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8、隣国の脅威
60、仲直り
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その深夜、イネスは泣きはらした顔でベッドに転がり、悶々と枕を抱いていた。
ゴロンゴロン
右へ左へと何度も寝返りを打つ。
客間ではあるが、ゆったりとしたベッドに豪華な装飾は、巫子だからこそ一番上等の部屋に通されたからだ。
隣室には、サファイアが休んでいるが、どうも落ち着かない。
真っ暗が苦手なイネスは、いつもろうそくを一本灯したまま眠りにつく。
ドラゴンであるセフィーリアの息子として迎えられたリリスも、同じフロアの突き当たりの部屋だが、あいつのことだ。
セフィーリアのいない今、明日には部屋を別棟の大部屋あたりに変えて貰うだろう。
どうしよう、どうしよう
明日は兄様が到着するだろうし、それまでには謝りたい。
絶対、絶対謝って、また一緒にニッコリしたい。
リリと口も聞かないなんて、自分には耐えられない。
だいたいどう考えても、カッと来て一方的に怒った俺が悪い。
あいつにも、あいつの生活があるんだ。友達の2,3人いても不思議じゃないじゃないか。
なんで俺はこう、カッと来るのか、何か病気なんだろうか。
ああ、リリの気持ちを一番わかってると思い込んでた俺は、なんて愚か者だったんだろう。
あんなひどいこと言って、突き放して……なんて俺はひどい奴なんだ。
バカだ、俺はバカだ、バカバカ!
絶対に俺が謝るべきだ。
そうだ、絶対俺が悪い。
あいつがあんな気持ちで俺に会いに来てくれていたなんて、俺全然知らずに……
全然知らずに……
また涙がドッと流れる。
体中の水分が、全部涙で出て行く。
馬鹿だ、俺は馬鹿だ。バカバカ!
あいつからはきっと、何も言えない。
俺が早くあやまらなきゃ!
でも……
でも、いつ謝る?
どうやって?みんなの前で?こっそりと?う~ん……
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どう……
ゴロンゴロンゴロン 「あ」
ドターーンッ!
枕を抱いたまま、とうとうベッドから落っこちた。
「い、痛てえ!
枕を抱いたまま、とうとうベッドから落っこちた。
……」
転んで鼻とおでこの次は、お尻か。
これもきっと、すべてお見通しであるヴァシュラム様の嫌がらせに違いない。
きっとまたお会いした時、嫌みを言われるな。
でも……俺は、ムチでなんか打たれない…………
………………………………
「ああもう!」
立ち上がり、枕片手にそうっと寝室を出る。
どきっと動きが止まった。
ソファーにサファイアが寝てる。
くそ、隣で寝ればいいのに。
起こさぬよう、そうっと進み、部屋を出た。
廊下は明るい月明かりで照らされ、真っ暗ではないことにホッとする。
衛兵が首をかしげて、何かを言いたげに息を吸った。
「しっ!」
イネスがすかさず指を立てる。
「なにか?」
衛兵がひそひそ声でつぶやいた。
「夜這いだ、口外無用。」
「は、はあ……??」
巫子が夜這い??そんな姫が、このフロアにいたかな?
衛兵が、彼の姿を目で追う。
別の衛兵にも手で合図を送り、見て見ぬふりを装ってじっと見送った。
そうっと進む彼が、長い廊下の突き当たりの角部屋に着くと、ノックしようとしてドアのノブに手を置いた。
鍵がかかってると思ったが開いている。
そうっと忍び込むと、剣を手に持ちガーラントが正面に立っていた。
隣の控えの部屋と、中でつながっているらしい。
その隣がセフィーリアが使っていた、広い客間だ。
「なにか?」
ガーラントが、イネスの姿に剣を降ろす。
「しいっ!うるさい、夜這いだ。」
「夜這いとは、また……」
どうもイネスは、夜這いの言葉の意味を間違えているようだ。
「自室に戻れ、邪魔だ!」
「クックック……では、私は戻ります。」
ガーラントは、耐えきれずにプッと吹き出して隣室に戻って行く。
奥のベッドにはリリスが、目をこすりながら半身を起こした。
「イネス様?」
イネスがドスドスと歩み寄り、狭いベッドに自分の枕を並べる。
そしてリリスを尻で押して布団に潜り込んだ。
「あ、あの……」
「いいから寝ろ、明日は早いんだ。」
「はい。」
並んで寝ると、イネスは背中を見せる。
リリスも眠れるわけもなく、じっと天井を見る。
イネスは暖かい布団にリリスの体温を感じ、背中に触れるリリスの身体が気持ちいいのに、なんだか微動だにできない。
よし、言え!言うんだ俺!
リリに、ごめんって一言言えば眠れる!
喉が渇いて、何度もつばを飲み込む。
ごめん
口を動かすが、声が出ない。
イネスがぱくぱく口を動かしていると、リリスがクスッと小さく笑った。
「昔……よくこうやって休みましたね。」
ドキッとイネスの身体が震えた。
「う……うん。」
「私は嬉しくて、なかなか眠れませんでした。」
「そうか……」
じっと、互いの呼吸を目を閉じて聞く。
窓から星明かりが部屋を照らし、二人はすうっと大きく深呼吸した。
「リリ」
「はい」
「ごめん、俺……わかってないのは俺の方だった。」
「イネス様……」
「二人の時は、『様』はいらないよ、リリ。」
リリスがにっこり、イネスの背中を向いた。
「イネス……様、私の、友達以上に一番大切な方が何をおっしゃいます。」
イネスがその言葉に、満面に笑みをたたえる。
くるりと寝返りを打って、リリスと向き合った。
「くすくす」「うふふふ」
笑い合って、ゴツンと額をくっつける。
「俺はたとえ何があろうと、ずっとおまえの味方で親友で、そして兄弟だ。頼りがいのある兄だろう?」
「はい、じゃあ何かあったら地の神殿へ逃げ込みます。」
「うん、よし。困ったら俺を頼れ。
お前に頼られるのは俺の至上の喜び、俺はお前が大好きだ。」
「イネス……様、あ……りがとう。ありがとうございます。」
「馬鹿、もう泣くな。俺ももう泣かない。
まあ、たまに目から汗が出るかもしれないけどな。
とりあえず、二人の時に俺に『様』はいらないって覚えろ。」
「はい、うふふ」
「くすくす」
「お休み」
目を閉じて、狭いベッドでひしめき合うように眠った。
しんしんと、静かな夜が二人を見下ろす。
城の一室では遅くまで会議が開かれ、やがて夜明け近くに一頭のグルクが国境の砦に向けて飛び立った。
ゴロンゴロン
右へ左へと何度も寝返りを打つ。
客間ではあるが、ゆったりとしたベッドに豪華な装飾は、巫子だからこそ一番上等の部屋に通されたからだ。
隣室には、サファイアが休んでいるが、どうも落ち着かない。
真っ暗が苦手なイネスは、いつもろうそくを一本灯したまま眠りにつく。
ドラゴンであるセフィーリアの息子として迎えられたリリスも、同じフロアの突き当たりの部屋だが、あいつのことだ。
セフィーリアのいない今、明日には部屋を別棟の大部屋あたりに変えて貰うだろう。
どうしよう、どうしよう
明日は兄様が到着するだろうし、それまでには謝りたい。
絶対、絶対謝って、また一緒にニッコリしたい。
リリと口も聞かないなんて、自分には耐えられない。
だいたいどう考えても、カッと来て一方的に怒った俺が悪い。
あいつにも、あいつの生活があるんだ。友達の2,3人いても不思議じゃないじゃないか。
なんで俺はこう、カッと来るのか、何か病気なんだろうか。
ああ、リリの気持ちを一番わかってると思い込んでた俺は、なんて愚か者だったんだろう。
あんなひどいこと言って、突き放して……なんて俺はひどい奴なんだ。
バカだ、俺はバカだ、バカバカ!
絶対に俺が謝るべきだ。
そうだ、絶対俺が悪い。
あいつがあんな気持ちで俺に会いに来てくれていたなんて、俺全然知らずに……
全然知らずに……
また涙がドッと流れる。
体中の水分が、全部涙で出て行く。
馬鹿だ、俺は馬鹿だ。バカバカ!
あいつからはきっと、何も言えない。
俺が早くあやまらなきゃ!
でも……
でも、いつ謝る?
どうやって?みんなの前で?こっそりと?う~ん……
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どう……
ゴロンゴロンゴロン 「あ」
ドターーンッ!
枕を抱いたまま、とうとうベッドから落っこちた。
「い、痛てえ!
枕を抱いたまま、とうとうベッドから落っこちた。
……」
転んで鼻とおでこの次は、お尻か。
これもきっと、すべてお見通しであるヴァシュラム様の嫌がらせに違いない。
きっとまたお会いした時、嫌みを言われるな。
でも……俺は、ムチでなんか打たれない…………
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「ああもう!」
立ち上がり、枕片手にそうっと寝室を出る。
どきっと動きが止まった。
ソファーにサファイアが寝てる。
くそ、隣で寝ればいいのに。
起こさぬよう、そうっと進み、部屋を出た。
廊下は明るい月明かりで照らされ、真っ暗ではないことにホッとする。
衛兵が首をかしげて、何かを言いたげに息を吸った。
「しっ!」
イネスがすかさず指を立てる。
「なにか?」
衛兵がひそひそ声でつぶやいた。
「夜這いだ、口外無用。」
「は、はあ……??」
巫子が夜這い??そんな姫が、このフロアにいたかな?
衛兵が、彼の姿を目で追う。
別の衛兵にも手で合図を送り、見て見ぬふりを装ってじっと見送った。
そうっと進む彼が、長い廊下の突き当たりの角部屋に着くと、ノックしようとしてドアのノブに手を置いた。
鍵がかかってると思ったが開いている。
そうっと忍び込むと、剣を手に持ちガーラントが正面に立っていた。
隣の控えの部屋と、中でつながっているらしい。
その隣がセフィーリアが使っていた、広い客間だ。
「なにか?」
ガーラントが、イネスの姿に剣を降ろす。
「しいっ!うるさい、夜這いだ。」
「夜這いとは、また……」
どうもイネスは、夜這いの言葉の意味を間違えているようだ。
「自室に戻れ、邪魔だ!」
「クックック……では、私は戻ります。」
ガーラントは、耐えきれずにプッと吹き出して隣室に戻って行く。
奥のベッドにはリリスが、目をこすりながら半身を起こした。
「イネス様?」
イネスがドスドスと歩み寄り、狭いベッドに自分の枕を並べる。
そしてリリスを尻で押して布団に潜り込んだ。
「あ、あの……」
「いいから寝ろ、明日は早いんだ。」
「はい。」
並んで寝ると、イネスは背中を見せる。
リリスも眠れるわけもなく、じっと天井を見る。
イネスは暖かい布団にリリスの体温を感じ、背中に触れるリリスの身体が気持ちいいのに、なんだか微動だにできない。
よし、言え!言うんだ俺!
リリに、ごめんって一言言えば眠れる!
喉が渇いて、何度もつばを飲み込む。
ごめん
口を動かすが、声が出ない。
イネスがぱくぱく口を動かしていると、リリスがクスッと小さく笑った。
「昔……よくこうやって休みましたね。」
ドキッとイネスの身体が震えた。
「う……うん。」
「私は嬉しくて、なかなか眠れませんでした。」
「そうか……」
じっと、互いの呼吸を目を閉じて聞く。
窓から星明かりが部屋を照らし、二人はすうっと大きく深呼吸した。
「リリ」
「はい」
「ごめん、俺……わかってないのは俺の方だった。」
「イネス様……」
「二人の時は、『様』はいらないよ、リリ。」
リリスがにっこり、イネスの背中を向いた。
「イネス……様、私の、友達以上に一番大切な方が何をおっしゃいます。」
イネスがその言葉に、満面に笑みをたたえる。
くるりと寝返りを打って、リリスと向き合った。
「くすくす」「うふふふ」
笑い合って、ゴツンと額をくっつける。
「俺はたとえ何があろうと、ずっとおまえの味方で親友で、そして兄弟だ。頼りがいのある兄だろう?」
「はい、じゃあ何かあったら地の神殿へ逃げ込みます。」
「うん、よし。困ったら俺を頼れ。
お前に頼られるのは俺の至上の喜び、俺はお前が大好きだ。」
「イネス……様、あ……りがとう。ありがとうございます。」
「馬鹿、もう泣くな。俺ももう泣かない。
まあ、たまに目から汗が出るかもしれないけどな。
とりあえず、二人の時に俺に『様』はいらないって覚えろ。」
「はい、うふふ」
「くすくす」
「お休み」
目を閉じて、狭いベッドでひしめき合うように眠った。
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