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2、えーーーー!!除隊差し戻しって?!!

5、なんでここにギルティが

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そしてその頃、ロンドの郵便局では……………相変わらず通常業務で忙しい日々…

と言いつつも、普通の退屈な日々にサトミは、でっかいあくびで青い空を見つめ大きくため息をついていた。

「あーーーー、昼から戸別(こべつ)か。今日は少ないから、早く帰ってココア飲もうっと。」

担当地区の郵便物受け取って、伝票入れておつり確認して事務所を出る。
ベンは戸別は面白くないのか、乗り気じゃ無い。けど、乗る。

戸別配達ってのは、出会いもあるし、不在もある。気が重いときもあるし、幸せな気分になる事もある。
だが、その日の出会いは最悪だった。

その日は快晴で、空は晴れ渡り、肌寒い季節なのに暖かい。
朝から3局周りの当番だったので、防寒に厚めのストール巻いてきたのが昼からじゃちょいと暑いがまあ、汗かくほどじゃない。
今日は不在がないのでとてもスムーズだ。
いつもこうだと時間も早く終えられる。

「あー、砂糖、砂糖、砂糖食いてえ…」

戸別配達は、さすがに5ヶ月やってると慣れたが、頭を使う。
グチャグチャ書かれた文字読むのは、マジ難題だ。
頭使うと、がぜん砂糖が欲しくなる。
ガイドは条件反射だと言うが、自分自身そうだと思う。
だが、これを我慢していると、イラついて力加減が出来ない。
先日砂糖切れのままエジソンのとこに行こうとして、パーティションのドアノブを回しすぎて引きちぎってしまった。
一瞬局内しんとして、やっちまったと思ったが、アレは駄目だ、お粗末すぎる。
もっと頑丈な鉄のドアに変えて欲しい。

俺の力はちょっとだけ他の奴より強い。
おかげで総務に怒られる常連になってしまった。
総務のケリー女史は怖い。
口やかましい女は軍にもいたけど、どこにでもいるもんだ。
俺はミルクだの砂糖だの壊しただの、予算予算と頻繁にめっちゃ怒られる。
備品は全部、鉄にしろ。
特にプラスチックは自然にも俺にも優しくない。


半分ほど配達終えて、家並み外れて一旦アメを口に放り込み休憩する。
ああああ、砂糖が心地いい。俺はいつか、シロップの風呂に入りたい。

普通郵便のアイルが前を通りかかった。

「お疲れ!サトミ、手伝おうか?俺荷物担当だったからもう終わったんだ。」

「お疲れ~、もう少ないから大丈夫だよ。ありがとう。」

「そっか、じゃあお先!」


そうだ、思い起こせば、この時まかせれば良かったと思う。
だが、俺は仕事に真面目すぎた。


「さて、次はD地区3番通りに3通か。」

D地区は住宅街だ。
2軒回って、3軒目、それは2階建ての白い館で、この辺では大きい金持ちそうな新しい家だ。
確かここは爺と婆さんの2人で住んでいると思ったが、庭にデカいオフロード4WDが停まっているのを見ると、子供か孫でも来ているらしい。

と、ふと足を止めた。

サトミがいきなり、慌てたようにストール巻き直し、ゴーグルを付ける。
ストールで顔半分を完全に隠し、よし、と、ようやくノックした。

コンコンコン

「郵便でーす!」

裏声で可愛く声をかける。と、はーいと女の声がする。
よし、そのまま女が来たらゴーグル外す。

女出ろ、女出ろ、女出ろ、女出ろ、女出ろ、女ああああ!!

「あなたー、出てくれる?」

「オッケー、ハニー。」

チッ!誰がハニーだ!

足音がして、ガチャンと、ノブが回ってゆっくりドアが開いた。
家の主人は壁に隠れて銃を下手に構え、そっと脇から顔を出す。

は?ばっかじゃね?

俺は指で名前を隠し、身分証のパスを見せて、郵便の手紙を見せた。

「エクスプレスの郵便でーす、代金が着払いなんですが~」

裏声だ、裏声。俺の裏声は可愛いだろーが、フフフ、よーしバッチリだ。
男はチッと舌打ちして、ドアをバーンと蹴った。

「てめえ、声は可愛くても、顔隠してたら強盗と間違えるだろうが!ゴーグルぐらいとりやがれ!」

ツンツン茶髪のゴツい男がガン付けて凄んでくる。

「あなたー、どうしたの?大丈夫ー?」

「あ、あ、大丈夫だよハニー!郵便屋さんが来てるんだ!」

「あらそう、誰からかしらね。」

男はハニーと話しているときは妙に甘え声でデレてるくせに、こっち見るとまた凄む。



プーーーーーーーッ



俺はもう、たまらず腹筋崩壊するしかなかった

「てめえ!何笑ってやが……なんだぁその背中の棒はぁっ!
元ファースト野郎が!とうとう、うちに来やがったなあ!」

俺は腹を押さえて何とか息を整え、ゴーグル外してストール緩めて顔を出した。

「笑わせんなサード!じゃなかった、今セカンドか!なんだてめえ、サードからセカンドに昇進かよ!
無能のくせに、クソ野郎!何がハニーだ、軍のケツ拭き野郎が!」

「はぁ?自分だって、ついこないだまでいたクセに。
なんだこのチビ、こっちは客だぞ!お客様だろうが!失礼致しましたと頭下げろがクソったれ!」

「あーそうでした!失礼しましたお客様よ!さっさと7ドル払いやがれ!」

「チッ、なんでこんな薄っペラの手紙に7ドルもかかるんだよ、あー?」

「危険手当だよ!俺たちアタッカーが危険な目に遭いながら、苦労してここまで持ってきてやったんだろうが!」

「ヒヒヒヒ!誰が危険だって?
てめえソロ最強だったクセに、誰が危険ってふざけんな!
盗賊より、てめえの方が危険だろうが!シリアルキラーがほざきやがれ!」

シリアルキラーにドキッとして周りを見回した。
ツンツン男も、しまったと口に手を当て見回す。

ここは軍の敷地じゃないので、一般人が引きそうな単語は発言するとNGだ。
ツンツン男がポケットの財布から7ドル抜いて、サトミに渡す。
急に静かに声を潜めた。

「お前、後で話しあると言ったら会ってくれるか?」

「天気の話なら構わねえが、仕事の話はクソくらえだ。」

ツンツン男はうーむと考える。

「そうだな~、次の仕事関係なんだが、貴様の考えを聞いてみたい。
だから丁度いいなーってよ、ハニーの実家に付いてきたんだ。
ハニーの実家がてめえの近所って、もうこれ運命じゃね?」

誰が運命だよ、クソ野郎!

「ちっ、俺目的かよ。
ジンと相談しろよ。今2チームしか無いんだろ?
お前ら俺は辞めたって事に、早く慣れろ。
飯食いにぞろぞろ来やがって、俺はツアーコンダクターとは違うんだ。
俺はな!てめえらとは縁切りたいんだよ!クソ野郎ども!」

「そうは言ってもなー、お前は迷いが無くて判断速くてやっぱ頼りになるし、ジンは殺し以外には頭働かねえバカだし、デッドはセカンドと共同戦線張るなんてまだ聞いてないしーだろ。
ファーストはよう、お前の顔見に行ったあとは、みんなイキイキしてやがる。
ジンがトップだとストレスだらけで、あれ、殺し合いでもはじまりそうだぜ?」

「知るかよ、俺は砂糖じゃねえ。」

サトミの突き放すような言い方に、ツンツン頭がムッとしたかと思うと、何を思ったかニイッと笑った。

「なあ、ボスは言うなってたけど教えてやるよ。
お前知らねえだろうけど、お前の除隊許可、差し戻しになってな~。
お前……ヒヒッ!
保留の休職扱いで、正式除隊になってねえんだぜ?」



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