速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第1話 退役の日だ!

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タタタンッ!タタタンッ!

闇の中、銃声が響き忙しい足音が交差する。
思いがけない所から、思いがけない人数が増えて思わず顔が歪んだ。

「ヤバい、ミスったか。後ろ取られた。」

小さなぼやきがハーフマスクのくぐもった声で聞こえ、大きな屋敷の一角で黒い戦闘服の5人の男たちがサッと外階段の下にひしめき、瞬時に二手に分かれ応戦する。

「鉄の階段だ、跳弾に注意。」

「「イエス」」「「イエス」」

リーダーが、指示を出して周囲にも目を配る。
人数増えたら増えた分だけやるだけだ。

ギィン、キンッ、カンッ!

タタタンッ!タタタンッ!タタタンッ!

鉄の階段に弾が当たり火花が激しく散って、これ以上無いほど盾の役割を果たしてくれる。
次々警備の男たちを撃ち取って、ようやく動き始めた。
頭の中に屋敷の構成は入っている。
慎重に、警戒しながら角を曲がって庭に出た。
そこには幾人もの警備の男たちが贅沢な庭に倒れ、バルコニーから黒い戦闘服の男が合図する。

「ちっ、終わってやがる。」

「B班、手際が悪い。今C班は上の階だ。」

「すまん。間取りに無い、隠し扉があった。」

「目標を確認する。」

別の戦闘服が手を上げ、急いで血に染まったバスローブを掴み、死体を起こして顔を確認する。
バスローブだ。
風呂から上がり、SPに囲まれくつろいでいた所をドローンで確認して電源を切り突入した。
それは、家の主人、ベーカー・ブランに間違いは無いはずだった。

顔は、確かにベーカーの顔だ。

「左上腕に猫のタトゥだ。」

「なんで猫なんだ?」

「知るかよ、死んだ猫だとよ。」

資料にあった位置をめくる。

無い。右も確認する。無い。愕然と、顔を見合わせた。

「Shit!やられた。デコイ(身代わり)だ。くそっ、」

情報の抜け穴だらけだ。
だからサード(3番目)だと言われる。
大きく息を吐いて立ち上がる。上の階からC班が降りてきた。

「C班、パソコン、ストレージ確保。」

「引くぞ。」

「イエス」「イエス」「イエス」

班長が小さく返答して、爆弾を仕掛けて下がりはじめる。
数台の車に乗り込み、無線で状況を報告した。とはいえ、結果は失敗と言わざるを得ない。
通信を切って、大きくため息付いた。

「S班、任せろとよ。直前に近くの家を出た不審車が郊外に出たらしい。」

「だろうな。
結局、あの人が外任せろって言った時点で、デコイだってわかってたんじゃねえの?
教えてくれればこんな無駄足踏まねえですんだのによ。」

「くそったれ、明日からいねえんだぞ?あの人は。」

「ケツ閉めろって言いたいんだろうよ。くそっ」

「ああ、ラストデイくらい、すんなり行くとこ見せたかったのによ。」

「しかたねえ、情報にデコイは無かった。」

「俺達がサードなのは、情報班のせいだ。
クソッ、金持ちの間で妙にデコイ作るの流行ってやがる。どこのドクターだよ、消すぞ!」

「腐るなよ。珍しいことじゃねえだろ?
最後に一緒できて良かったじゃねえか、ファーストがすげえ機嫌悪かったけど。」

腐りたくもなるさ。今日であの人は退役規定をクリアーする。退役するんだ。



1台の車が荒野の一本道、隣町へのルートを走る。ひっそりと、後部座席の真ん中に座るスーツの男を守るように、4人の戦闘服のSPが乗っていた。

「邸宅がやられたようです、連絡途絶えました。」

「ギリギリか、動いたのは奴の部隊だな?
くそっ、裏切り者め。
美味い所だけ吸って邪魔になったら殺す方法は、昔から少しも変わらない。
人への信用も信頼も無い、反吐が出る。」

「右前方熱反応あり。どうします?」

「こんな夜中、こんな場所に誰がいるってんだ!撃て!」

「は!」

窓を開け、暗視スコープの付いたアサルトライフルで攻撃する。そこには道下に熱を出す軍用車が1台止まっている。人影は見えないが、車めがけて一斉に撃った。

タタタタタタタタンッ!!タタタタタタタタンッ!!タタタンッ!タタタンッ!

パンッ!バシッ!パンッ!

「がっ!」「つっ!」

左後部座席の窓側1人死んで真ん中のスーツの男が肩を撃たれた。
真っ暗で見えない、荒野から弾が飛んできた。

「しまった、前方はおとりだ!」
「左のガラスを上げろ!右のガラス上げるな!中で跳弾するぞ!スピードを出せ!」

「くそっ!くそっ!」

「大丈夫か?!おい、おいっ!駄目か、死んでる。」

バシッ!バシッ!キュンッ!

狙撃が続き、後席では死んだ奴を盾にして真ん中の男が痛む手を伸ばし窓を上げる。

「くそっ!くそっ!死んでたまるか!」

道路脇、下がった場所にある、赤外線で見えた車にどんどん近づく。
その車の上に、1人の小柄の戦闘服の男が現れた。

「キシシシシ!デコイなんか使いやがって、セコい野郎だぜ。」

腰のショートナイフを1本手に取り、ポンと投げると手にある抜き身の日本刀をひるがえし、刀の峰で落ちてくるナイフの頭を高速で走る車に向けて打つ。

カーン!

軽く行ったその行動が、一瞬で通り過ぎる車の窓ヘとナイフを正確に打ち込んだ。
車が、ハンドルを取られて左の道路脇にそれて止まる。

「ぐあああああ!!」

ハンドルを持った男の腕にナイフが突き抜け、恐怖に悲鳴を上げた。

「何だ?いつ飛んできた??ナイフだと?!バカな!こっちは走ってんだぞ?!」

「くそっ!」
「あいつだ!殺れ!」

右前後席の男たちがドアを開け、一歩足を出して後方へ銃を構えた。次の瞬間、前席の男がドサリと倒れる。銃声は無い。ハッと視線をやると、キラリと何かが光った。

「運転代わります!早く!」

車の影に隠れながら運転手がスーツの男にうながされドアを開け足を降ろす。空がキラリと光った気がして、スーツの男が見上げる。運転手が腕の痛みに背を丸めて車から外へと身を乗り出した瞬間、見た事もないその長い刃がドスリと背から胸へと突き抜けた。

「がっ!」

「Mr.ブラン!」

運転手がゆっくりと前のめりに倒れ、刃がズッと一気に抜けて、また舞い上がる。

「はっ!」

スーツ姿の男が軍用車を振り返った。
小柄の戦闘服が、月明かりの下、こちらへあり得ないスピードで駆けてくる。
銃を向けて撃った瞬間、それは闇に紛れて飛び上がり、視界から消えた。

キュウウウウウンン

上空でワイヤーを巻き取る音がして、血糊がベチャリと男の顔に落ちる。

ドンッ!!

その戦闘服は車の屋根に飛び降りると、月明かりをギラギラと反射する刀を突きつけた。

「バカな……」

「本人は運転手に偽装して、あんた影武者かよ。ひでえ小心者だ。ご苦労なこった。」

子供のような声がする。男は見た事もない長い刃に一歩も動けず引きつった笑いを浮かべた。

「子供?まさか。」

「あんたら誰に雇われた?」

「守秘義務だ。」

「そっか、お疲れ。」

ピュンッ!

反射的に銃を構えるヒマも無かった。
戦闘服の男が、その場で日本刀を一閃する。
一瞬で、男は絶命した。

パンッ!

その指が、最後の引き金を引く。
戦闘服の男は弾が見えるように避けながら、ピュンと刀を振り、血を散らす。
ポケットから小さく切った新聞紙取りだし、刃の血糊を拭いてバッとその紙を散らした。
鞘の下から刀を戻し、右手を元気に空へと伸ばす。
まるでそれは、スポーツの勝利者のようだった。

「終わった。 終わった!! 」

「あー、マジでやめるんすか?」

軍用車を横付けしてきた1人が、大きくため息付いて窓から顔を出した。ドアを開けて出てくると、遺体袋を荷台から取り出しベーカー・ブランの元に行く。

「当たり前だろ、そのために俺はめんどくせえ規定クリアーしたんだからよ。」

ため息付いてベーカー・ブランの猫のタトゥを確認し、遺体を袋に入れた。
小柄の少年兵らしき戦闘服が、手伝って荷台に載せる。

「B班のジミー、消したってマジッすか?」

「だって、俺に銃を向けるんだもん。」

「なにがだもん、だ。このガキ。」

「はーーー???何か言った?」

「何も言ってねえっす。」

まあ、あいつはメンタルイカれてたから仕方ねえとは思う。
その内、銃乱射し始めたら、どっちにしても銃殺だったし。

戦闘服の男がため息付きながら荷台に載せて袋に札付けてる間に、少年兵は自分よりデカいSPの遺体を1人でポンポン車へと放り込んで行く。
だいたい車には予備のガソリンが積んである。
トランク見たら、やっぱりあった。栓抜いて車内に放り込む。
少年はひどく手際が良く、清々しい笑顔で両手をまた、空に伸ばした。

「あー、黒抜くのも今日で最後だ。おめでとう、俺。」

「寂しいっすよ、ううっ」

「うるせえ、俺は普通の男の子に戻りたいんだよっ!いいから早く片付けろ。」

「イエス、ボス」

狙撃に回っていた奴も戻ってきて一緒に車に乗り込む。
最後にSPの遺体の入った車にハンドガンで一発撃った。
車体に当たった弾が火花を散らし、ガソリンに火が付く。
燃える車をあとに、車を走らせながら、前に座る大人2人がグスンと鼻をすすった。
その日、彼は晴れて自由の身になったのだ。
踊り出しそうなほど喜ばしい退役の日を迎え、サトミ・ブラッドリーは血の臭いにまみれながら美しい星空を晴れ晴れと見上げた。
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