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二章
外伝 リーフの日常と寂寥そして決意
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「リーフ兄あさだよー!おきてー!」
セカの街南部エリアにあるホナミ孤児院に元気な子供の声が響き渡る。
「起こしてくれてありがと。着替えるから先に行ってて」
「わかったー!きょうもヒナお姉ちゃんのごはんおいしそうだよ!」
リーフが起こしに来た幼い少女を感謝の意味を込めて頭を撫でると、少女はニコニコ笑いながら戻っていった。少し伸びをしてから着替え、朝食を食べに食堂へ向かう。
ホナミ孤児院とは院長であるホナミという女性が領主や資産家から支援を受けて開院した孤児院で、運営費は街からの支援や資産家、孤児院出身者からの寄付等で賄っており、質素な生活を送っている。
リーフはこのホナミ孤児院出身の二十一歳で、孤児院の子供たちにお腹一杯食べて貰いたいという気持ちから農園を経営している。社会に出る前の子供を従業員として雇い報酬として多少の給金と農作物を渡していて、孤児院にとっては数少ない現金収入を得る機会と食事の充実に繋がる重要な役割を担っていた。そのためリーフは今でも孤児院で生活していた。
「リーフおはよう。はい、朝ごはん」
孤児院の子供かつ農園の従業員であるヒナから朝食を貰うリーフ。ヒナは孤児院の中では年長に当たる十四歳で子供達のまとめやくのような存在である。
「ありがとうヒナ。今日も美味しそうだ。頂きます」
「いつものパンと野菜スープだけどね。この前貰った森鹿のお肉も無くなったし」
「森鹿の肉は偶々ゴート君が獲ってくれたものだからなあ。色々お金になるし僕にも狩れれば良いんだけど」
「リーフは荒事が苦手だもの仕方がないわ。怪我の方が心配」
「だよねえ…。ま、今日も農作業頑張ろうか」
「そうよ、地道にコツコツ頑張りましょ」
朝食を終えリーフはヒナと、同じく従業員のヘイルとファラという十一歳になる双子をつれ農園へと向かう。
「バル爺、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「リーフか、おはよう。今日も頑張ろうな」
バル爺と朝の挨拶をかわして作業開始。畑の水やりや雑草抜き、成長度合いを確認してからの間引き。これらの作業を指導しているのがバル爺という老人で、院長の友人の紹介で農園の従業員となっている。リーフが農園を経営していけるのもこのバル爺が農作業から経理まで手取り足取り教えているからだったりする。
作業も順調に進み後片付けをして帰ろうかというところで双子のうち兄であるヘイルがあらたまった顔をしてリーフに話しかけてきた。
「リーフ兄、俺来年から冒険者として働こうと思う」
「ヘイル、いきなりどうしたんだい?」
「俺も最近色々考えてさ。農園の従業員も良いんだけど来年からもチビ達が入ってくるだろ?まだ農園の規模も大きく無いし他の仕事が出来るなら移らないとさ。勿論当分見習いだろうけど街中の雑用なら頑張れると思うし、俺も少しでもファラやチビ達に良いもの食わせてあげたいんだ」
つい最近まで子供だと思っていたヘイルがより幼い子供達のことを考えて行動しようとしている。ヘイルの成長の速さと責任感の強さ、優しさにリーフは驚嘆した。
「ヘイルの意思はわかった。とはいえなんの準備も無しに冒険者になるのは無謀だから何かしらの準備や訓練をしないといけないよね」
「一応今まで貯めたお金で組合で武器の講習を受けようとは思ってる。後は農園で一年間働きながら講習費を貯めたり装備を揃えたりするつもり。ファラも協力してくれるって」
「そうか…。そこまでヘイルが考えているなら僕も協力するよ。知り合いの冒険者にも相談してみるし。皆でゆっくり考えていこう」
「ありがとうリーフ兄!」
「最後にひとつ言わせてくれ。皆のことを考える事が出来るヘイルは凄く成長したと思うし、ヘイルがファラやチビ達を大切に思う気持ちも伝わった。でも同じくらい僕やヒナ、そして皆がヘイルのことを大切に思っているんだ。だから絶対に無茶だけはやめて欲しい。ヘイルが自立して一流の冒険者になるっていうなら何も言わない。でも孤児院に居るうちは危ないと思ったら絶対に無理せずに依頼を諦めて欲しい。ヘイルが命を落とすくらいなら違約金位いくらでも払うから…。」
「わかった。改めて院長やファラと色々話してみるよ。話を聞いてくれてありがと。…先行ってるね!」
今になって照れ臭くなったのかファラの元へ走り出すヘイル。
「今度ゴート君に相談なりしてみようかな…」
誰に言うともなくリーフは呟いた。
「なーに呆けてるの?」
ヒナがリーフの元へとやってくる。
「なんかビックリしちゃってさ」
「皆孤児院が大好きで力になりたいのよ。勿論私もね」
「そっか。そうだよね」
「そういうこと」
心地よい風が吹く。
「ヒナ…十五歳になったら大切な話がある」
「待ってるからね」
「うん。その時になったら皆驚くだろうね」
二人の間に甘酸っぱくも柔らかい空気が漂う。
ヘイルの決心に後押しされたか、はたまた不意にその言葉が出たのか。幼い頃から一緒に助け合って育ってきた二人が想い合うのは必然だったのかも知れない。
「ヘイルー。またリーフ兄とヒナ姉がイチャイチャしてるよ」
「ほっとけファラ。待ってたらきりねーんだし先帰ろうぜ」
もっとも当人以外には周知の事実だったりするのだが。
セカの街南部エリアにあるホナミ孤児院に元気な子供の声が響き渡る。
「起こしてくれてありがと。着替えるから先に行ってて」
「わかったー!きょうもヒナお姉ちゃんのごはんおいしそうだよ!」
リーフが起こしに来た幼い少女を感謝の意味を込めて頭を撫でると、少女はニコニコ笑いながら戻っていった。少し伸びをしてから着替え、朝食を食べに食堂へ向かう。
ホナミ孤児院とは院長であるホナミという女性が領主や資産家から支援を受けて開院した孤児院で、運営費は街からの支援や資産家、孤児院出身者からの寄付等で賄っており、質素な生活を送っている。
リーフはこのホナミ孤児院出身の二十一歳で、孤児院の子供たちにお腹一杯食べて貰いたいという気持ちから農園を経営している。社会に出る前の子供を従業員として雇い報酬として多少の給金と農作物を渡していて、孤児院にとっては数少ない現金収入を得る機会と食事の充実に繋がる重要な役割を担っていた。そのためリーフは今でも孤児院で生活していた。
「リーフおはよう。はい、朝ごはん」
孤児院の子供かつ農園の従業員であるヒナから朝食を貰うリーフ。ヒナは孤児院の中では年長に当たる十四歳で子供達のまとめやくのような存在である。
「ありがとうヒナ。今日も美味しそうだ。頂きます」
「いつものパンと野菜スープだけどね。この前貰った森鹿のお肉も無くなったし」
「森鹿の肉は偶々ゴート君が獲ってくれたものだからなあ。色々お金になるし僕にも狩れれば良いんだけど」
「リーフは荒事が苦手だもの仕方がないわ。怪我の方が心配」
「だよねえ…。ま、今日も農作業頑張ろうか」
「そうよ、地道にコツコツ頑張りましょ」
朝食を終えリーフはヒナと、同じく従業員のヘイルとファラという十一歳になる双子をつれ農園へと向かう。
「バル爺、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「リーフか、おはよう。今日も頑張ろうな」
バル爺と朝の挨拶をかわして作業開始。畑の水やりや雑草抜き、成長度合いを確認してからの間引き。これらの作業を指導しているのがバル爺という老人で、院長の友人の紹介で農園の従業員となっている。リーフが農園を経営していけるのもこのバル爺が農作業から経理まで手取り足取り教えているからだったりする。
作業も順調に進み後片付けをして帰ろうかというところで双子のうち兄であるヘイルがあらたまった顔をしてリーフに話しかけてきた。
「リーフ兄、俺来年から冒険者として働こうと思う」
「ヘイル、いきなりどうしたんだい?」
「俺も最近色々考えてさ。農園の従業員も良いんだけど来年からもチビ達が入ってくるだろ?まだ農園の規模も大きく無いし他の仕事が出来るなら移らないとさ。勿論当分見習いだろうけど街中の雑用なら頑張れると思うし、俺も少しでもファラやチビ達に良いもの食わせてあげたいんだ」
つい最近まで子供だと思っていたヘイルがより幼い子供達のことを考えて行動しようとしている。ヘイルの成長の速さと責任感の強さ、優しさにリーフは驚嘆した。
「ヘイルの意思はわかった。とはいえなんの準備も無しに冒険者になるのは無謀だから何かしらの準備や訓練をしないといけないよね」
「一応今まで貯めたお金で組合で武器の講習を受けようとは思ってる。後は農園で一年間働きながら講習費を貯めたり装備を揃えたりするつもり。ファラも協力してくれるって」
「そうか…。そこまでヘイルが考えているなら僕も協力するよ。知り合いの冒険者にも相談してみるし。皆でゆっくり考えていこう」
「ありがとうリーフ兄!」
「最後にひとつ言わせてくれ。皆のことを考える事が出来るヘイルは凄く成長したと思うし、ヘイルがファラやチビ達を大切に思う気持ちも伝わった。でも同じくらい僕やヒナ、そして皆がヘイルのことを大切に思っているんだ。だから絶対に無茶だけはやめて欲しい。ヘイルが自立して一流の冒険者になるっていうなら何も言わない。でも孤児院に居るうちは危ないと思ったら絶対に無理せずに依頼を諦めて欲しい。ヘイルが命を落とすくらいなら違約金位いくらでも払うから…。」
「わかった。改めて院長やファラと色々話してみるよ。話を聞いてくれてありがと。…先行ってるね!」
今になって照れ臭くなったのかファラの元へ走り出すヘイル。
「今度ゴート君に相談なりしてみようかな…」
誰に言うともなくリーフは呟いた。
「なーに呆けてるの?」
ヒナがリーフの元へとやってくる。
「なんかビックリしちゃってさ」
「皆孤児院が大好きで力になりたいのよ。勿論私もね」
「そっか。そうだよね」
「そういうこと」
心地よい風が吹く。
「ヒナ…十五歳になったら大切な話がある」
「待ってるからね」
「うん。その時になったら皆驚くだろうね」
二人の間に甘酸っぱくも柔らかい空気が漂う。
ヘイルの決心に後押しされたか、はたまた不意にその言葉が出たのか。幼い頃から一緒に助け合って育ってきた二人が想い合うのは必然だったのかも知れない。
「ヘイルー。またリーフ兄とヒナ姉がイチャイチャしてるよ」
「ほっとけファラ。待ってたらきりねーんだし先帰ろうぜ」
もっとも当人以外には周知の事実だったりするのだが。
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