300 / 303
26、水の国の悪霊憑き
第298話 気合いだー!
しおりを挟む
セリアスが、ため息をついてウロコに覆われた頬を撫でる。
そのウロコは虹色に輝いて、ここへ来て痩せてしまった彼には似合いのようにも見えた。
「しかし、実はこの小さな精霊たちがこまめに世話をして下さるので、あまり不便も無く暮らせていたのですよ。
カレンも最初ひどくおびえていたのですが、次第に落ち着いて来て、ホッとしてはいたのです。
でも、3ヶ月ほど前から次第にカレンの姿があのように変貌してきて……
だんだん苦しむようになってきました。
先日、主殿がこのままでは水が濁ると、カレンを更に2重に泡の中に封印されて。
巫子殿がお見えになるのをしばし待てと。」
一体彼らはここで何年過ごしたのだろう。
この数日間は、彼らにはとても長い長い時間だったに違いない。
「まあ! セリアス殿、ここへ来てどのくらい経ったと思いますの? 」
シャラナが問うと、セリアスが顔を上げる。
「もう、すでに何年経つのでしょう。
でも、カレンは呪いの影響のおかげとかで、あまり年を取ったようには感じないのですが…
いや、もう立派な青年かな?
私は、このような姿なので、水鏡を覗いても、自分の本当の顔が思い出せなくなってきています。」
両手を広げて見る姿は、なんとなく黄泉で大きな時間のズレを感じながら戻ったときの自分のようだとリリスは思う。
「カレン様は、あのようになる前は普通にお暮らしになられたのですか? 」
「はい、ここで過ごせたのは、この子にもとても良かったように思います。
恥ずかしながら…… 親子のように暮らして、元気が出ると棒きれで剣の練習に勤しんでおりました。
ところが、肌に黒い班が出るようになって、きっとこの子は私に心配させまいと我慢してたのでしょう。
可哀想なことを…… 」
目を閉じるセリアスの背中を、シャラナが手でいきなりバーンと叩いた。
「騎士ですもの! 頑張りましょ! 」
淑やかな女性だと思えば、彼女は時に豪快だ。
セリアスが思わずよろめき、彼女に笑って返す。
「はは、相変わらず力強い方よ!
で、どうなされるのだ? 私も何か出来ることがあるだろうか。」
シャラナがイルファを向くと、ずっとカレンを見ていた彼女が良しと腕を組んだ。
「この、 彼を出すわ。
もうここに置いておくのは限界よ。
私が結界の狭間の場を作り出すから、そこでやっちゃって頂戴。
呪いを払うのはあなたたちの仕事よ。あたしは場を維持するから。
巫子なんだから、出来るでしょ!
そこと!
そこの!
顔だけじゃ無いってとこ、見せてよね!」
イネスとリリスを指さして、グッと拳を突き出す。
何とも言えないイメージのギャップに、リリスがポカンと見ていると、イネスがバンッと背を叩いた。
「水の巫子、面白いだろう?
いやいや、全然イメージと違うからさ、もうほんと参っちゃうんだ。」
クククッとイネスが笑う。
イルファが真っ赤な顔で、恥ずかしさにくるりと背中を向けてプルプル手を震わせる。
だがその後ろで、リリスは何度もうなずいていた。
「わかります、とても参考になります。
魔導もそうですもの、すべて気の力が必要です。
半端な気合いは事故の元。私は母からそう教わりました。
がんばりましょう! ほら、イネス様も! 」
リリスが、ぎゅうっと手を握って、えいっと上げた。
隣でずっと笑ってるイネスも、ぐいっと握られて一緒に手を上げる。
イルファがパッと明るい顔で振り向き、一緒に手を上げた。
「がんばろ! 」
「はい! 早くお助けしなければ!! どこまで出来るかわかりませんが。」
にっこりリリスが笑うと、イルファがベールの向こうで、赤い顔でにっこり笑う。
ベールがあって良かったなあって……、 リリスはなんだか可愛い男の子だ。
純粋で、イネスのようにひねてない。
絶対お友達になりたい男の子、なんて初めてじゃない?
うふふっとイルファが口元に手を当てる。
するとリリスが、元気な声でにっこり笑って明るく言った。
「あ、そうです! これはお話ししておかなくては!
実は、まだアトラーナに火の精霊はいらっしゃらないので、私の火の巫子って言うのは、ほんと名ばかりなのですよね。だから全然、術の効果ほぼ無いに等しいのです!
でも、頑張ります!! 気合いで!」
「え? 」
「あー実は俺も、ヴァシュラム様の加護が薄れてる。
気配はわかるんだ、でもなー、なんかこう力を感じないんだ。
どこまで出来るかわからないけど、俺も出来るだけのことはする。」
「え? 」
にっこり、地の巫子と火の巫子の2人がえへへと笑う。
「 えーーーーーーーっっ!!! 」
ほんとに顔だけだったーーーーー!!!
イルファが真っ青になって、ガクンとアゴが落ちた。
そのウロコは虹色に輝いて、ここへ来て痩せてしまった彼には似合いのようにも見えた。
「しかし、実はこの小さな精霊たちがこまめに世話をして下さるので、あまり不便も無く暮らせていたのですよ。
カレンも最初ひどくおびえていたのですが、次第に落ち着いて来て、ホッとしてはいたのです。
でも、3ヶ月ほど前から次第にカレンの姿があのように変貌してきて……
だんだん苦しむようになってきました。
先日、主殿がこのままでは水が濁ると、カレンを更に2重に泡の中に封印されて。
巫子殿がお見えになるのをしばし待てと。」
一体彼らはここで何年過ごしたのだろう。
この数日間は、彼らにはとても長い長い時間だったに違いない。
「まあ! セリアス殿、ここへ来てどのくらい経ったと思いますの? 」
シャラナが問うと、セリアスが顔を上げる。
「もう、すでに何年経つのでしょう。
でも、カレンは呪いの影響のおかげとかで、あまり年を取ったようには感じないのですが…
いや、もう立派な青年かな?
私は、このような姿なので、水鏡を覗いても、自分の本当の顔が思い出せなくなってきています。」
両手を広げて見る姿は、なんとなく黄泉で大きな時間のズレを感じながら戻ったときの自分のようだとリリスは思う。
「カレン様は、あのようになる前は普通にお暮らしになられたのですか? 」
「はい、ここで過ごせたのは、この子にもとても良かったように思います。
恥ずかしながら…… 親子のように暮らして、元気が出ると棒きれで剣の練習に勤しんでおりました。
ところが、肌に黒い班が出るようになって、きっとこの子は私に心配させまいと我慢してたのでしょう。
可哀想なことを…… 」
目を閉じるセリアスの背中を、シャラナが手でいきなりバーンと叩いた。
「騎士ですもの! 頑張りましょ! 」
淑やかな女性だと思えば、彼女は時に豪快だ。
セリアスが思わずよろめき、彼女に笑って返す。
「はは、相変わらず力強い方よ!
で、どうなされるのだ? 私も何か出来ることがあるだろうか。」
シャラナがイルファを向くと、ずっとカレンを見ていた彼女が良しと腕を組んだ。
「この、 彼を出すわ。
もうここに置いておくのは限界よ。
私が結界の狭間の場を作り出すから、そこでやっちゃって頂戴。
呪いを払うのはあなたたちの仕事よ。あたしは場を維持するから。
巫子なんだから、出来るでしょ!
そこと!
そこの!
顔だけじゃ無いってとこ、見せてよね!」
イネスとリリスを指さして、グッと拳を突き出す。
何とも言えないイメージのギャップに、リリスがポカンと見ていると、イネスがバンッと背を叩いた。
「水の巫子、面白いだろう?
いやいや、全然イメージと違うからさ、もうほんと参っちゃうんだ。」
クククッとイネスが笑う。
イルファが真っ赤な顔で、恥ずかしさにくるりと背中を向けてプルプル手を震わせる。
だがその後ろで、リリスは何度もうなずいていた。
「わかります、とても参考になります。
魔導もそうですもの、すべて気の力が必要です。
半端な気合いは事故の元。私は母からそう教わりました。
がんばりましょう! ほら、イネス様も! 」
リリスが、ぎゅうっと手を握って、えいっと上げた。
隣でずっと笑ってるイネスも、ぐいっと握られて一緒に手を上げる。
イルファがパッと明るい顔で振り向き、一緒に手を上げた。
「がんばろ! 」
「はい! 早くお助けしなければ!! どこまで出来るかわかりませんが。」
にっこりリリスが笑うと、イルファがベールの向こうで、赤い顔でにっこり笑う。
ベールがあって良かったなあって……、 リリスはなんだか可愛い男の子だ。
純粋で、イネスのようにひねてない。
絶対お友達になりたい男の子、なんて初めてじゃない?
うふふっとイルファが口元に手を当てる。
するとリリスが、元気な声でにっこり笑って明るく言った。
「あ、そうです! これはお話ししておかなくては!
実は、まだアトラーナに火の精霊はいらっしゃらないので、私の火の巫子って言うのは、ほんと名ばかりなのですよね。だから全然、術の効果ほぼ無いに等しいのです!
でも、頑張ります!! 気合いで!」
「え? 」
「あー実は俺も、ヴァシュラム様の加護が薄れてる。
気配はわかるんだ、でもなー、なんかこう力を感じないんだ。
どこまで出来るかわからないけど、俺も出来るだけのことはする。」
「え? 」
にっこり、地の巫子と火の巫子の2人がえへへと笑う。
「 えーーーーーーーっっ!!! 」
ほんとに顔だけだったーーーーー!!!
イルファが真っ青になって、ガクンとアゴが落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる