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悠久の王・キュリオ編
決意の夜
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一心不乱に木製の剣を振り続ける小さな人影がある。
少年の額から流れる汗は白い月の光に照らされながらキラキラと光りを放っていた。血が滲んだ手の平の痛みも忘れるほど、彼が鍛錬に夢中になるには理由がある。
(俺はアレスみたいに天才じゃねぇ……任務を与えられたからって浮かれていられねぇんだっっ!!)
「ハァッ!!」
力のままに剣を振り下ろすと、血のぬめりに手を滑らせたそれが赤く色づいて音を立てて地へと転がる。
肩を上下させながら腕で汗を拭い、剣を拾おうとしたそのとき――。
「まだ続けてたのか? カイ」
低い男の声が頭上から降り注ぎ、鍛え上げられたたくましい手が血に濡れた剣を拾い上げた。
「あれ、……おっさん? どこ行ってたんだよ」
食後あたりから姿の見えなかった彼に、呼吸を整えながらカイが近づく。
「お前の任務についてキュリオ様とガーラント殿と話していたんだ」
「お、おう……っ!」
そう聞いたとたん背筋を伸ばした見習い剣士。すでに任務は始まっているかのような緊張ぶりにブラストは苦笑する。
「キュリオ様はお前とアレスに期待と信頼を寄せてくださっている。
お前の任務はあのキュリオ様の大切な姫君の護衛と教育係だ」
「……あの王様の、大切な姫君って……?」
詳しいことを知らないカイが首を傾げるのも無理はない。キュリオに子供がいるという話は噂でも聞いたことがなく、"姫君"の存在が何なのか検討もつかないのだ。しかしそれはキュリオ自らが明日、その口で説明を行うはずだ。だからこそブラストは多くを語らない。
「この国の第二位となられるお方だ」
「……そ、それが……あの王様の言ってた"長期的な任務"ってやつなのか?」
「そうだ。アレスの答えはすでに出ている。それで念のため聞くが、お前は……」
「……お、俺っ!!」
ぎゅっと強く拳を握りしめたカイ。宝石の原石のような瞳を輝かせ、ブラストを見上げた顔は少し前より見違えるほど精悍さを増していた。
「ぜ、絶対やり遂げてみせるっ!! ……だからっっ!!」
(思った通りだな……)
ふっと笑ったブラストは拾い上げた木製の剣をカイへと渡し、頭を撫でる。
「さすが俺の弟子だ! お前もすっかり一端の<見習い>剣士だなっ!!」
「お、おうよっ!! って……誉めてねぇし! 俺にはまだまだおっさんが必要なんだ! これからもよろしくな! ブラスト教官!!」
「ガハハッ!! 言うようになったなぁカイッ!」
若き日の自分にその姿を重ねながらも、やはり少しばかり早すぎるカイの独り立ちに寂しさが募るが、ぐっと堪える。
(……血だらけになるまで剣を振るうのは経験の浅い剣士が陥りやすいミスだ。実践時に負傷したまま剣を握るのは危険だと教えてやらんとな……だが、逆に言えばそんなことも気にならないくらい一生懸命ってことか……)
そんなふたりを陰から見守っていたのは<大魔導師>ガーラントだった。
「……うむ、余計な心配は不要じゃったようだのぉ」
(……キュリオ様とて、できるならばあの溺愛されておる姫君を片時も手放したくはあるまい……。
カイもアレスも大切な方を任された信頼を裏切ってはならんぞ……)
少年の額から流れる汗は白い月の光に照らされながらキラキラと光りを放っていた。血が滲んだ手の平の痛みも忘れるほど、彼が鍛錬に夢中になるには理由がある。
(俺はアレスみたいに天才じゃねぇ……任務を与えられたからって浮かれていられねぇんだっっ!!)
「ハァッ!!」
力のままに剣を振り下ろすと、血のぬめりに手を滑らせたそれが赤く色づいて音を立てて地へと転がる。
肩を上下させながら腕で汗を拭い、剣を拾おうとしたそのとき――。
「まだ続けてたのか? カイ」
低い男の声が頭上から降り注ぎ、鍛え上げられたたくましい手が血に濡れた剣を拾い上げた。
「あれ、……おっさん? どこ行ってたんだよ」
食後あたりから姿の見えなかった彼に、呼吸を整えながらカイが近づく。
「お前の任務についてキュリオ様とガーラント殿と話していたんだ」
「お、おう……っ!」
そう聞いたとたん背筋を伸ばした見習い剣士。すでに任務は始まっているかのような緊張ぶりにブラストは苦笑する。
「キュリオ様はお前とアレスに期待と信頼を寄せてくださっている。
お前の任務はあのキュリオ様の大切な姫君の護衛と教育係だ」
「……あの王様の、大切な姫君って……?」
詳しいことを知らないカイが首を傾げるのも無理はない。キュリオに子供がいるという話は噂でも聞いたことがなく、"姫君"の存在が何なのか検討もつかないのだ。しかしそれはキュリオ自らが明日、その口で説明を行うはずだ。だからこそブラストは多くを語らない。
「この国の第二位となられるお方だ」
「……そ、それが……あの王様の言ってた"長期的な任務"ってやつなのか?」
「そうだ。アレスの答えはすでに出ている。それで念のため聞くが、お前は……」
「……お、俺っ!!」
ぎゅっと強く拳を握りしめたカイ。宝石の原石のような瞳を輝かせ、ブラストを見上げた顔は少し前より見違えるほど精悍さを増していた。
「ぜ、絶対やり遂げてみせるっ!! ……だからっっ!!」
(思った通りだな……)
ふっと笑ったブラストは拾い上げた木製の剣をカイへと渡し、頭を撫でる。
「さすが俺の弟子だ! お前もすっかり一端の<見習い>剣士だなっ!!」
「お、おうよっ!! って……誉めてねぇし! 俺にはまだまだおっさんが必要なんだ! これからもよろしくな! ブラスト教官!!」
「ガハハッ!! 言うようになったなぁカイッ!」
若き日の自分にその姿を重ねながらも、やはり少しばかり早すぎるカイの独り立ちに寂しさが募るが、ぐっと堪える。
(……血だらけになるまで剣を振るうのは経験の浅い剣士が陥りやすいミスだ。実践時に負傷したまま剣を握るのは危険だと教えてやらんとな……だが、逆に言えばそんなことも気にならないくらい一生懸命ってことか……)
そんなふたりを陰から見守っていたのは<大魔導師>ガーラントだった。
「……うむ、余計な心配は不要じゃったようだのぉ」
(……キュリオ様とて、できるならばあの溺愛されておる姫君を片時も手放したくはあるまい……。
カイもアレスも大切な方を任された信頼を裏切ってはならんぞ……)
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