赤い髪のリリス 戦いの風

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1,異界の地、日本

1、異界で再会する

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ある館に、一部の貴族たちが集まっていた。

本当の、世継ぎの王子は誰なのか?

うわさがうわさを呼び、貴族たちが権力を狙って裏で画策する。
本物などどうでもいい。
うわさがある以上はそれを利用しない手はないと。

「それで首尾はどうなのだ。何故あの小僧は次の王にしてやるというのに、権力になびかぬのか!
どうしてもこちらの申し出を拒むというならば、あの赤い髪の不吉な小僧一人、多少ケガを負わせてでも連れてくれば良い!」

「ケガなどとんでもない、騎士長と風の精霊王の庇護の元にあるのだぞ?!
精霊と騎士たちを敵に回すなど、後々考えれば恐ろしい。」

「このままでは我らの画策が長のレナパルド卿に知られてしまう。我らの立場が危うい。」

「レナパルド卿は息子を王子の側近にしてまで次の覇権も確立しているからな。
我々の計画が知れる前に、あの赤髪を連れ出して懇意にされているベスレムのラグンベルク様と話を付けなくては。」

激しく議論していた時だった。

「卿の手先が!お逃げ下さい!!」

「馬鹿な!なぜここが!」

あたふたと、一斉にドアに駆け込む。
一人が慌ててドアに手をかけた時、それはいきなり開かれた。

「これはこれはご一同様、見事におそろいでございますな。
失礼する。私は親衛騎士団所属のシャール・ゴートであります。
こちらにいらっしゃる一同の方々には、謀反の疑いがかかっている。
宰相サラカーン様のご指示にて、お身柄を確保させて頂く!」

「宰相だと?!クソ!レナパルドめ、宰相を手玉に取ったか!」

宰相は王の弟、この国では王族の命令は絶対なのだ。
このままでは貴族の称号を取り上げられ、一族さえ路頭に迷う事になる。

「謀反とはいかに?!どうか!どうか、サラカーン様にお取り次ぎを!我らは決して謀反など…!」

縛られながら、口々に声を上げるが、兵たちは淡々と彼らを連行して行く。
それは、リリスを世継ぎに立てて傀儡にと画策した貴族たちの末路。
世継ぎ争いを望まないリリスの、意思など無視して拙速に推し進めようとした貴族たちへの粛正だった。




暑い夏を乗り越え、秋も終わり年末の足音も近づく冬の始まり。
冬休みを利用してアイとヨーコは、電車で数時間離れた大きな街でウインドーショッピングを楽しんでいた。
アトラーナの旅も終えて、すでに2年ほどになる。
2人は3年生だが私立の学校なので、受験勉強など無縁だ。そろってエレベーター式に同じ高校へと上がる予定。
受験がないのは楽だけど、今ひとつ緊張感がないのは否めない。

「ね、この服いいと思わない?」

有名ブランド店のウィンドウで、アイが指さすそれは純白のロングコート。
襟にファーが付いているのを除けば、何となく見覚えがあるデザインだ。

「どっかで見たような気がしない?」

「そうだよねえ。これと似たようなの誰か着てたよねえ。」


「キャーーーん!これ欲しい!欲しいの!」

突然、女の子の声が辺りに響いて、人々の視線が声の持ち主に集中する。
それは見ると、10才ほどの女の子。いや、超美少女だ。
愛くるしい顔に金色の瞳。そしてつややかな黒髪を腰まで伸ばし、白いファーのベレー帽がよく似合う。
赤いベルベットのワンピースに、クマのポシェットがとても可愛い。
地団駄踏んで、誰かに駄々を言っては困らせている様子だ。

「あは、可愛い子。外人かな?黒髪だけど。」

「ほんと、美少女じゃん。あ……」
「ねえねえ!お正月の前祝いで買って!ねえ!」

「お正月はまだです!前祝いなどございません!先日クリスマスでこのバックを頂いたばかりでしょう?
さあ、帰りますよ。先ほどお約束なさったでしょう?」

声変わり前の、少年の声が高く強くひびく。
それは、どこかで聞いた……

アイがハッとして駆け寄った。
少女が駄々をこねる相手。
それは自分たちと同じくらいの背丈に、スラリとしたスリムな白いコートをまとい、白いズボンに白のショートブーツという白へのこだわり。
そして白い革の手袋で少女の頭をなでるその少年の姿。
少し伸びた緩やかなウェーブの赤い髪を燃えるように背中になびかせ、相変わらず白ずくめがよく似合う。

「リリス!」

他にこれほど美しい少年が二人といるものか、アイが確信を持って叫んだ。

「あ……アイ……様?!」

振り向いた少年は、百人いれば百人が振り向きそうなほどにきめの細かい肌は美しさに磨きがかかり、整った鼻梁に赤とグレーの色違いの瞳が宝石のように輝いてアイを見つめている。

「ア、アイ様!」

彼に抱きつくアイに、苦笑しながらヨーコが手を挙げる。

「久しぶり、リリス。背、少し伸びたんだね。」

「あ、はい。ヨーコ様もお元気で何よりでございます。」

「ふふ、リリスも相変わらずご丁寧な言い方ねえ。」

「え?そうでしょうか、……と、あれは……あっ!失礼します。」

突然リリスが顔を上げ、少女を抱え上げた。

「お、なんじゃ?抱っこならお姫様抱っこがいい。」

気持ちはわかるが、リリスもそれほど腕力がない。
少女も不服そうにリリスの首に手を回して掴まった。

「ご希望に添えず申し訳ございません。皆様走ります。」

「えっ?どこに?」

「とりあえずこちらへ。」

ダッといきなりリリスが走り始める。
慌ててそれを、アイ達が追った。
後ろを見ると、スーツを着た女性と中年の男がこちらを見て走ってくる。

「まさか、また追われてるの?!」

「はい、やはり私の髪は目立つようです。」

彼との出会いはいつも追われて始まる。
そしてそれは、思いもかけないほど大きな事柄に通じていた。
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