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11、アトラーナの秘め事 2
第110話 準備は進む
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二人の様子を見ていたガーラントが、背後でぽつりとつぶやいた。
「服は侍女のリリーダ殿に頼んでいるのだが、コートは巫子殿の物が良さそうだな。」
「えっ!」
リリスが振り向くと、ガーラントがニヤリと笑う。
そして歩み寄り、彼の背に手を置きどこかへと歩き始めた。
「俺は実家がこちらにあるので不足はないが、貴方はお困りであろうと思ってな。
今日はグルクや荷物の準備と、本城までのルートを話し合うようにしている。
空の旅は地面と違って、天候に左右されやすい。日の向きだけが目印だから、慣れてないと迷いやすいんだ。」
「気を使っていただきありがとうございます。
なるほど、そうですね。私はいつも精霊が教えてくれるので、気がつきませんでした。」
騎士であるガーラントが、そこまで気を回すことが出来るというのも珍しい。
リリーダと言う侍女が、助言してくれるのだろうか。
「リリス殿!」
ミランが、一緒にいたギルバの元を一礼して離れ、こちらに駆けてくる。
息を切らして笑みを浮かべ、二人に頭を下げた。
「明日、お供をする事になりました!
ブルース殿のグルクに同乗させていただきお守りいたします。どうぞよしなに。」
「それは……どうぞよろしゅうお願いします。
でも私などの為に……ミラン様はこちらでお忙しいのでは?」
「何を仰います、私などここでは無駄飯食い。
リリス殿に是非お供したいと思っておりましたが、なかなか言い出せぬ所をギルバ様が口添えして下さいました。
自分の分までお守りせよと言われております。
この命かけて、お守りさせていただきます。」
リリスの胸に、ミランの言葉が染み渡る。
ミランにはずいぶん世話になった。
何かお返ししなければならないのは自分の方なのに。
「どうか……よろしゅうお願いします。
私も命をかけてお守りいたします。」
リリスのちっとも変わらない言葉に、ミランがキョトンとしてプウッと吹き出した。
「本当に、あなたという方は。
皆あなたを守る為に共にゆくのです。われらにたとえ何かありましても、あなただけは生きていなければなりません。
あなたは我らを命がけで守る必要はないのです。
良いですか?我らの仕事は、あなたを守ることです。どうか心して下さい。」
「でも……」
「でもは必要ありません。我らは騎士なのです。お守りするに値するお方を、命をかけてお守りすることこそ本望。」
見上げるリリスに、ガーラントも大きくうなずく。
「わかりました。ではしっかりと守られることに精進いたします。」
「あはは!変な会話ですね。これからどちらに?」
「姉にリリス殿の服や旅の準備を頼んでいたのだ。
侍女の支度部屋へ行くのだが……ミラン殿にお頼みしても良いだろうか。
俺はキュアとグルクの準備をしたい。」
「リリーダ様ですね?わかりました、では私がお連れしましょう。お任せ下さい。」
リリスの杞憂もウソのように、周りがきちんと旅支度を進めてくれる。
ガーラントの姉リリーダは優しく明るい人で、知り合いの同じ年頃のお古やガーラントの少年時代に来ていた上等の上着やズボンなど沢山持ち込んでいて、他の侍女達やミランにも付き合ってもらい、あれこれ着てみて数枚を選んだ。
その後ブルースとガーラントが準備をしているグルクとキュアの様子を見に行き、一日を慌ただしく過ごして準備を万端に済ませた。
「ああ、なんか準備だけで疲れた。」
夕食を取りながらぼやくリリスに、ブルースがワッハッハと笑う。
「貴方は旅慣れていると聞いたが、俺とミランは長旅は初めてだ。
風の息子殿なれば、道を迷うこともあるまい。
当てにしてるぞ!」
「子供を当てにしてどうする、まったく……
早さ自慢なだけで使えない男だ。」
「なにい、空じゃもちろん俺が先に行くぞ!」
「お前に前が任せられるか、俺が先を行く。」
話し合いでもじっくり考えるガーラントと、あっさり事を進めようとするブルースとで、なんだか時々話がかみ合わない。
それでも旧知の仲らしく、仲はいいような悪いような微妙な二人に、リリスとミランが顔を見合わせクスッと笑う。
肩に留まるヨーコが、嬉しそうにチュチュッと鳴いた。
「なんだか、来る時とは全然違うわね。とても大事にされてる感じ。ね、良かったね、リリス。」
「はい、ありがとうございます。」
食事をしながら、確かにそうだと思う。
来る時は、魔導師とは名ばかりで結局都合のいい下働きと同じだった。
自分に魔導の力が無ければ、一緒に馬車に乗っていたあの少年たちのように死んでいただろう。
本当に、運が良かった……
でもそれが、これからも続くとは思えない。
本城は、こことは雲泥できびしい所だ。
ひたすらまた、頭を下げて、少しのミスもないように気を使っていればいいだけなのに、気が重い。
いいや、今度はそれだけでは済まされない。
自分は、この命をかけて交渉しなければならないのだ。
王家の宝物を、こんな自分に譲って貰えるなんて確率はゼロに近い。
玉座を狙っているのではないかと思われたら、そこで終わりだろう。
取り押さえられ、首を落とされる自分の姿が目に浮かんで、血が下がるように背筋がずんと来る。
切られる時って、痛いのかな…………罪人の死体って、どうされるんだっけ……
顔を上げ、夕暮れの空を窓から見上げる。
せめて、死ぬ時には産んでくれた母様を一目見てみたいな……
リリスはぼんやり思って、風の精霊達が戯れ流れる雲を見つめた。
「服は侍女のリリーダ殿に頼んでいるのだが、コートは巫子殿の物が良さそうだな。」
「えっ!」
リリスが振り向くと、ガーラントがニヤリと笑う。
そして歩み寄り、彼の背に手を置きどこかへと歩き始めた。
「俺は実家がこちらにあるので不足はないが、貴方はお困りであろうと思ってな。
今日はグルクや荷物の準備と、本城までのルートを話し合うようにしている。
空の旅は地面と違って、天候に左右されやすい。日の向きだけが目印だから、慣れてないと迷いやすいんだ。」
「気を使っていただきありがとうございます。
なるほど、そうですね。私はいつも精霊が教えてくれるので、気がつきませんでした。」
騎士であるガーラントが、そこまで気を回すことが出来るというのも珍しい。
リリーダと言う侍女が、助言してくれるのだろうか。
「リリス殿!」
ミランが、一緒にいたギルバの元を一礼して離れ、こちらに駆けてくる。
息を切らして笑みを浮かべ、二人に頭を下げた。
「明日、お供をする事になりました!
ブルース殿のグルクに同乗させていただきお守りいたします。どうぞよしなに。」
「それは……どうぞよろしゅうお願いします。
でも私などの為に……ミラン様はこちらでお忙しいのでは?」
「何を仰います、私などここでは無駄飯食い。
リリス殿に是非お供したいと思っておりましたが、なかなか言い出せぬ所をギルバ様が口添えして下さいました。
自分の分までお守りせよと言われております。
この命かけて、お守りさせていただきます。」
リリスの胸に、ミランの言葉が染み渡る。
ミランにはずいぶん世話になった。
何かお返ししなければならないのは自分の方なのに。
「どうか……よろしゅうお願いします。
私も命をかけてお守りいたします。」
リリスのちっとも変わらない言葉に、ミランがキョトンとしてプウッと吹き出した。
「本当に、あなたという方は。
皆あなたを守る為に共にゆくのです。われらにたとえ何かありましても、あなただけは生きていなければなりません。
あなたは我らを命がけで守る必要はないのです。
良いですか?我らの仕事は、あなたを守ることです。どうか心して下さい。」
「でも……」
「でもは必要ありません。我らは騎士なのです。お守りするに値するお方を、命をかけてお守りすることこそ本望。」
見上げるリリスに、ガーラントも大きくうなずく。
「わかりました。ではしっかりと守られることに精進いたします。」
「あはは!変な会話ですね。これからどちらに?」
「姉にリリス殿の服や旅の準備を頼んでいたのだ。
侍女の支度部屋へ行くのだが……ミラン殿にお頼みしても良いだろうか。
俺はキュアとグルクの準備をしたい。」
「リリーダ様ですね?わかりました、では私がお連れしましょう。お任せ下さい。」
リリスの杞憂もウソのように、周りがきちんと旅支度を進めてくれる。
ガーラントの姉リリーダは優しく明るい人で、知り合いの同じ年頃のお古やガーラントの少年時代に来ていた上等の上着やズボンなど沢山持ち込んでいて、他の侍女達やミランにも付き合ってもらい、あれこれ着てみて数枚を選んだ。
その後ブルースとガーラントが準備をしているグルクとキュアの様子を見に行き、一日を慌ただしく過ごして準備を万端に済ませた。
「ああ、なんか準備だけで疲れた。」
夕食を取りながらぼやくリリスに、ブルースがワッハッハと笑う。
「貴方は旅慣れていると聞いたが、俺とミランは長旅は初めてだ。
風の息子殿なれば、道を迷うこともあるまい。
当てにしてるぞ!」
「子供を当てにしてどうする、まったく……
早さ自慢なだけで使えない男だ。」
「なにい、空じゃもちろん俺が先に行くぞ!」
「お前に前が任せられるか、俺が先を行く。」
話し合いでもじっくり考えるガーラントと、あっさり事を進めようとするブルースとで、なんだか時々話がかみ合わない。
それでも旧知の仲らしく、仲はいいような悪いような微妙な二人に、リリスとミランが顔を見合わせクスッと笑う。
肩に留まるヨーコが、嬉しそうにチュチュッと鳴いた。
「なんだか、来る時とは全然違うわね。とても大事にされてる感じ。ね、良かったね、リリス。」
「はい、ありがとうございます。」
食事をしながら、確かにそうだと思う。
来る時は、魔導師とは名ばかりで結局都合のいい下働きと同じだった。
自分に魔導の力が無ければ、一緒に馬車に乗っていたあの少年たちのように死んでいただろう。
本当に、運が良かった……
でもそれが、これからも続くとは思えない。
本城は、こことは雲泥できびしい所だ。
ひたすらまた、頭を下げて、少しのミスもないように気を使っていればいいだけなのに、気が重い。
いいや、今度はそれだけでは済まされない。
自分は、この命をかけて交渉しなければならないのだ。
王家の宝物を、こんな自分に譲って貰えるなんて確率はゼロに近い。
玉座を狙っているのではないかと思われたら、そこで終わりだろう。
取り押さえられ、首を落とされる自分の姿が目に浮かんで、血が下がるように背筋がずんと来る。
切られる時って、痛いのかな…………罪人の死体って、どうされるんだっけ……
顔を上げ、夕暮れの空を窓から見上げる。
せめて、死ぬ時には産んでくれた母様を一目見てみたいな……
リリスはぼんやり思って、風の精霊達が戯れ流れる雲を見つめた。
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