通り抜けると一斉に揺らぐ炎に、まるで深海のような静謐さが室内を満たす。
だが、血のような色の石を手にそれを見つめる老人の心中は、焦りに満ちていた。
一歩動けばハアハアと息をつく身体は重く、鉛の服を着ているように動きもままならない。
やっと自由になれた開放感と裏腹に自由に動けない身体がもどかしく、机の上にある書物を横になぎ払った。
「うう……おのれ、おのれ、早う次の身体を探さねば、もっと若い身体だ、もっと馴染む身体だ、もっともっと力のある身体だ。」
部屋の隅に小さくなる、金に輝く髪の美しい少年のおびえる顔を一瞥いちべつする。
小さく震えるその少年、リュシーに手を伸ばす。
と、闇が動き小さな影がそれを遮った。
ジレが舌打つ。
黒い影が揺らめき、それはリュシーの前に立つフェイクへと姿を変えた。
黒い闇のような瞳が、圧倒するように無言でジレを見つめる。
ジレが苦々しい顔で吐き捨てた。
「フン、お前の主などなんの役にも立たぬ。
混ざり物が、ただの人質よ。
黒い髪の下僕よ、お前は知らぬだろうが、これの中には地の王の子が潜む。
これがいれば精霊達は一切手が出せぬ、だからここに置いているのだ。
……ただ、今はそれだけでしかない……役にも立たぬ。
トラン王に取り入っておきながら、開戦にも至らず逃げ帰ってきたとは……
まこと、まことに下らぬ能なしよ。」
しわがれた声で呪詛のようにリュシーを責める。
金色の髪の少年は、以前の不敵な魔術師のかけらもなく、自分よりも小さな下僕の影に隠れて震えていた。
「ガーラ、ガーラ、助けて、助けて……」
記憶も定かで無く、ガーラが何かもわからぬまま、それに小さく語りかける。
ボンヤリと輝く、優しい微笑み。
脳裏の中、それに必死で手を伸ばす。
ゴウゴウと火が燃えさかり、その手が遮られる。
最初は自分が火に包まれているのか、相手が火に包まれているのかわからなかった。
でも、次第に自分が火の中に取り込まれているのだと気がついたのだ。
「ジレ、そこまでにせよ。」
声がして、キアナルーサが現れフェイクに下がれと手で合図した。
フェイクがそっとリュシーの背に手を回し、庇うように隣の自室へと彼を誘導する。
暗い部屋の中、リュシーをベッドに座らせ、ろうそくに火をつけると傍らの水差しからコップに水を注ぎ彼に差し出した。
「ガーラとは、どなたの事ですか?」
フェイクが優しく問う。
「わからない、でも……何か、とても優しいんだ。」
「殺されそうになった、それは覚えてますか?」
こくんと頷く。
コップの中の水が揺れ、くすんと鼻を鳴らした。
「怖かった、とても強かった。
いっぱい僕の廻りの火が吸い取られて、もう一人の僕はどんどん小さくなっていって……
敵わない、怖い怖いってもう一人の僕は泣いてた。
大きな、おおきな金色の人……
でも、でも、どうしてだろう、怖いのに、とても綺麗だった。とても……なんだか、心がいっぱいになったんだ。」
ほろほろ涙を流しながらも、今までと違って次第に自分を取り戻して行くリュシーにクスリとフェイクが微笑む。
「そう、やっと少し落ち着いたのだな。
お前の親の作ったその新しい身体が、思わぬ良い状況をもたらしたのか……今はお前が勝っているのだな。
お前は、もっと落ち着いて、自分の中を見つめるのだ。
少しずつ、自分が何かを思い出すがよい。
もうすぐ,もうすぐ、その美しき者が、今度は救いに、助けに来る。
きっと、そう……もうすぐだ、もうすぐ来る。
だから、もう少しの辛抱だ。」
リュシーがうんと力強くうなづく。
何かわからない。
でも、ガマンしよう。
静かに、涙をふいて水を一口飲む。
彼がふうっと一息ついたとき、フェイクが目を細め耳元に囁いた。
「ずっと、赤い髪の子のそばにいただろう?なぜ離れた?」
赤い髪の子?そばに?
不思議な質問なのに、答えがすうっと口から流れ出た。
「うん……赤い髪の子……うん、いろんな赤い髪の子のそばにずっと。
耳飾りや、指輪やフィーネの中に……
死んでしまうと、何か大きな火がまた次の赤い子のところに導いてくれる。
僕は半分寝てたけど、いつも騒がしいもう一人の僕は,赤い髪の子の近くにいると、とても静かだった。
でも、大きなお城? について来たとき、とても懐かしい子がいるって言ってた。
もう一人の僕がざわざわし始めて……
なぜか、光ってなきゃいけない…… のに、暗い、暗い、のがおかしいって。
あれは寝床なのに、あれじゃその子の中に入れないって。
でも、離れられなくて、その子に引き寄せられて、それから、見守っていた。
とても騒がしくて、怖いって言いながら。
そしたらその子が……何かとても大変なことになって、井戸に、落ちた?
ああ、なにか、わからない。
真っ黒な何かに触れて、力がちょっぴり吸い取られて、何か真っ暗になって。
それから、僕は怖くて眠ってしまった。」
一息に話すと、残った水を飲み干し目を閉じてコップを降ろす。
もっと何か思い出さなきゃならない。
もう一人の僕が小さくなっているうちに。
今はそうするのが大事なんだと、リュシーはフェイクという下僕だった物の大きな翼に守られて、落ち着いて考えるようになった。_:]
風が通り抜けると一斉に揺らぐ炎に、まるで深海のような静謐さが室内を満たす。
だが、血のような色の石を手にそれを見つめる老人の心中は、焦りに満ちていた。
一歩動けばハアハアと息をつく身体は重く、鉛の服を着ているように動きもままならない。
やっと自由になれた開放感と裏腹に自由に動けない身体がもどかしく、机の上にある書物を横になぎ払った。
「うう……おのれ、おのれ、早う次の身体を探さねば、もっと若い身体だ、もっと馴染む身体だ、もっともっと力のある身体だ。」
部屋の隅に小さくなる、金に輝く髪の美しい少年のおびえる顔を一瞥いちべつする。
小さく震えるその少年、リュシーに手を伸ばす。
と、闇が動き小さな影がそれを遮った。
ジレが舌打つ。
黒い影が揺らめき、それはリュシーの前に立つフェイクへと姿を変えた。
黒い闇のような瞳が、圧倒するように無言でジレを見つめる。
ジレが苦々しい顔で吐き捨てた。
「フン、お前の主などなんの役にも立たぬ。
混ざり物が、ただの人質よ。
黒い髪の下僕よ、お前は知らぬだろうが、これの中には地の王の子が潜む。
これがいれば精霊達は一切手が出せぬ、だからここに置いているのだ。
……ただ、今はそれだけでしかない……役にも立たぬ。
トラン王に取り入っておきながら、開戦にも至らず逃げ帰ってきたとは……
まこと、まことに下らぬ能なしよ。」
しわがれた声で呪詛のようにリュシーを責める。
金色の髪の少年は、以前の不敵な魔術師のかけらもなく、自分よりも小さな下僕の影に隠れて震えていた。
「ガーラ、ガーラ、助けて、助けて……」
記憶も定かで無く、ガーラが何かもわからぬまま、それに小さく語りかける。
ボンヤリと輝く、優しい微笑み。
脳裏の中、それに必死で手を伸ばす。
ゴウゴウと火が燃えさかり、その手が遮られる。
最初は自分が火に包まれているのか、相手が火に包まれているのかわからなかった。
でも、次第に自分が火の中に取り込まれているのだと気がついたのだ。
「ジレ、そこまでにせよ。」
声がして、キアナルーサが現れフェイクに下がれと手で合図した。
フェイクがそっとリュシーの背に手を回し、庇うように隣の自室へと彼を誘導する。
暗い部屋の中、リュシーをベッドに座らせ、ろうそくに火をつけると傍らの水差しからコップに水を注ぎ彼に差し出した。
「ガーラとは、どなたの事ですか?」
フェイクが優しく問う。
「わからない、でも……何か、とても優しいんだ。」
「殺されそうになった、それは覚えてますか?」
こくんと頷く。
コップの中の水が揺れ、くすんと鼻を鳴らした。
「怖かった、とても強かった。
いっぱい僕の廻りの火が吸い取られて、もう一人の僕はどんどん小さくなっていって……
敵わない、怖い怖いってもう一人の僕は泣いてた。
大きな、おおきな金色の人……
でも、でも、どうしてだろう、怖いのに、とても綺麗だった。とても……なんだか、心がいっぱいになったんだ。」
ほろほろ涙を流しながらも、今までと違って次第に自分を取り戻して行くリュシーにクスリとフェイクが微笑む。
「そう、やっと少し落ち着いたのだな。
お前の親の作ったその新しい身体が、思わぬ良い状況をもたらしたのか……今はお前が勝っているのだな。
お前は、もっと落ち着いて、自分の中を見つめるのだ。
少しずつ、自分が何かを思い出すがよい。
もうすぐ,もうすぐ、その美しき者が、今度は救いに、助けに来る。
きっと、そう……もうすぐだ、もうすぐ来る。
だから、もう少しの辛抱だ。」
リュシーがうんと力強くうなづく。
何かわからない。
でも、ガマンしよう。
静かに、涙をふいて水を一口飲む。
彼がふうっと一息ついたとき、フェイクが目を細め耳元に囁いた。
「ずっと、赤い髪の子のそばにいただろう?なぜ離れた?」
赤い髪の子?そばに?
不思議な質問なのに、答えがすうっと口から流れ出た。
「うん……赤い髪の子……うん、いろんな赤い髪の子のそばにずっと。
耳飾りや、指輪やフィーネの中に……
死んでしまうと、何か大きな火がまた次の赤い子のところに導いてくれる。
僕は半分寝てたけど、いつも騒がしいもう一人の僕は,赤い髪の子の近くにいると、とても静かだった。
でも、大きなお城? について来たとき、とても懐かしい子がいるって言ってた。
もう一人の僕がざわざわし始めて……
なぜか、光ってなきゃいけない…… のに、暗い、暗い、のがおかしいって。
あれは寝床なのに、あれじゃその子の中に入れないって。
でも、離れられなくて、その子に引き寄せられて、それから、見守っていた。
とても騒がしくて、怖いって言いながら。
そしたらその子が……何かとても大変なことになって、井戸に、落ちた?
ああ、なにか、わからない。
真っ黒な何かに触れて、力がちょっぴり吸い取られて、何か真っ暗になって。
それから、僕は怖くて眠ってしまった。」
一息に話すと、残った水を飲み干し目を閉じてコップを降ろす。
もっと何か思い出さなきゃならない。
もう一人の僕が小さくなっているうちに。
今はそうするのが大事なんだと、リュシーはフェイクという下僕だった物の大きな翼に守られて、落ち着いて考えるようになった。_:]
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