赤い髪のリリス 戦いの風

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12、本城ルランへ

第118話 火の巫子

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「ここは、どこ?ああ……そうでした。旅の途中ですね、森の中です。そうです。
えーっと、私は、えっと、魅入られたんでした。そう……、そうです!
えっと、こういう時は……怒りました。うん、怒ることにします。」

リリスの思い出すようなつぶやきが、繭の中からこぼれる。
やがて繭は中から灯籠のように赤く輝き、突然ボウと火を噴いて赤く燃え上がった。
燃える繭からゆっくりリリスが立ち上がり、気分が悪そうに髪をかき上げて首を落とされたキュアの姿を、眉をひそめてチラリと見る。

「何をしているのです、死んだふりなどおやめなさい。」

キュアがその声に反応するかのように、地面に広がる血を吸い込みながら、切り落とされた首が独りでに動き一瞬で繋がった。

ケケケケケキアーーーッ

そして一声上げて立ち上がり、身体が青い炎で包まれる。

「ああ、気分が悪い」

リリスがそれにフラフラ寄りかかり、騎士たちの姿に驚いて目を見開いた。

「皆様?!えっ?なぜ?なんという!なんということ!

……あっ……」

駆け寄ろうとするリリスの足下がふらついて、大きくよろける。
後ろから、オウゥンエアが剣を振り上げ飛びかかった。

「動くな、巫子殿!」

ブルースが走るが間に合わない。

「くっ!」

とっさにガーラントが自分の剣を投げる。
ブルースの横を剣が後ろから風を切って飛んでいき、オゥウンの肩に突き刺さった。

「ぎゃあ!」

オウゥンエアが後ろに飛び退き、悲鳴を上げながら肩から剣を抜く。
ブルースがその隙に襲いかかった。

「このクソ!くたばれ!」

「キイッ!」

ギィン、キーン

火花を上げて、剣の応酬が始まる。
しかしオウゥンエアの剣は、それまでの早さがグッと鈍り、鬼気迫るブルースに押されて次第に後ろへ、後ろへと下がりとうとう大木の根元へと追いやられた。

「人間め!おのれ人間め、クレディエア!」

オウゥンエアの叫びに、クレディエアの首のない身体が起き上がって走り出す。

「なにっ?!」

「ブルース、後ろだ!」

ミランが傷を押して必死で矢を放ち、ガーラントがミランの剣を取ってその身体に斬りかかる。
しかし、首のない大きな獣の身体は痛みがないのか、傷もいとわず鋭い爪でブルースに襲いかかった。

「うわあっ!」


「迷えし魂。汝、ことわりに帰せ!」


リリスの言葉に、ごうと音を立ててクレディエアの身体が燃え上がり、ブルースの寸前で灰となって風に消えてゆく。
赤く輝くリリスがゆっくり立ち上がり、すくみ上がるオウゥンエアを冷たく見下ろした。


「私は、怒りました。」


「ひいっ!なんだ??いったいこれは!まさか火?!火の巫子だって?そんな物、聞いた事無いいぃ!!」

オウゥンエアがひっくり返り、尻餅をつく。

「食うんだ、食うんだ!お前を食ってやる!ウオオオオォォォォ…………」

四つ足で叫びを上げ、その声が大きく森に響き渡り、空気が、森が振動して、ざわめき耳をつんざく。

「うわああ!耳が!頭が痛い!」

騎士たちが耳を押さえて身動きできないでいると、オウゥンエアが剣を捨てて駆け出しリリスに飛びかかった。

「グガアアッ!」

オウゥンエアの獣の顔が、目前に迫る。
リリスが手をのばすと、その手から赤い炎が渦を巻いて吹き出した。


「フレアゴートが告げる!汝、輪廻の輪に立ち返れ!」

「ヒッ!!」

オウゥンエアの姿が炎に包まれ、そしてまるで異空間に身体だけがすっぽりと吸い取られるように消えた。
あとには彼の服や装飾品がガチャガチャと落ちる。
オウゥンエアの身体だけが、服の中身がすっぽり消えたのだ。

「な、なに?!一体何が起こった??」

騎士たちが、愕然とリリスを見つめる。

「ああ、熱い、身体が熱い……」

リリスの身体は赤く輝いたまま、熱さに苦しみながらよろめき、ケガをして動けないミランに足を向ける。
ミランが身動きも出来ず、目を見開いて思わずもがいた。

「リ……リリス殿……」

「大丈夫、動かないで……今なら、治せます。」

苦しそうに、かたわらに膝をつきミランの血だらけの脇腹に赤く輝く手を添える。

「あつっ!」

刺すほどの熱さに、ミランが顔をゆがめ身をひいた。

「少し、我慢して……下さい。
火の紡ぎ糸、フレアゴートの力を持って、断たれし物をつなげ。
弱りし者に、火の祝福を。」

リリスの手から、赤い炎が糸のように絡まりながら吹き出し、ミランの傷を包む。
ミランが熱さにたまらず悲鳴を上げた。

「うわああっ!ぎゃあっ!」

飛び上がるような痛みが走り、焼きごてでも当てられたかと思わず転がり怖々傷を見る。
しかし、傷は消えてただ赤い筋が皮膚に残っていた。

「い、いたっ!痛いっ!え?!ええっ??あれ?あれ?治ってる。」

「治り……ましたか?」

リリスが苦しそうにしながらも、ホッと顔がほころんだ。
何とか立ち上がり、肩から血を流すガーラントに足を進める。

「俺はいい、お前をどうにかしろ!大丈夫なのか?」

「大丈夫、傷を治したら冷やしますから。」

ガーラントの肩に手を添え、呪を唱えて傷を治す。
次にブルースを見ると、慌てて彼は手を振った。

「俺はかすり傷だ、大丈夫。巫子殿、どうすればいい?手を貸そう。」

「いえ、私に触れないで。キュア!キュア!」

キュアが呼ばれて一鳴きすると、リリスの元へ羽ばたいてくる。
そして彼の身体を足で掴み、大きく口を開いて食べるように覆い被さり熱を吸い取った。

「うう、ああ……痛い、爪が……爪が痛い!キュア!」

スッとリリスの身体から輝きが消え、キュアが乱暴に彼の身体を放る。

「あっ、……痛っ……もっと、やり方があるでしょう?!もうっ!」

転げて身体をしたたかに打ち付け、リリスは軽く頭を振って起き上がり、満足げにバタバタ羽ばたいて鳴くキュアを睨み付けた。

「もう!この、いつかお仕置きしますからね。
いたた、もう、熱くてたまらない。水を……もう、恥ずかしいとか言ってられません。燃えそうです。」

「おい、大丈夫なのか?」

ガーラントが、心配そうに彼の肩を掴む。
まだ熱の残る身体は、服も炎天下に置いていたように熱く、カッカと火照っている。

「すいません、水を浴びます。」

よろめきながら小川までいくと、服を脱いで浅い水に入り川底に身を横たえた。
ちょうど身体が浸かるくらいの深さで、石に頭を乗せると顔が水面から出て丁度いい。
頭から足へ、水が身体をゆるゆると流れて心地良く、火照ってどうしようもなかった身体がようやく冷えた。
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