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嫉妬
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しおりを挟む「じゃあ、私これで。」
「うん、また明日ね」
いつもの帰り道。
いつもの別れ際に、事件は起きた。
「あ、みゆじゃん。今帰り?」
「……げ、」
「こらこら、そんな顔しなくたってみゆがお兄ちゃんに会えて嬉しいって思ってることぐらいわかってるよ」
思ってねーよ。
ああ、よりによって今鉢合わせるなんて…。
「あ、君。蓮くんでしょ?」
「あ、はい。お世話になっております、蒼司(そうし)様。」
「ちょっと~仕事モードはよしてよ~。今はみゆの兄として接してくれる?」
「…はい、わかりました。」
……気まづ…。なにこれ。
早く主人帰そ…。
「じゃあ、蓮。また明日…」
「えー帰っちゃうの?せっかくだから、うちでご飯でも食べてかない?」
「は!?」
…このバカ兄貴…。何考えてんのほんと。
「…あ、はい。じゃあ、お邪魔します」
明らかに無理してる主人。
帰っていいよ、とジェスチャーで表すも、主人は首を横に振る。
「おーやったやった~!早く家入ろうぜ~!にしても君やっぱ超かっこいいね!ほんとにみゆなんかでいいの?付き合ってるんでしょ?みゆにいろいろ聞いてるよ~!」
「お、にいちゃん。余計なこと言わなくていいから」
馴れ馴れしく蓮に肩を組むお兄ちゃんから蓮を引き剥がす。この短時間で人をここまで戸惑わせるって逆にすごいのではないか、私の兄貴。
そして、~!の数が尋常じゃない。
「なんだよ~男同士で話させろよ~!」
「しなくていい!!先に家入ってて!」
ちぇー、と面白くなさそうな顔をしながら家に入っていくお兄ちゃん。
……子どもかよ。
「ごめんなさい、こんなことになっちゃって。大丈夫ですか?」
「全然大丈夫だけど、なんかすげー意外」
「なにがですか?」
「いや、前パーティーで会った時すげークールな人なのかなって思ってたから。」
「え、あれが?」
「うん、やっぱ超イケメンだし。」
わかってる。
私の兄は、びっくりするほど外面がいい。
黙ってればカッコいいと思う。黙ってれば。
今日だってきっと秘書さんに全て準備してもらったであろう黒い高級スーツを着こなしてるし。
悔しいけど…。
「ええ、蓮も緊張とかするんですね。」
「俺のこと機械かなんかと思ってる?」
「ふっ、そうかも。てゆうかお兄ちゃんと会ってたんですね」
「ああ、何回か。会うたびすっげー睨まれてる感じして、嫌われてんのかなって思ってたけど、今思えばみゆの兄ちゃんだったからか、納得。」
「……ごめんなさい」
ほんっと失礼な兄。
後で説教しなきゃ。
「おーい!何してんのー!早く入りなよ~!」
ぴょんぴょん飛んで手招きするお気楽なお兄ちゃんを、とりあえずキッと睨みつけて主人と家に入った。
居間に入ると、もう料理が準備されている。
いつもより豪勢に見えるのは気のせいだろうか。
「あれ、みゆのお母さん?」
でかでかと飾ってあるお母さんの遺影を見て、主人は言った。
「はい、そうです」
「綺麗な人だね、みゆにそっくり」
「…そう、ですか?」
正直、お母さんに似てるって言われるのが1番嬉しい。
「お待たせ~じゃあ食べよっか」
「…え、」
「……はあ、ねえお兄ちゃん!その年でその変なペンギンの着ぐるみパジャマ着ないでって言ってるじゃん!恥ずかしいからほんとやめて!!着替えてきて!!」
「変じゃないし。これ可愛いじゃん、蓮くんも可愛いと思うよね?」
主人に振るな。
「かわいいです!」
ビクッとなった主人が咄嗟に反応する。
本当にごめんなさい…。
「ほらねー、みゆがおかしいんだって!」
「何でもいいから着替えてこいバカ兄貴!!」
「うわ~みゆが反抗期だ~しくしく」
嘘泣きしながら部屋に戻っていくお兄ちゃん。
「……はぁ、」
「ふっ、お兄さんと仲良いんだ」
「いやどこがですか…いつも振り回されてます…」
「でも羨ましいよ、俺一人っ子だから。家でこんな賑やかなこともないし。」
「…じゃあ今度私が蓮の家行きます…」
「お、今日えらい積極的じゃん」
主人はニヤニヤしながら私を見る。
あ、やばい。主人のドSスイッチが…。
「え、いや、そうゆうことじゃなくて…!ご飯だけ食べにいくって話で… 」
「そうゆうことって何?何想像したの?」
「……ッ…もういい、行かない。」
「あーごめんごめん、俺が悪かった」
笑って私の頭を撫でる主人。
なんか、いつも私が恥ずかしい思いしてる気がする。
「あー、俺がいない間に2人でイチャイチャしちゃって!ずるい!俺も混ぜてー!」
なんでだよ。
「イチャイチャなんかしてない、早く食べよ!」
「そう?みゆ顔真っ赤だけど」
「…別に、なんでもないし!」
「あ、みゆ。下のワインセラーからさ、ワイン取ってきてよ。お兄ちゃんがいつも飲んでるやつ。」
「何で私が。お兄ちゃんが行けばいいじゃん」
「お兄ちゃん疲れた動けない」
「……はぁ、わかったけど…」
「けどなに?」
「…蓮に変なこと言わないでよね」
「うん、言わない言わない」
お口チャック、と口の前でバツを作る兄。
嫌な予感を感じながらも、私は渋々その場を後にした。
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