速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第35話 やっと見習い期間が終わったぜ!!

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今日は、サトミの研修期間終了日だ。
午前中3局周りから帰ってきたダンクが、ハンバーガー前にしてぐったりソファーにだれていた。

「食う元気がねえ。」

「あらなんで?そうねえ、コーヒー入れたげるわ。インスタントだけど。
あら、またミルク切れてる。サートーミー!クリーム使いすぎってば!」

「だって、コーヒー白くしないと苦いもん。」

相変わらずテリヤキバーガーしか食べないサトミは、コーラ1回飲んで、ゲップで戻しそうになって白いコーヒーに戻った。
その辺、エジソンと変わらない。炭酸はしばらく飲まないと苦手になるらしい。

「ほんとお子様なんだからー、ほら、サトミにもドーナツあげる。
3区画に新しくできたパン屋にあったの。」

「やった!今度行ってみよー」

嬉しそうに甘そうな奴1個もらってパクリと食う。
ダンクが横目でチェッと舌打ちした。

「そのお子様が怖いから、俺困ってるわけよ。
今日最終日だぜ?デリー行き以外1人なんだぜ?!
マジ、大丈夫なのか?頼むからさ、撃ってきたら、ちょく

“ よし、死ね ”

じゃなくてよお、選択肢増やしてくれよお。相手のおっさんも生きてんだよお!」

「んー、そのうち検討する。」

「今やれ、俺は強盗に逃げろーーって叫び疲れた。」

「だって、俺の法律は、『俺に銃向ける奴はみんな死ね』なんだもん。」

「この野郎、何がだもん!だっ!猫かぶりやがって!」

ダンクが苦々しい顔でヒクヒクしてると、サトミが白いコーヒーふうふうしながらチラリと見る。

「キヒッ、てめえにグダグダ言われても痛くも痒くもねえや。」

「腹立つなっ!エジソンはまだなんも言ってこねえのかよ!」

「まだー、まあ、峰打ちでもいいんだけどよ。
俺の峰打ちは骨砕けるからなあ。どっちにしても死んじゃうかも。」

ダンクが大きくため息付いて、頭をガシガシかいた。
反撃するなとは言えない。
こっちだって命あっての話だ。
だが、自分たちの反撃は威嚇とハズレの中に命中がある。
ところが、サトミは命中しか無いのだ。

「威嚇って方法、お前の中にある?」

「威嚇して欲しいなら、俺に銃向けるな。」

「足とか腕狙うとか。」

「え~~、だって、向こうは殺しに来てるのに。」


「は~~~~~~~~」


ダンクが大きなため息のあと、両手で顔を覆ってしくしく言い出した。

「なんで泣き真似すんの?」

「お前の心に、神様が慈悲の心を授けますように。」

「ノー、サンキュー。神は、そんなことより強盗を消せ。
そしたら俺も刀が汚れない。」

ガタッ!

ダンクが立ち上がって、ドーナツ食ってるキャミーに泣きついた。

「キャミー、なんでなんも言わねえんだよう!」

キャミーはヒョイと肩を上げてニッコリ笑う。

「そのうち強盗の方が慣れるわよ。」

「うん、俺もそう思う。」

うんうんとサトミがうなずく。

「お前が言うなっ!」

「まあ、俺も優しい男なんだぜ?
いやいや、俺ほど優しい男はいない。」

何だか偉そうに言うサトミに、ダンクがため息付いて彼のほっぺに付いたテリヤキソースを指で取ってペロリとなめた。

ほんと、テリヤキみたいにしょっぱい奴。

「はっ!嘘つき小僧の言う事なんか、誰が真に受けるか!」

諦めて、冷めたバーガー握り、ガブリと食いつく。
キャミーが、パンッと手を叩いてニッコリした。

「遅れましたけど、今夜、シロイ亭に予約したから!サトミの歓迎会ね!」

「えっ!待ってくれ!ニンジン抜き!言った?
言わないと、おっちゃんニンジンいっぱい入れてくる。ニンジン抜き!!」

「言ったわよお、だって、主役じゃない。サトミはご招待~」

「やった!タダ飯食える!」

あーよかった。シロイのメニューはニンジン入りが多い。

「へっ、まあ色々あったけど、よくやった。」

「だろ?」

ダンクとサトミが、グーを合わせる。
2人はなんだかんだ言っても息があっていい友人だ。
キャミーがほっこりしながら、昼食のドーナツをパクリと食べた。




黒服が、夕方の酒場通りに視線を動かし辺りを探る。
薄暗くなってくると電気が点き、露天の灯りの、安物のLEDの刺すような灯りがまぶしい。
店内では補助の灯りにランプが使われて、穏やかなオレンジ色が客を温かく迎えている。

ロンドは国境沿いに近い田舎だが、昔来た時より人が増えて活気が出ている。
戦時中は最前線に近く、頻繁にミサイルが飛んできて廃墟にバラックが建ち、どこか焦燥感と悲壮感にあふれていた。

ここはサトミの住んでいる町から少し離れている。
彼の家にあまり近づくとマズい。
彼のワケがわからないレーダーに引っかかる。
自分がここに来ていることが知られると、難易度が上がる。

ホテルに帰りかけて、何か嫌な予感に捕らわれ足を止めた。
周囲を視線で見回す。
並ぶ店から、客と店員の話し声が漏れ聞こえた。


「お客さんカッコいいね、売春宿ならその裏通りだけど、必要なさそうだ。」

「やだなあ、僕はある人にピュアに一途なんだ。」

聞き覚えのある声に、バッと横のオープンバーを見る。
カウンターに座る、華奢なスーツ姿の男の後ろ姿は、あまりに特徴があってわかりやすい。
黒髪のおかっぱなんて、この国じゃあまり見ない髪型だ。

「わかるかい?純愛だよ、心から。まあ、片思いだけどね。

だからさ、彼を裏切る奴は……」


その若い男がくるりとこちらを向いて、口が裂けそうなほどにニイッと笑った。

「殺すよ。」

黒服が、目を大きく見開く。

なぜ、こいつがここにいる?!

思わず一歩下がった時、耳元にいきなり吐息がかかった。


「よぉ、何してんの?エンプティよぉ。」

「うおっ」

「ヒャハハ!そんなに驚くなよ、俺の下僕。
お前休暇だろ?ここで何してんの?観光とか言うなよ?それともサトミんちに遊びに来た?
いいなあ、俺も連れてってくれよ。下僕ぅ~」

それは、隊長のジンだ。これほど近くに来るまで気配を感じない。
透明人間と言われる彼の気配を感じることが出来たのはサトミだけだった。

エンプティと呼ばれた黒服は、無言で答えずジンを振り切って歩き出す。
ジンが、ポケットに手を突っ込んだまま笑って言った。

「楽しみにしてるぜ!下僕ぅ!」

何を指して楽しみなのかわからない。
全部知られているような、知らずに言っているのか、それさえも。


エンプティの背中を見送りながら、ジンの所におかっぱ男が歩み寄る。

「サトミに会いに行こうかなあ、ジンは部隊に帰るんでしょ?」

「お前が帰れ、俺は会っていく。」

「えーーー、 こればかりは聞けませんね。」

おかっぱがザッと一歩引いて、腰の銃に手を回す。
だが、問答無用でジンはクルリと車の方へ歩き出した。

「デッドエンド、命令だ。貴様が帰れ。」

「く、く、く、」

笑い顔を奇妙に歪め、苦虫噛みつぶすような顔で銃から手を離すと、ジンに向けて敬礼した。

「了解しました、隊長。」

ジンの後ろには、2人の監視がピッタリと付いて歩く。
それを見送って、デッドエンドがチッと舌打ちした。

「クソッ、いつか殺してやる。」

その足でさっきのバーに戻ると、残りを飲み干しマスターに聞いた。

「娼館はどこだって?」

マスターが、苦笑いで裏通りへの道を指さした。
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