赤い髪のリリス 戦いの風

LLX

文字の大きさ
106 / 303
11、アトラーナの秘め事 2

第104話 問題山積

しおりを挟む
リリサレーンは確かにそう言った。
そうしなくてはいけないのだろうけど、それは果てしなく難題だ。

「はい、フレア様の3番目の目を取り戻せと仰いました。」

「やはり。
それにあの保護した巫子。
今はイネスの剣で糸が断ち切れているが、あの子はリューズと繋がりやすい。
繋がるとあの子はリューズの手足となって、都合の良い武器になるだろう。
すでに何年も酷使された上に今回の事で心も体もすり減らしている。
もう二度と繋いではいけない、今のまま無理をさせたら心が壊れてしまう。
あの子は大切な、本当に大切な”入れ物”なのだ。」

「入れ物??なんです?それは。
あいつ、何の巫子か知らないけど、巫子として本当に必要なのですか?」

なんの巫子か知らないが、あの年まで修行無しで精霊の道も見えないド素人を、兄はどうして今さら修行させようと思うのかわからない。
だがセレスは厳しい顔で、ぴしゃりとイネスを叱った。

「イネス、お前がそれを口にする事は、自分自身の存在意義も脅かす事だ。
口を慎み、お前がリリスの不在の間はここを守るのだ。」

「は……はい、申し訳ありません。」

シュンとするイネスに、ガルシアがクスッと笑う。
まだまだ子供だなと、この素直な2番目の地の巫子が可愛く見えた。

「我らレナントの民は、イネス殿に期待しているよ。
貴方の力は心強い。余計な気を払い、どうか民を守って欲しい。」

「はい、申し訳ありません。
私も百合の戦士、ここへ残るからには全身全霊でお守りいたします。」

大きくうなずき、そして腕を組む。
ガルシアには、しかし本城にあるという言葉には確かに大きな壁があると思った。
本城にあるとしたら、宝物殿だろうと浮かぶ。
だがあそこは、何か行事がないとそうそう開く物ではない。
そこはたとえ王族でも、王の許しがないと足を踏み入れる事さえ出来ない場所だ。
自分もこれまで一度も行ったことも、その部屋がどこにあるのかさえ知らない。

「うむ……しかし本城か。それは困ったな。
子とも認めぬ貴方の言葉を、どこまで取り合ってもらえるか。
俺も一筆書いてはやれるが、あとは自分で説得するしかない。
しかし……ドラゴン殿の目玉まであるとは初耳だな。」

「ガルシア殿、先ほど申し上げたではありませんか。
ラーナブラッドはフレア様が契約の証しとなるように、ご自分の目をお与えになった物と。」

セレスの言葉に、一口飲み込もうとした茶を思わず吹き出しそうになった。
咳き込むガルシアに、慌ててレイトが背を叩く。

「あ、あれは!あれは世継ぎの印だぞ、ますますマズイではないか。」

「だから心配しているのですよ、ガルシア様。」

セレスが大きくため息をつく。
結局、対応策など結論のでないままリリスは退室し、ガルシアとセレスはレナントからの使者との話し合いに加わった。




コンコン

リリスがセレスの部屋のドアを叩く。
部屋のドアの前には、兵が特別に2人。
怖い顔でどこか納得できない様子なのは、何度も襲われたことを思えば気持ちもわかる。

「まあ、確かに腹も立つわよねえ。」

リリスの肩で、ヨーコがつぶやく。

「だからセレス様がお預かりになったのでしょうけど、ご不在になられるこれからが少々心配です。」

「一応イネスも巫子なんだし、だいじょうぶじゃない?
なんだか、いっぱい凄い事聞いちゃって、あたし疲れちゃったわ。
ガーラントのおじさんも随分ビックリしてたみたい。」

「私もビックリしましたから、お互い様です。」

ずっとガーラントの肩にいたヨーコ鳥は、肩で彼の動揺を感じていた。
でも、どこか納得したように、大きくうなずいたのを見逃さなかった。
彼は彼なりに、自分の目は間違いなかったと思ったのだろう。

「これはリリス様、どうぞ中へ。」

ドアが開いてルビーが顔を出し、リリスを部屋に招き入れた。

「あの……メイスは……」

「こちらの部屋に。」

セレスの部屋は、イネスの部屋より一部屋多い。
そこにお付きで来た少年カナンが休んでいたのだが、そのベッドを今はメイスに譲っていた。
案内されていくと火の鳥キュアがベッドに留まり、その横ではカナンが手際よくメイスの汗を拭いている。
メイスの左手は白い布に覆われ、身をよじりひどく苦しそうにしていた。

「どこかケガを?」

リリスがカナンに尋ねると、困った様子で首を振る。

「無くなった左手の肘から下を、あちらの魔術で作っていたようです。
困りました、地の神殿に伝わる癒しでは効かないようで。
恐らくは破魔の剣で切られたのではと思うのですが、かなり力の強い剣のようで……押さえられていた剣の予力と反発して腕が暴れています。」

破魔の剣と聞いて、リリスの胸がどきりとする。それは、もしかするとザレルに渡したあの剣ではないかと思ったのだ。
布の中では奇妙に何かがうごめいている。

「セレス様は?」

「このままであれば、心身ともに影響が大きいので、呪術的な処置で上から切って落とすと。
今ちょうど隣国の方々とお話し合いに行かれていて……」

「そうですか。」

メイスの腕を包む布は、何か結界がかけられているようで、中でボコボコと暴れるたびに光を出して牽制している。
リリスが手をかざすと、それがいっそう激しくなって見えた。
布越しに、赤い炎と青い炎が混じり合うことなく白い力の中で戦って見える。
青い炎でなんとか形を成そうとする腕が、赤い炎の力に食われていくように見えた。

「やはり、私の作った破魔の剣が不完全だったからなのかな?
どうか静かに、腕をやさしく包んで苦痛を与えぬように。」

布の上からさすりながら、願いを込めてつぶやいた言葉に、炎が争いをやめ反応した。
それはメイスには親和性の高かった青い炎が、無理に腕を成すのをやめてやさしく包み、その上を守るように赤い炎が包み込む。
布の下はようやく落ち着き、メイスも痛みが減ったようで息をつく。
カナンとリリスが、明るい顔で顔を見合わせた。

「やはり、火の巫子様でいらっしゃる、リリス様のお力でしょうか?」

「滅相もない、きっとリリサレーン様の指輪かと。」

「とりあえずようございました。このまま腕はこの聖布で包んで養生させましょう。」

腕を綺麗に包み直し、メイスの額に濡れたタオルを置くと、ふとうつろに目を開ける。
リリスが顔を覗き込み、頬をそっと撫でた。

「メイス、わかりますか?リリスです。
あなたは安全な所に保護されたのですよ、だから安心してお休みなさいませ。」

唇が、リリスと動く。
目が探すように動いて、見えない様子でゆっくりと閉じた。
髪を撫で、手を握ると安心したのか身体中から力が抜けたように見える。

「メイス、これからは一人ではありません。一緒にがんばりましょう。」

枕元のキュアが、くるくると喉を鳴らす。
ぼうと火を上げ、カナンが驚いて小さく悲鳴を上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

処理中です...