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婚約破棄とか言われちゃうのね

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社会人になった初日。報告連絡相談は何よりも重要だと言われて。報告と連絡と相談の区別をつけろと言われて。「いやいやどこまで私の権限で物事動かしていいのか分からへんのにそこの区別つけるの無理ちゃう?」と屁理屈を腹の中で捏ね回して。その帰り道、交通事故で死んだ。あっけなかった。でも悪くない人生だった。
そしてどうやら生まれ変わった世界は、前世の地球の日本とやらで楽しく遊ばせて頂いた乙女ゲームの世界らしい。
そしてどうやら私はこの世界で悪役令嬢らしい。
うん、なんともありがちな設定のお話ありがとう。よく読んだよ、そんな小説。でもねー、自分の人生というか意識というか、そんなものにそんな運命降りかかるとは思ってなかったわー。
で、そこはもう私にはどうしようもないわけで。
ブランダル王国の第一王子の婚約者。
公爵令嬢カレン・ユーリアス。
輝くような金髪に淡い水色の瞳。でもこの子、すっぴんだと垂れ目がちなのね。甘ったるい顔立ちの妖精みたい。わー、別嬪さん。
どぎつい化粧してどぎつい縦ロールしてんのも第一王子の婚約者として周りに舐められないためとかなかなか気概のあるお嬢さんだったのねー。
頑張ったね。偉かったね。
でも明日の第一王子ローランド・ブランダルの誕生パーティーで一方的に婚約破棄されちゃうのよね。
いやいや前世の記憶出てくるの前日かー。ちょっとこりゃ手が打てないなあ。まあしょうがない。生きてりゃ色々あるよ。
ローランド様の腕にしがみついて歩いてたピンク頭の女の子を思い出す。
うーん。まあアテクシ、公爵令嬢だからローランド様の婚約者ってだけで特に彼に対して好きも嫌いもないのよね。ピンク頭に対しては!ただ立場を重んじろとかもあったけど、嫌いだったのよね。そう、ハッキリ言って嫌いだったのよね。
まあしょうがない。
明日のことは明日考えよう。
前日の夜に思い出したところで、どうしようもないしー。
そして、明日の第一王子生誕パーティーはのちに《乙女の泥試合》と囁かれるどうにも収拾のつかない様相を呈すのであった。
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