【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす

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悠久の王・キュリオ編

精霊王

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「…………」

おおよその見当がついていたテトラは黙ってブラストの言葉を聞いている。話についていけないカイは”?”と首を傾げて皆の顔を見比べており、アレスは口を閉ざしたまま考える素振りを見せた――。


――どこまでも続く巨大な樹木の森を抜け、黄金の大地をさらに奥へと進む。さらにいくつかの清らかな小川を越えると、やがて見えてきたのは大きな木々に囲まれた精霊王の住まう壮大な神殿だった。

そして風の精霊よりも遥か前を移動するのは光の精霊だ。
彼女は精霊王にとても忠実で、人間に対して危害を加えたことは一度もなかった。そんな彼女だからこそ外交を任されているのだが、すべての精霊が人に対して友好的とは限らない。

神殿へ近づいてみるが彼女が探している王の気配は感じられず、風が木の葉を揺らす音が聞こえてくるだけだった。

『…………』

しばらく考えた彼女は思い出したように、さらに奥にある湖の畔(ほとり)を目指した。
 精霊の国は建造物のようなものがほとんどない。あるのは王の神殿くらいで、ここでは大自然がありのままの姿を保ち、それらに宿った精霊たちが思いのままに永い時を過ごしていた。

眩いほどに光に反射した湖面を揺らすのは樹齢数千年と言われている、天へと向かってそびえ立つ大樹の葉たちだった。
彼女は湖面を滑り、生命に満ち溢れる大樹を見上げる。するとそこには――
長い金の髪を風に揺らし、遠くを見つめる青年の姿があった。

『……王』

光の精霊の呼びかけに気づいた彼は、物憂い気な表情でゆっくり振り向いた――。


「ブラスト教官、教えてください。王が力比べをしているわけでもないのに……なぜ精霊王が第一位の王なのでしょう?」

いくら精霊の国に危険が潜んでいようとも、あのキュリオが突破できないはずがない。
 では何を以て王の位を決定しているのかが問題なのだが、誰もが納得する確固たる証明のようなものがあるはずなのだ。

「…………」

少しの間を空け、口を開いたブラストの緊張感は極限まで高まる。

「現精霊王が……千年王だからだ」

彼の声が直接脳に響き渡るようにアレスの思考を激しく揺らす。

「せ、千年王って……ただの伝説……ではないの、ですか……?」

「……それくらいの頻度だと、俺も聞いている」

ふたりの会話を聞きながらもカイはよく理解できておらず、テトラたちの袖をひいて説明を求めた。

「千年王って?」

「そうだね……」

ややためらいを見せたテトラに代わり、ノエルが応じる。

「王の寿命は長い。その力に比例して生命も長くなると言われているのは知ってるか?」

「へぇ……」

「……教官から聞いてるだろ……」

 在位五百年を超えたキュリオが第二位ということは実力も二番目ということであろうことはカイにもわかっていた。しかし一瞬にして大地を駆け巡り、悠久全土にその力を行きわたらせることが可能な力の持ち主の上をいくというのはどういうことなのだろうか。

「いまの精霊王は齢千年を超えている。その彼の力がどれほどのものかなど誰も知らない。その真の強さを知ることが出来るとしたら……」

「……したら、……?」

カイはあまりの緊張に咽喉がからからに乾いていた。想像を絶するような天上での話に気が遠くなりそうな違和感を覚える。

「それは戦いの時だ」

さらりと言ってのけた彼は涼しい顔で恐ろしいことを呟いた。真っ青になる幼いふたりを見たテトラが肘小突くように彼を咎める。

「……脅かしてどうする」

「僕は本当のことを言ったまでだ」

ノエルは口を尖らせながら次の目的地へとすたすた歩きだしてしまう。しかし、まだショックを受けているらしいアレスはカタカタと震え、その場から動くことができない。

「……千年王の精霊王……すべての力の源と言える精霊を統べる彼がもし争いを起こしたら……」

物騒なことを呟いたアレスを元気づけるようブラストが顔を覗きこんだ。

「アレス、物は考えようだ。精霊王はこの長い時の間、戦いを起こしていないだろう?」

「は、はい……っそのような話を聞いたことは……」

「な? それだけ温和な王様だってことだっ!! もしその気ならとっくに戦争でもなんでも起こしてると思うぞ!!」

ガハハと笑いアレスの背中を叩いたブラスト。
彼の不安を取り除くために発した言葉だが、精霊王がどんな人物なのか……正直誰もわからなかった――。

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