94 / 212
悠久の王・キュリオ編
エデン、永遠の恋人の面影
しおりを挟む
「何度も足を運んでいただき……申し訳ありません」
伏し目がちに視線を下げた彼は女性にも見紛うほどに美しく、とても物腰の柔らかい好青年だ。
「いや、恋人を見舞うのは当然のことだからな。大変だと思うが、お前も休めよ」
「……お気遣いありがとうございます」
多くは語らず、ふたりはそのまま建物への入口をめざし歩く。
その途中に『彼女』が好きだった背もたれ付きの長椅子が見えて――
「…………」
記憶を辿るようにエデンは目を細め、思い出のなかの少女の姿と声を重ねる。
"ここが好きなのか?"
視線の先には滞りなく流れる噴水、それを囲む一面の花々がすぐそこにあるにも関わらず、少女が見つめているのは青いベルベットを貼りつけたような何の変哲もない頭上の空だった。
"大地は繋がっていなくても、この空の向こうにはエデン様のお国がある。……そう思うといつまでも見上げてしまっている自分がいるんです"
"……空だけじゃないさ。俺たちは心も繋がってる。そうだろ?"
エデンは背後から長椅子の背もたれの頭頂部へ手をつき、少女の顔を上から見下ろした。
"ふふっ、そうですね"
穏やかに微笑む彼女の瞳はなによりも、誰よりも澄んでいた――。
「エデン殿?」
遠くを見つめたまま足を止めた<雷帝>を振り返りながら、訝しげにその視線を追う青年。
「……昔のことを少しな。そういえばあの椅子に誰か座っているのか? やけに綺麗だな」
「えぇ、そうですね。気づけば誰かが、……という感じでしょうか」
それ以上彼は語らなかったが、エデンには大いに心当たりがあった。
「そうか。あいつらは今どこにいる?」
「ここ数日戻っておりません。呼び戻しますか?」
「いや、いい。俺の名前を出したところで戻って来るやつはいないだろうからな」
第四位の王・エデンの呼び出しにも応じない人物とは一体何者だろう、と誰もが思うはずだ。しかし、その不在の彼らは一国の王に対するこの非礼な態度を改めるつもりはないのだという。それをエデンは咎めたりはしないが、時折みせる鋭い敵意が大きな溝をつくっている。
いつでもそんな彼らの関係に誰よりも心を痛めていたのが彼女だった。
"お願い、喧嘩しないで"
優しい少女はいつも眉間に皺をよせ、火花を散らす男たちの間に割って入っていた。
――そして彼女は知らない。自分がこの男たちに焦がれるほど愛されていたということを――。
伏し目がちに視線を下げた彼は女性にも見紛うほどに美しく、とても物腰の柔らかい好青年だ。
「いや、恋人を見舞うのは当然のことだからな。大変だと思うが、お前も休めよ」
「……お気遣いありがとうございます」
多くは語らず、ふたりはそのまま建物への入口をめざし歩く。
その途中に『彼女』が好きだった背もたれ付きの長椅子が見えて――
「…………」
記憶を辿るようにエデンは目を細め、思い出のなかの少女の姿と声を重ねる。
"ここが好きなのか?"
視線の先には滞りなく流れる噴水、それを囲む一面の花々がすぐそこにあるにも関わらず、少女が見つめているのは青いベルベットを貼りつけたような何の変哲もない頭上の空だった。
"大地は繋がっていなくても、この空の向こうにはエデン様のお国がある。……そう思うといつまでも見上げてしまっている自分がいるんです"
"……空だけじゃないさ。俺たちは心も繋がってる。そうだろ?"
エデンは背後から長椅子の背もたれの頭頂部へ手をつき、少女の顔を上から見下ろした。
"ふふっ、そうですね"
穏やかに微笑む彼女の瞳はなによりも、誰よりも澄んでいた――。
「エデン殿?」
遠くを見つめたまま足を止めた<雷帝>を振り返りながら、訝しげにその視線を追う青年。
「……昔のことを少しな。そういえばあの椅子に誰か座っているのか? やけに綺麗だな」
「えぇ、そうですね。気づけば誰かが、……という感じでしょうか」
それ以上彼は語らなかったが、エデンには大いに心当たりがあった。
「そうか。あいつらは今どこにいる?」
「ここ数日戻っておりません。呼び戻しますか?」
「いや、いい。俺の名前を出したところで戻って来るやつはいないだろうからな」
第四位の王・エデンの呼び出しにも応じない人物とは一体何者だろう、と誰もが思うはずだ。しかし、その不在の彼らは一国の王に対するこの非礼な態度を改めるつもりはないのだという。それをエデンは咎めたりはしないが、時折みせる鋭い敵意が大きな溝をつくっている。
いつでもそんな彼らの関係に誰よりも心を痛めていたのが彼女だった。
"お願い、喧嘩しないで"
優しい少女はいつも眉間に皺をよせ、火花を散らす男たちの間に割って入っていた。
――そして彼女は知らない。自分がこの男たちに焦がれるほど愛されていたということを――。
0
あなたにおすすめの小説
【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】
リコピン
ファンタジー
前世の兄と共に異世界転生したセリナ。子どもの頃に親を失い、兄のシオンと二人で生きていくため、セリナは男装し「セリ」と名乗るように。それから十年、セリとシオンは、仲間を集め冒険者パーティを組んでいた。
これは、異世界転生した女の子がお仕事頑張ったり、恋をして性別カミングアウトのタイミングにモダモダしたりしながら過ごす、ありふれた毎日のお話。
※日常ほのぼの?系のお話を目指しています。
※同性愛表現があります。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!
鏑木 うりこ
ファンタジー
幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。
勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた!
「家庭菜園だけかよーー!」
元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?
大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる