恋と首輪

山猫

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首輪の役割

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‐‐‐

「蓮様、会長がお呼びです。」
「え?父さん帰ってきたの?」
「はい、今先ほど。」
その報告に、思わず口が緩む。
珍しいな、こんな頻繁に帰ってくることなんてないのに。

最近、全てがうまくいきすぎて怖くなる。
仕事も、学校でも。
全部みゆのおかげだ。

父さんも、みゆのこと気に入ってるみたいだし。

「父さん、お帰り」
父さんの書斎に入ると、大きいソファにいつものように座っている。
その姿は、いつ見てもカッコいい。

「おお、来たか。」
「どうしたの?急に」
「ああ、ちょっと話があってな。」

いつもよりどこかよそよそしい父さんに、違和感を感じながらも世間話をする。
学校の話、仕事の話、
俺は、父さんと話せて嬉しいけど、でも、

「父さん、話って何?」
「…ああ、蓮。落ち着いて聞いてくれ」
いつもと空気が違った。緊張感が張り詰めたような。
俺たちは今、父と息子の立場じゃなく、会長と副社長の立場のような。

「蓮、お前ももう大人だ。」
「うん、」


「婚約、受けてみないか?」



「……え?」
急なその言葉に、言葉を失った。
父さんは、今なんて……

「お前が、戸惑うのはわかる。もちろんすぐじゃない、お前が卒業してからの話だ。」
「……でも、なんで…なんで急に、」
そんな話、今まで一度も聞いたことなかったのに…

「父さん、俺の好きにしろって言ってたじゃん!女なんか信じるなって言ったのは、父さんだろ?なのに、何で婚約なんか…」
「相手方と1回話した時から、悩んではいたんだ。どうするのがお前にとって、会社にとって1番いいか。それで出した決断だ。」
「…相手?もう決まってるの?」
「ああ、有能でとてもいい子だ。お前もきっと気に入る。」
父さんは何言ってんだ。
本気で言ってんのか?
いい子?そんなもん知るかよ。

「……ッ、ふざけんなよ、」
父さんの言うことは、全て聞き入れようと思ってた。
だけど、これだけは無理だ…
婚約?俺が?

笑えない

「まあ、一回会ってみろ。今日ここに呼んでる。」
「……父さんっ!」
「南雲、彼女を連れてきてくれ。」
「かしこまりました。」

ふざけんなよ
何だよこれ。
父さんは、知ってるはずなのに。

俺は、"御令嬢"が1番嫌いだって。

生意気で、プライド高くて、吐き気がするのに。
そんな女と婚約なんて、

死んだほうがマシだ。

そしてふと、みゆの顔が浮かぶ。

やっといい子を見つけたのに。
やっと俺が望んでた子を見つけたのに。

「父さん、俺絶対婚約なんてしないから。」
俺の未来も、誰と結ばれるかも、誰にも決めさせるもんか。
たとえ相手が、どんな財閥の令嬢だろうと。

「最後に選択するのはお前だ。」
「…は?…」

「お前がしたくなかったらしなくてもいい。今から来る女が気に入らなかったらな。」
父さんは、俺を見てふっと、笑った。
何か意味ありげなその顔は、俺を困惑させる。

何だよそれ。

じゃあ何でこんな話……
最初から答えはわかって…

「会長、お連れしました。」
「おう、入れ。」
顔なんか見なくても、俺の答えは決まってる。

(ガチャッ)

婚約なんか、絶対に……
開いた扉から見える人影。

ワンピースを靡かせて、歩いてくるその堂々とした佇まい。
俺は、彼女に釘付けになった。

艶のある長い髪。
自然に整っている顔。
その、柔らかな笑顔。

……間違いない。


「……みゆ…?」


驚きなんて言葉は、とっくに通り越してしまった。
頭が真っ白になって、全身に鳥肌が立つ。

今ここには、俺の婚約者らしい人が来るはずなのに
何で…彼女がここに…

俺を見て、優しく笑う彼女は、紛れもなくみゆに間違いはなくて、

いつもより少し着飾ってる彼女から、目が離せなかった。


「紹介する。うちの財閥系企業の筆頭株主である、
宝谷財閥御令嬢の、月宮みゆさんだ。」

「お久しぶりです、会長。」


全身が、震えた。

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