赤い髪のリリス 戦いの風

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23、魔導師たちの密かな攻防

第249話 ニード奮戦、だが挫折

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リリスたちが地龍を出る、その、いっとき前……

暗闇の中、地下道を行くジレの持つ石が、赤くひときわ輝いた。
人の気配を感じる。

ドサン、ドサン…

また身体が腐れ落ちた。

「急がねば……」

つぶやいたとき、近くに人の息吹を感じた。

人間だ、一人の人間!
おお、おお、なんと運の良いことか!

ニイッと笑い、慎重にその方向へと進む。
その人物は火打ち石を何かに向けて何度も打ち、それでも着かない火に諦めて怖々と進んでいた。
ジレが怪しく笑ってわざと衣擦れの音をさせる。

「だ、誰?誰かいるの?いるんだろ?声を、声を聞かせてくれよ!」

若い男の声が、暗闇の恐怖に震えて方向を何度も変える。
ジレが、そっとささやくように嗄れた声で話しかけた。

「どなたかな?ここは立ち入りが出来ぬ場所のはずだが……」

「あっ!ああっ!良かった、申し訳ない、火はございますか?
迷い込んでしまって、出口がわからなくなってしまいました。」

相手の男は、そっと近づいてくる。
ジレは腐った息が知れぬように、口元を袖で覆いながら優しく語りかけた。

「他の方は?お一人ですか?」

「え、ええ、もう一人いたのですが、はぐれてしまって……」

「それは重畳……く、く、く、……さあ、今明るく照らしましょう。」

ジレの水晶が、赤く輝き通路を照らす。
見たことも無い輝きに、若い男の顔は怪訝な、だがその美しさにのぞき込むような仕草を見せた。

「これは?ずいぶん綺麗な石ですね。」

「そうでございましょう?
これは精霊の宿る石、それはそれは美しく、二つとない石……さあ、よくご覧下さい。
それはそれは、たいそう珍しい石なのです。」

若い男は魅入られたようにボンヤリと見入っている。
闇の中、赤い輝きを放つその石の美しさが際立つ。
目が離せないでいると、ジレの骨張った老人の手がそっと彼の手に添えられ赤く輝く水晶を手渡された。
ニイッとジレが不気味な笑いを浮かべる。が、突然その顔が歪んだ。

「むっ!何だ?貴様は!」

ジレが違和感に、一旦は手放した水晶を取り戻そうと掴む。
その手首を捕まれ、顔を上げると若い男がニッと笑った。

「この身体、地の魔導師ニード様だぜ?悪くないだろ?」

「城の魔導師か!チッ!」

ジレが腕を振り切ろうとするが、ニードが離さないでいると、ガクンと衝撃があって肘から千切れた。

「ぎゃ!何だこれ!」

思わずその手を放り出したはずみに水晶を奪われ、後ろによろける。
ニードは手で印を結び、地下に響くように叫んだ。

「地の精霊!ガレ・デ・ルーサ!地底の暗闇を照らせ!」

踏ん張りながら壁に指をシュッとこすると、壁が輝き通路を明るく照らした。

「ニードめ、失敗するとは何ごとか!」

少年の澄んだ高い声が響く。
壁抜けしてアデルがジレの背後に現れた。

「だってよ、だってよ~…」

前にはニード、後ろにはアデルと逃げ場を失い、ジレが片手でしっかりと水晶を抱きしめる。

「おおお、おおおおお、私の水晶よ、力を貸しておくれ。おおおおおお……!!」

低い低い、うなり声のような、すすり泣きのような不気味な声が地の底から響き渡る。


「おおおおおおおおおおおおおおおおお………」


「なんと不快な音か!耳を塞いでも無駄だ!黙らせろ!」

アデルが顔を歪ませて叫ぶ。

「く、そっ!頭が、頭の中がかき乱される!」

杖を持たないニードは、術に集中出来ない。

「無理無理!俺には無理!」

両手で耳を覆い、恐怖からその場にしゃがみ込んでしまった。

「チッ、役にもたたぬ……」

アデルが舌打ち、集中するように胸の前でパンと手を合わせ、ジレに向かって両手を広げる。
そして、宙を掴んだ。
ジレの顔が、口を広げたまま歪む。

「おおおおお……あがっごおお!!!」

「うるさい、黙れ。」

ジレの顎が見えない何かに掴まれ、口を無理矢理閉じられ固定される。
首を絞め、そのまま身体が持ち上げられると、ジレがじろりとアデルに視線を移し、水晶を差し出した。

「む?」

アデルの足に、影から湧き出た無数の黒い手が這い上がってくる。
その手は舐めるようにアデルの身体を這い回り、そしてギリギリと締め上げた。

「あはは!何だ、それで終わりかい?」

まだ余裕で笑うアデルに、クッとジレの目がほくそ笑む。

無数の黒い手が、次の瞬間ブルリと震える。
それぞれの手の平がボコリと盛り上がり、突然長い槍を突き出しアデルの全身を串刺しにした。
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