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幕間1 甘味処〈てるてる〉のあまーい休日
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青いのれんに、てるてる坊主が蛇の目傘をさしている姿と7色の紫陽花が描かれてあり、墨文字で『甘味処てるてる』と書かれている。
木の引き戸を開ければ、引き戸に取りつけられている鈴が、ちりんっと鳴った。
「いらっしゃいませ‼」
純和風の小洒落た店内は、カウンター席もテーブル席も満席だった。
愛は入店して来た初老の夫婦、山川と妻のシノを待合い用の長椅子に案内する。
「すみません。順番にご案内します。お待ちの間、こちらをどうぞ」
愛は、おしぼりと抹茶、一口大になった菓子を差し出した。
「おお、今日は桜どら焼きか」
「和菓子処〈鈴々〉さんの和菓子は、本当に美味しいわよね」
「すみませーん。注文お願いしまーす‼」
最奥のテーブル席の方から声がかかる。
「はーい。ただいまー‼」
愛は、山川とシノに会釈して、きびすを返す。紫色の作務衣と同色の前掛けから、ボールペンとメモ用紙を取り出した愛は、フロアですれ違った純を心配そうに振り返る。
ガチャンッ‼
大きな音をたってて、湯呑茶碗とあんみつの入っていった器が割れる。
「失礼しました・・・・・」
純は、周囲に謝罪して、散乱した破片等を片付けにかかる。
「・・・・純。今日は、あがれ‼心ここにあらずで、仕事されてもお客様に迷惑だ‼」
調理場から、白髪の好々爺と一緒に出て来た晶が、純を一括する。
純はとろ~んとした瞳で、晶を見る。目の下に、隈が出来ている。
「・・・・すみません。大丈夫です・・・・」
白髪の好々爺、晶、純、愛の祖父、牧野正宗と晶と愛の母、牧野千夏が心配そうに、純と晶のやり取りを見守っている。
「ならば、しゃんとしろ‼」
「・・・・はい」
純は返事をすると、破片を片付ける為に調理場に入っていく。
(昨日の今日で、しゃんとなんて出来ないよ。おにいちゃん、純センパイには厳し過ぎだよ。いつも・・・・・)
純を目で追いかけていた愛は、父、牧野玲人と目が合った。
玲人の唇が、「仕事しろ‼」と動く。愛は舌をぺろりっと出して、仕事に集中することにした。
その後。ランチタイムを過ぎると、客足も落ち着いてきた。
「晶、愛、純くん。あがっていいぞ」
玲人の言葉に、のれんをしまった晶が、『本日の昼の営業は終了しました』という立て看板を出す。
「練り切り、練り切り、と。あ、お父さん。私、『乙女御膳』と『クリームあんみつ』ね♡」
愛はカウンター席に陣取って、練り切りとほうじ茶で一服する。
「う~ん。美味し~い♡」
愛がほっこりしている間に、純が正宗に夕方のバイトを休みたいと伝え、出ていった。
「ほい。『乙女御膳』と『クリームあんみつ』、お待ち!」
愛は純が、出ていった引き戸を見ていたが、玲人の声で再度、自分の幸せを満たしだした。ある決意を胸に・・・・・。
その日、愛は閉店時間の夕方6時まで、ほぼ、全ての甘味メニュー、〈鈴々〉から仕入れた和菓子を制覇した。
夕飯を食べ、お風呂に入った後、いつもなら部屋で読書をする時間に、愛は3階(正確には中2階)の晶の部屋を訪ねた。
「おにいちゃん。入っていい?」
「ああ。どうした・・・・?」
突然部屋に来た妹に、晶は訝しんだ。
「どうして、純センパイにいじわるするの?」
木の引き戸を開ければ、引き戸に取りつけられている鈴が、ちりんっと鳴った。
「いらっしゃいませ‼」
純和風の小洒落た店内は、カウンター席もテーブル席も満席だった。
愛は入店して来た初老の夫婦、山川と妻のシノを待合い用の長椅子に案内する。
「すみません。順番にご案内します。お待ちの間、こちらをどうぞ」
愛は、おしぼりと抹茶、一口大になった菓子を差し出した。
「おお、今日は桜どら焼きか」
「和菓子処〈鈴々〉さんの和菓子は、本当に美味しいわよね」
「すみませーん。注文お願いしまーす‼」
最奥のテーブル席の方から声がかかる。
「はーい。ただいまー‼」
愛は、山川とシノに会釈して、きびすを返す。紫色の作務衣と同色の前掛けから、ボールペンとメモ用紙を取り出した愛は、フロアですれ違った純を心配そうに振り返る。
ガチャンッ‼
大きな音をたってて、湯呑茶碗とあんみつの入っていった器が割れる。
「失礼しました・・・・・」
純は、周囲に謝罪して、散乱した破片等を片付けにかかる。
「・・・・純。今日は、あがれ‼心ここにあらずで、仕事されてもお客様に迷惑だ‼」
調理場から、白髪の好々爺と一緒に出て来た晶が、純を一括する。
純はとろ~んとした瞳で、晶を見る。目の下に、隈が出来ている。
「・・・・すみません。大丈夫です・・・・」
白髪の好々爺、晶、純、愛の祖父、牧野正宗と晶と愛の母、牧野千夏が心配そうに、純と晶のやり取りを見守っている。
「ならば、しゃんとしろ‼」
「・・・・はい」
純は返事をすると、破片を片付ける為に調理場に入っていく。
(昨日の今日で、しゃんとなんて出来ないよ。おにいちゃん、純センパイには厳し過ぎだよ。いつも・・・・・)
純を目で追いかけていた愛は、父、牧野玲人と目が合った。
玲人の唇が、「仕事しろ‼」と動く。愛は舌をぺろりっと出して、仕事に集中することにした。
その後。ランチタイムを過ぎると、客足も落ち着いてきた。
「晶、愛、純くん。あがっていいぞ」
玲人の言葉に、のれんをしまった晶が、『本日の昼の営業は終了しました』という立て看板を出す。
「練り切り、練り切り、と。あ、お父さん。私、『乙女御膳』と『クリームあんみつ』ね♡」
愛はカウンター席に陣取って、練り切りとほうじ茶で一服する。
「う~ん。美味し~い♡」
愛がほっこりしている間に、純が正宗に夕方のバイトを休みたいと伝え、出ていった。
「ほい。『乙女御膳』と『クリームあんみつ』、お待ち!」
愛は純が、出ていった引き戸を見ていたが、玲人の声で再度、自分の幸せを満たしだした。ある決意を胸に・・・・・。
その日、愛は閉店時間の夕方6時まで、ほぼ、全ての甘味メニュー、〈鈴々〉から仕入れた和菓子を制覇した。
夕飯を食べ、お風呂に入った後、いつもなら部屋で読書をする時間に、愛は3階(正確には中2階)の晶の部屋を訪ねた。
「おにいちゃん。入っていい?」
「ああ。どうした・・・・?」
突然部屋に来た妹に、晶は訝しんだ。
「どうして、純センパイにいじわるするの?」
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