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5巻
5-2
しおりを挟む……いや、その、和馬さんが私との結婚を考えてくれているのは、嬉しいよ。嬉しいけれど、いくらなんでも気が早すぎる。
しかし、彼はことあるごとに、こんな感じで結婚を意識させてくるのだ。そんなに焦らなくても、私は和馬さんから離れることなど考えていないのに。
数日前のことを思い出して必死になる私を見て、先輩は「分かった、分かった」と、頭をポンポンと叩いてきた。
「慌てるタンポポちゃんが面白い……、ううん、可愛いから、ちょっとからかっただけよ」
――今、明らかに「面白い」って言いましたよね?
突っ込みたいが、ここは大人しくしておいたほうが得策だろう。
私は先輩から手を離し、そっとため息をついた。
すると、先輩は改めて私の頭を撫でてくる。
「初めてできた恋人にあれだけ大事にされていたら、浮かれて、すぐ結婚に飛びついてもおかしくないのに……。タンポポちゃんはやたらと悩みがちだけど、それだけ、竹若君との将来を真面目に考えているのよね。そういう真面目で一生懸命なところ、私はいいと思うわ」
「留美先輩?」
見上げた先には、優しく微笑んでいる先輩がいる。
「でも、竹若君が先を急ぐ理由も分かるから、ちょっとずつでも前に進んであげてよ」
「理由ってなんですか?」
不思議に思い問いかけると、先輩はわずかに眉尻を下げた。
「ほら、これだものねぇ。竹若君が少しでも早く、タンポポちゃんを囲い込みたいのも無理はないか」
首を傾げていると、先輩は私をチロリと睨んできた。
「他の部署の社員からも、お菓子をもらっているでしょ? しかも、基本的に男性社員ばかりよね?」
「えっ!? ダメなんですか!? だって、くれるっていうものを、断ったら悪い気がして」
というか、お菓子大好きな私が、断れるはずないだけなのだが。
もしかして、『総務部には、食いしん坊な社員がいる』とか噂されて、他の部署から笑われているのだろうか。そのことを、先輩はよく思っていないのかもしれない。
「すみませんでした。確かに、この年になって、お菓子をもらってはしゃいでいるのはみっともないですよね」
ペコリと頭を下げると、先輩はまた肩をヒョイと竦めた。
「これじゃ、竹若君の気苦労は当分減りそうにないわね。そういうところが、タンポポちゃんらしいけど」
クスクス笑う先輩は、軽く握った拳で私のおでこをコツンと小突いてくる。
「これ以上、竹若君を焦らせたくないなら、やたらにお菓子をもらわないことね」
「はぁ……。気を付けます」
いまいち理解はできないが、先輩の言うとおりにしておいたほうがいいのだろう。
私は大きく頷き返したのだった。
大好きなカフェオレを飲んで、留美先輩とおしゃべりしたら、ちょっと元気が出た。
その後は気持ちを切り替えて、仕事に集中する。
どうしたら、自分に自信が持てるようになるのか。どうしたら、自信満々で和馬さんの隣に立てるのか。そんな方法があるのなら教えてほしい。
だけど、明確な答えが書かれた参考書なんて、どこにもない。
だから、答えはちゃんと自分で出さないといけないのだろう。今の私がいくら考えても、さっぱり分からないけれど。
そういう悩みはあれど、仕事は仕事だ。きちんとしなくてはいけない。プライベートなことでモヤモヤしているからといって、誰も大目に見てくれないのだ。
恋でも仕事でも、とにかく、目の前にあることを――どんな小さなことでも――地道に一つ一つこなしていくしかない。
その達成感が、きっと私を成長させてくれるはずだから。
黙々と作業を進めたおかげで、終業時間を迎える前には仕事を終えることができた。
パソコンとにらめっこを続けたおかげで目がしょぼしょぼして、おまけに肩が凝ったものの、それはそれで心地よい疲労感だった。
「さてと、帰ろうかなぁ」
デスクの上を片付けていると、バッグの中でマナーモードにしていたスマートフォンが震え始める。
取り出して画面を見ると、メールの着信が一件。『お疲れ様です』で始まる和馬さんからのメールには、仕事が終わったので、これから総務部に行くと書いてあった。
「本当に、マメな人だよね」
画面を眺めながら、小さく笑う。
和馬さんが残業にならない限りは一緒に帰るというのに、それでもこうして必ずメールを送ってきてくれる。
それがすごく嬉しい。
付き合いだして落ち着いてきたら、こういった気遣いはなくなっていくものだと思っていた。友達からは、そんなものだと聞いていたから。
ところが、和馬さんは付き合いだしてからも、マメで優しいまま。
たかがメールかもしれないが、その些細なことが嬉しくて、くすぐったくて。文面をそっと指で撫で、ついつい笑ってしまう。
すると。
「ユウカ、なにを笑っているのですか?」
高い位置から、耳に心地いい、やや低めの声が降ってきた。
「え?」
ハッと顔を上げると、目の前に和馬さんが立っている。
「あれ?」
いつもよりだいぶ早い登場だ。
このメールが送られてきたのは、今しがたのこと。いくら総務部と社長室が同じフロアにあるとはいえ、こんなにも早く来られるものだろうか。
パチパチと瞬きをしていると、和馬さんがフフッと楽しそうに笑う。
「あなたに少しでも早く会いたくて、休憩時間にあらかじめ文章を打ち込んでおいたのですよ。送信するだけでしたら、歩きながらスマートフォンを操作しても周囲にはさほど迷惑ではないでしょうし」
笑顔の彼とは対照的に、私の表情はわずかに曇る。
「あの……、わざわざメールをしなくてもいいんですよ? こうして仕事が終わったら、すぐに会うんですし」
すると、和馬さんの形のいい眉がわずかに下がった。
「もしかして、私からのメールは迷惑ですか?」
「違います」
私は首を横に振る。迷惑だなんて、これっぽっちも思っていない。
「そうじゃありません。そこまで気にかけてもらうのは、どうも悪い気がして……」
仕事終わりにメールがなかったからといって、いちいち寂しがったりはしない。愛情が薄れたのだと勘違いして、悲しくなったりはしない。
それに、私は和馬さんのように自分から連絡をすることがほとんどない。そのことに、ちょっと引け目を感じていたのだ。……私がするより先に彼から連絡が来てしまうので、仕方ないと言えばそうかもしれないけれど。
モゴモゴと口ごもりながらも伝えると、和馬さんは安心したように微笑みを浮かべる。
「なにを言うのですか? 私が好きでしていることですから、あなたが気に病む必要はありません。迷惑でなければ、今後も私からの連絡を受け取ってくださいね」
彼の目が柔らかく弧を描いた。
その笑顔とセリフで、ホワッと頬が熱を持つ。
相変わらず、和馬さんは甘くて優しい。付き合いだして三ヶ月になるというのに、いつだって、たくさんの愛情を向けてくれる。
なのに私は照れるばかりで、うまく言葉にすることができない。それどころか、あまりにまっすぐな和馬さんの視線にドキドキしてしまい、咄嗟に俯いてしまった。
「ユウカ?」
不思議そうに私を呼ぶ和馬さん。
私はそんな彼にクルリと背を向け、スマートフォンのメール作成画面を呼び出す。ちょこちょこと指を動かし、素早く送信。
「ユウカ、どうしたのですか?」
和馬さんがふたたび声をかけてきたところで、微かな振動音が私の耳に届いた。
「おや、メールですね。どなたからでしょうか。……社長からでしたら、削除してしまいましょう」
おかしなことを呟いた和馬さんが、スーツの上着ポケットからスマートフォンを取り出し、メール画面を開いた。
彼の様子を横目でチラチラ窺いながら、私は自分のスマートフォンを胸に引き寄せて両手でギュッと握りしめる。
和馬さんは送信者が私だと気付き、少しだけ首を傾げた。
その数秒後――
「ユウカ、なんて可愛らしいことを……」
小さく呟いて、フワリと優しい表情になる。
「照れ屋なあなたなりに、こうして一生懸命に愛情を示してくれるとは。あぁ、私はなんて幸せ者なのでしょうか」
スラリと長い指で、私の髪を撫でてきた。
周りには、まだ人がいる。
そんな状況ではいまだに甘い言葉を伝えられない私は、メールに気持ちを込めたのだ。文字にするほうが、口で言うよりも伝えやすいから。
『メールも電話も、すごく嬉しいです。私も、少しでも早く和馬さんに会いたかったですよ』
言葉にすれば、あっという間に伝わるにもかかわらず、こんなまどろっこしい方法を選んだ私に呆れることなく、和馬さんはすごく嬉しそうに笑ってくれた。
「口にした言葉であろうと、文章であろうと、ユウカの気持ちには変わりありませんから。どんな方法でも、私は嬉しくて仕方がないのですよ」
サラサラと髪を撫でていた手が、最後にポンと軽く頭にのせられる。
「さぁ、帰りましょうか」
穏やかに伝わる温もり。優しい笑顔。なにより、和馬さんがすぐそばにいてくれること。それはカフェオレよりも、留美先輩とのおしゃべりよりも、私の心を弾ませてくれる。
――どうしよう。和馬さんのことが、どんどん好きになってる。
そんなことを、こっそり思った。
すると、「私も、ユウカのことが、ますます好きになっています」と、まるで心の中を読んだかのようなことを言われた。
「え?」
驚いて顔を上げると、彼の口角が緩やかに上がる。
「あなたが考えていることは、大抵分かりますよ。愛の力です」
――なんか、怖いんですけど……
あまりに鋭すぎる彼の勘は、今度は別の意味で私の心臓を弾ませた。
色々な意味で心臓をドキドキさせていた私は、和馬さんに連れられて地下駐車場へと向かう。
他愛のない話をしているうちにどうにか落ち着き、スーパーでの買い物中も奇声を発したり、挙動不審になることもなかった。やれやれである。
夕食用の食材を買い終えると、もちろん、向かう先は和馬さんのマンション。
普段から彼にしてもらうことばかりで、私からしてあげられることは、ほとんどなかった。だからこそ、私の取り柄である料理を和馬さんにふるまいたい。
仕事の後ということで、彼が『疲れているでしょうから、ユウカさえよければ外食にしませんか?』と、お約束のように声をかけてくれた。
だけど、私が作る物は手のかからない家庭料理ばかりなのだ。材料さえ揃えてしまえば、大した作業ではない。
彼にそう伝えながら、並んでマンションの廊下を歩く。すると食材の入った袋を手に提げた和馬さんは、いつもと同じく申し訳なさそうな顔で微笑む。
「ユウカの料理はいつも楽しみですが、それがあなたの負担になっていないかと心配になります」
強引な言動も多いけれど、彼は基本的に私への気遣いを絶やさない人だ。
そんな彼に、ニコッと笑いかけた。
「楽しみにしてくれているのであれば、なおさら作らせてください」
「もちろん、楽しみに決まっているでしょう。ですが……」
形のいい眉を少しだけ下げて、途中で言葉を止めた和馬さんが私を見つめる。
私はさらに笑みを深めた。
「和馬さんと付き合う前だって、家に帰ったら夕食を作っていたんです。一人分多く作るくらい、負担になんてなりませんよ」
それでも、彼の表情はあまり晴れない。
――うーん、どうしようかなぁ。……まぁ、仕方がないか。
恥ずかしさよりも、和馬さんを元気にしたい気持ちが勝る。そこで、ダメ押しのように言う。
「私が和馬さんと結婚したら、朝食もお弁当も夕飯も毎日作ることになると思うんです。そのたびに、和馬さんは申し訳ないって言って、私に料理をさせないつもりですか?」
足を止めた私は、同じように足を止めている彼の顔を下からジッと覗き込む。
私だって、たまにはこんなことも言えるようになったのだ。なに気ない振りをしているものの、内心はものすっごくドキドキしているけどね。
このセリフに、和馬さんがハッと息を呑んで固まった。
「ユウカ……」
切れ長の目を大きくしている彼に、ジワジワと耳が熱くなるのを感じながら続けて告げる。
「だから、遠慮も心配もしないでくださいね」
と言った瞬間、和馬さんに抱き寄せられた。
荷物を持っていない左腕で私の肩を引き寄せ、ギュと自分の胸に押し付ける和馬さん。
まさかの展開に、私は大いに慌てた。
「和馬さん、ここは廊下ですって! 離してください!」
今は誰もいないけれど、いつ人がやってくるか分からないのだ。腕の拘束を解こうと、必死にもがく。
しかし、和馬さんはまったく力を緩めてくれなかった。
「先程、あなたが言ったんですよ。遠慮するなと」
いっそう私を抱き込み、髪に頬擦り。さらには、つむじにキスまでしてきた。
――や、や、や、やーめーてーーーーー!
「そういう意味じゃないんですよ! お願いですから、離してください!」
両手でグイグイと彼の胸を押し返していたところ、「分かりました」と、小さく笑った和馬さんがようやく私を解放する。
とはいえ、油断は禁物なのだ。すかさず大きく一歩下がり、火照った顔で彼を睨みつける。
「なにをするんですか!」
こっちは恥ずかしさで全身から火を噴きそうだというのに、和馬さんは穏やかに微笑んでいた。
「あまりにも嬉しいことを言ってくださるから、つい、抱き締めたくなりまして」
少しも悪びれない彼に、なおも言い放つ。
「『つい』じゃ、ありませんよ! いつも言ってるじゃありませんか。人目に付くところでは、こういうことをしないでくださいねって!」
彼に触れられたくないのではなく、恥ずかしいからやめてほしいのだ。誰にも見られないところだったら、まだ平気だけど。
猫が毛を逆立てるがごとくフーフーと息巻いていると、和馬さんがすごくいい笑顔になった。
見惚れるほど素敵な笑顔であるはずなのに、私の背筋がゾクリと震える。今まで熱くなっていた顔から、徐々に血の気が引いてゆく。
「あ、あの、和馬さん?」
戸惑い気味に声をかけると、彼がソッと首を傾げた。
「……では、人目に付かない場所であれば、なにをしてもいいということでしょうか?」
艶を含んだ声で、ゆっくりと告げた和馬さん。ユルリと弧を描いた切れ長の目が、私をジッと見つめてくる。
和馬さんに無用な遠慮と心配をしてほしくなかっただけなのに、それがどうして、こういう展開に!?
思い切って口にしたセリフがこんな結果をもたらすのであれば、もう二度と言うもんか!
得体の知れない恐ろしさでブルブル震えていると、和馬さんがクスリと笑った。
「自主的に言ってくれないのであれば、言わせるまでですよ。ええ、どんな手を使ってでも」
――ひえぇぇぇっ!
またしても心の内を読まれたことと、獲物を前にした肉食獣のような笑顔に、私の体はさらに大きく震えたのだった。
彼の微笑みに戦々恐々としていたところ、ふいに和馬さんが表情を緩める。
「さぁ、中に入りましょう」
鍵を開ける彼の横顔は、すっかりいつもの好青年だ。
それにしても、和馬さんは結構コロコロと表情が変わる。
基本的には穏やかな笑顔なのだが、笑顔にもいくつかのパターンがあった。
さっきのように有無を言わせないオーラをまとった笑顔になる時もあるし、ちょっぴり意地悪く笑う時もある。
そういえば以前、留美先輩が、『竹若君は表情が乏しいのよね。無表情って訳じゃなくて、曖昧に微笑むばっかりだったの。でも、それって、不用意に人を近付けさせないための防御策だったのね』と言っていたことがある。
これだけかっこいい和馬さんのことだ。うっかり親し気な雰囲気を醸し出せば、女性たちがこぞって押し寄せたことだろう。うまい具合に他人と距離を取っていた学生時代でも、彼に近付く勇敢な女性が絶えなかったというのだから。
それが私の前では、色々な顔を自然と見せてくれていた。こういう時に、自分は彼にとって特別なんだなって思える。
恋愛に興味はあっても、心を動かされることがなかった私が、初めて本気でドキドキした人が和馬さん。彼だけが、私にとって特別だ。
その和馬さんが、同じように私のことを特別だと思ってくれている。それがすごく嬉しい。
リビングにバッグと上着を置き、和馬さんの部屋に置かせてもらっているエプロンを身に着ける。
「じゃ、ご飯を作っちゃいますね」
彼に一言かけてからキッチンへと向かう。
今夜のメニューはカレーライス。和馬さんのリクエストだ。
時間がないから、市販のルーを使う。でも、そのままじゃなくて、ちょっと手は加えるけどね。
仕上げに、ウスターソースとケチャップをほんの少し入れる。この二つの調味料はスパイスやフルーツが絶妙に配合されているので、市販のルーで作ったカレーを簡単にグレードアップさせられるのだ。
――和馬さんも、美味しいって思ってくれるといいなぁ。
野菜を洗ったり、切ったり、炒めたりと、彼の喜ぶ顔を想像しながら調理を進めてゆく。
そんな私を、いつもと同じくキッチンの入り口の壁に寄りかかるようにして立つ和馬さんが見守っていた。
まるで大事な宝物を眺めるような優しい視線に、私はいつまで経っても慣れないでいる。
過去には、ジッと眺められているよりは、手伝ってもらったほうがいいだろうかと考えたこともあった。
けれど、彼と一緒に料理をすると、少し面倒な事態が起こったのである。
泥のついた野菜を洗っていると、私の背後から腕を伸ばして一緒に野菜を洗い始める。つまり、私は彼の腕に閉じ込められた状態となってしまう。
食器を取ろうとして私が背伸びしても届かない場合は、なんと、和馬さんが私を抱き上げて取らせてくれるのだ。
味見の時だってそう。
例えば、煮物の野菜を爪楊枝に刺して彼に渡したとする。和馬さんはその野菜を半分だけかじって、当然のように残りを私へと差し戻すのだ。
『はい、ユウカ。口を開けてください』
『い、いえ、私は……』
『ユウカ』
『こ、こっちの野菜を味見しますから……』
『ユ・ウ・カ』
といった具合に、私が折れるまで「あーん攻撃」をやめない。ちなみに、スープを味見させても、同じ状態となる。
意地悪や邪魔をするつもりがないことは分かるけれど、料理の最中に甘い雰囲気を出されても対応に困るのだ。少し離れた場所から見つめられているほうが、まだマシな気がする。
なので、『私には不用意に近付かない』という約束のもと、キッチンの入り口に立つことを許したわけなのだが。
今夜の和馬さんは、これまでになくいっそう熱のこもった視線で見つめてくる。
私はいったん手を止め、和馬さんにチラリと目を向けた。
「あ、あの、リビングでテレビでも見ていたほうが……。もうちょっと時間がかかりますし……」
オズオズと話しかけると、和馬さんが目を細める。
「テレビなどより、私はユウカを見ていたいのです。それとも、あなたの手伝いをしたほうがいいですか? 遠慮は無用ですよ」
と、例の反論を許さない笑顔で問われ、私はフルフルと顔を横に振ることしかできない。
「手伝いは結構ですから、どうぞ、そこで好きなだけ見ていてください!」
ブンブンと大きく首を横に振り、私はキッチンの奥へと後ずさる。
そんな私の様子に、笑みを深める和馬さん。
「ユウカの手料理はいつも美味しいですから、カレーが楽しみです」
お世辞や愛想笑いではない、彼の心からの言葉と表情。綺麗な顔が、本当に嬉しそうに笑っている。
――なにか、特別いいことでもあった? それとも、そんなにカレーが食べたかったとか?
心の中で首を傾げつつ、私は料理の仕上げに取りかかった。
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