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26、水の国の悪霊憑き
第288話 新しい王子の側近
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新しく王子の側近になった貴族の子息の青年ケルディムが、廊下で立ち止まり怪訝な表情で顔を背けた。
悲鳴が聞こえても、行くべきか迷う。
先日物音に駆けつけた小姓がいきなり首になり、兵が3人消えて床に血のあとが残っていた。
何かあった事は明白だ。
だが、殺されたとしても死体は無く、王子のそばにずっといた魔導師の姿も見えない。
父に相談したが、今は目をつぶって見て見ぬ振りをしろと言われた。
だが、身の危険を感じたら、体調不良で暇をもらって逃げろと。
王子はあれから時折、豹変したように性格が変わる。
王と王妃の前では以前と変わらないだけに、相談しても信じて頂けるかわからない。
それよりも、自分への不信が沸いて、やっと掴んだ側近の位置が危うくなるだろう。
こんな危うい位置にいて、あれだけの評価を得ていたゼブリスでさえ、行方知れずだ。
まさか……まさか……王子に殺されたのでは………
「ケルディム様、あちらで兵が……」
使用人の青年に言われてそちらに耳を向けると、部屋から少し離れた場所で兵たちが最近の王子の不気味さに、コソコソと噂話をしている。
それを横目でチラリと見て、眉間にしわを寄せサッと手で払う。
横にいた小姓の少年が、慌てて兵に注意しに行った。
ケルディムが小さくため息をつくと、彼付きの使用人の青年が小さく耳打ちした。
「お茶をご用意して参ります。」
「ああ、そうだな。頼む。」
行かねばやはり、不興を買うだろう。
ひどく気が重い。
王子のそばにいた魔導師は、本当にどこに行ったのか……
魔導師の老人が、王子をいさめていたふしもあるのに……
そうだ、老人が消えてからだ。
様子がおかしくなったのは。
あの、人を惹きつける魅力は何だったのだろう。
側近に選ばれて喜んだのは、ほんの一瞬でしか無かった。
なんと言う不運……
使用人の頭を下げる姿にうなずいて、王子の部屋のドアを見ると深くため息をついた。
「王子、お茶をお持ちしました。」
王子がようやく落ち着いた頃、ケルディムが使用人の青年を連れて部屋に入ってきた。
彼は自らは手を出さず、王子の身の回りのことは、すべてこの使用人にやらせるという徹底ぶりだ。
育ちが良すぎて、そう言うことには疎いのだという。
確かに、ゼブリスルーンレイアの器用さ、カンの良さは、素晴らしいものだった。
椅子の肘掛けに肘をつき、使用人の青年が茶を出す様子を王子がじっと見つめる。
青年はケルディムの気に入りなのか、隙無く茶を出す様子もスマートだ。
痩身で見目良く、かなりの美青年、色々とうるさい貴族の長男に仕える者ならば、生まれも恐らく良いのだろう。
「お前、いくつだ?」
王子が問うと、青年がちらとケルディムに視線を向ける。
ケルディムが無言でうなずき、青年は答えた。
「23でございます殿下。」
「結婚は?」
「しておりません。」
「女を抱いたことはあるか?」
いきなり、15の子供から問われた言葉に、青年が驚いて目を見開く。
赤くなった顔が戸惑いを見せて、それを見た王子が醜悪に笑った。
「ございません。ずっと、ケルディム様にお仕えしておりますので。」
「クククッ……
ケルディム、こやつを小姓に欲しいと言ったらどうする?」
「それは…… 」
ハッと息を呑んで、青年が自分の主を見つめる。
ケルディムが、フフッと微笑み首を振った。
「実は、これは生まれが良くないのです。領地の貧民の出でございまして。
子供の頃、父親を流行病で亡くしたので、母親と共に当家で使用人として雇ったのですが。
とても小姓にふさわしいとは思いませぬ。」
流行病と聞いて、王子が眉をひそめた。
青年が差し出す茶を掴み、青年に向けて投げつける。
「あっつ! 」
中の熱い茶に思わず飛び退き、落ちたカップを拾って、粗相があってはならないと、慌ててその場に手をついた。
「申し訳ありません。どうかお許しを。」
「下がれ、病持ちなど用は無い!
ケルディム! お前も下がれ。
このような者を我が近くにはべらすなど、もってのほか!
人選も出来ぬ無能はいらぬ!」
「申し訳ございません、すぐに別の者を用意します。」
ケルディムが、別に焦った様子もなく青年と共に下がる。
部屋を出て廊下を歩み、人の目の無いところまで来ると、青年が自分の主であるケルディムに頭を下げた。
「申し訳ございません、私のためにご迷惑をおかけしました。」
「よい、 助かった。」
「 え? 」
「お前に何かあっては、お前の母に、メイに顔向けできぬ。
まさか、お前にお目をつけられるとは思わなかった、ゾッとしたぞ。
私は、お前の身体を傷つけてまで側近に居座る気は無い。
すぐに城を下るが良かろう、お前の代わりのことは、父上に手紙を書く。
王子は、以前とは少し様子がお変わりになられた。
危なければ身を引く事も考える。
上を目指すのは、他にも手はある。命を落としては何もならない。」
自分の事を、そこまで気にかけて下さるとは……
青年は、火傷の痛さも忘れて主に頭を下げた。
悲鳴が聞こえても、行くべきか迷う。
先日物音に駆けつけた小姓がいきなり首になり、兵が3人消えて床に血のあとが残っていた。
何かあった事は明白だ。
だが、殺されたとしても死体は無く、王子のそばにずっといた魔導師の姿も見えない。
父に相談したが、今は目をつぶって見て見ぬ振りをしろと言われた。
だが、身の危険を感じたら、体調不良で暇をもらって逃げろと。
王子はあれから時折、豹変したように性格が変わる。
王と王妃の前では以前と変わらないだけに、相談しても信じて頂けるかわからない。
それよりも、自分への不信が沸いて、やっと掴んだ側近の位置が危うくなるだろう。
こんな危うい位置にいて、あれだけの評価を得ていたゼブリスでさえ、行方知れずだ。
まさか……まさか……王子に殺されたのでは………
「ケルディム様、あちらで兵が……」
使用人の青年に言われてそちらに耳を向けると、部屋から少し離れた場所で兵たちが最近の王子の不気味さに、コソコソと噂話をしている。
それを横目でチラリと見て、眉間にしわを寄せサッと手で払う。
横にいた小姓の少年が、慌てて兵に注意しに行った。
ケルディムが小さくため息をつくと、彼付きの使用人の青年が小さく耳打ちした。
「お茶をご用意して参ります。」
「ああ、そうだな。頼む。」
行かねばやはり、不興を買うだろう。
ひどく気が重い。
王子のそばにいた魔導師は、本当にどこに行ったのか……
魔導師の老人が、王子をいさめていたふしもあるのに……
そうだ、老人が消えてからだ。
様子がおかしくなったのは。
あの、人を惹きつける魅力は何だったのだろう。
側近に選ばれて喜んだのは、ほんの一瞬でしか無かった。
なんと言う不運……
使用人の頭を下げる姿にうなずいて、王子の部屋のドアを見ると深くため息をついた。
「王子、お茶をお持ちしました。」
王子がようやく落ち着いた頃、ケルディムが使用人の青年を連れて部屋に入ってきた。
彼は自らは手を出さず、王子の身の回りのことは、すべてこの使用人にやらせるという徹底ぶりだ。
育ちが良すぎて、そう言うことには疎いのだという。
確かに、ゼブリスルーンレイアの器用さ、カンの良さは、素晴らしいものだった。
椅子の肘掛けに肘をつき、使用人の青年が茶を出す様子を王子がじっと見つめる。
青年はケルディムの気に入りなのか、隙無く茶を出す様子もスマートだ。
痩身で見目良く、かなりの美青年、色々とうるさい貴族の長男に仕える者ならば、生まれも恐らく良いのだろう。
「お前、いくつだ?」
王子が問うと、青年がちらとケルディムに視線を向ける。
ケルディムが無言でうなずき、青年は答えた。
「23でございます殿下。」
「結婚は?」
「しておりません。」
「女を抱いたことはあるか?」
いきなり、15の子供から問われた言葉に、青年が驚いて目を見開く。
赤くなった顔が戸惑いを見せて、それを見た王子が醜悪に笑った。
「ございません。ずっと、ケルディム様にお仕えしておりますので。」
「クククッ……
ケルディム、こやつを小姓に欲しいと言ったらどうする?」
「それは…… 」
ハッと息を呑んで、青年が自分の主を見つめる。
ケルディムが、フフッと微笑み首を振った。
「実は、これは生まれが良くないのです。領地の貧民の出でございまして。
子供の頃、父親を流行病で亡くしたので、母親と共に当家で使用人として雇ったのですが。
とても小姓にふさわしいとは思いませぬ。」
流行病と聞いて、王子が眉をひそめた。
青年が差し出す茶を掴み、青年に向けて投げつける。
「あっつ! 」
中の熱い茶に思わず飛び退き、落ちたカップを拾って、粗相があってはならないと、慌ててその場に手をついた。
「申し訳ありません。どうかお許しを。」
「下がれ、病持ちなど用は無い!
ケルディム! お前も下がれ。
このような者を我が近くにはべらすなど、もってのほか!
人選も出来ぬ無能はいらぬ!」
「申し訳ございません、すぐに別の者を用意します。」
ケルディムが、別に焦った様子もなく青年と共に下がる。
部屋を出て廊下を歩み、人の目の無いところまで来ると、青年が自分の主であるケルディムに頭を下げた。
「申し訳ございません、私のためにご迷惑をおかけしました。」
「よい、 助かった。」
「 え? 」
「お前に何かあっては、お前の母に、メイに顔向けできぬ。
まさか、お前にお目をつけられるとは思わなかった、ゾッとしたぞ。
私は、お前の身体を傷つけてまで側近に居座る気は無い。
すぐに城を下るが良かろう、お前の代わりのことは、父上に手紙を書く。
王子は、以前とは少し様子がお変わりになられた。
危なければ身を引く事も考える。
上を目指すのは、他にも手はある。命を落としては何もならない。」
自分の事を、そこまで気にかけて下さるとは……
青年は、火傷の痛さも忘れて主に頭を下げた。
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