【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす

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悠久の王・キュリオ編2

罪、

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 一方、<六の女神>の屋敷へ呼び出された<三の女神>シャルトルーズは、五十もの数の女神らの前に立たされながら非難の声と視線を浴びせられていた。

「さきほどから黙ってらっしゃるけど、ウィスタリアさんがなにをなさったか言わないおつもり?」

「自ら除名をご希望されるだなんて……なにか不名誉なことでもなされたんじゃなくて?」

「ウィスタリアさんは一族の長に向いていなかったのよ。わたくしは初めから<六の女神>ミアハさんが良いと思っておりましたわ」

 名もわからぬ下位の女神たちを引き連れた<六の女神>ミアハによる、一族会議とは名ばかりの拷問が勢いを増して加速するのもシャルトルーズが無言を貫いていたからである。

「…………」

「ほほほっ!
皆さんご不満はおありでしょうけれど、ウィスタリアさんが退くからといって事態は解決いたしませんわ」

「え……? なぜですの?」

 高らかな勝利宣言とも終える笑い声とともに、きつめのメイクに派手なドレスを纏った中年の女が高価な扇子をヒラヒラさせながらこちらに歩いてくる。詳しい情報が行き渡らぬ下位の女神らは、それだけに留まらぬことを匂わせた意味深な発言に息をのんだ。

「まさかスカーレットさんが一族の長に成り代わるだなんて……言い出しませんわよね?」

 目の前で立ち止まったミアハは煌びやかな扇子の先でシャルトルーズの頬を叩くと、言い逃れを許さぬと言うような眼差しで彼女を吊るし上げた。

「…………」

 それでも尚、挑発に乗らぬシャルトルーズは無表情のまま遠くを見つめる。

「……ミアハさん、どういうことですの? スカーレットさんが……なにか問題でも?」

 男性と女性の美を併せ持つスカーレットのファンは民に留まらず女神たちのなかにも多い。さらに彼女が貢献する働きはウィスタリアを遥かに凌ぎ、スカーレットを長にと声をあげる者たちが跡を絶たない。

 <六の女神>の敵でも味方でもない下位の女神のひとりが不満げな声を漏らす。
 彼女はウィスタリアが心労で倒れたため、一線を退いたとしか聞いていなかったのだ。必然的にその跡を継ぐのは<二の女神>スカーレットだと信じて疑わなかった下位の女神は"あの事"を知らないらしい。

「教えて差し上げてもよろしいのだけれど……どうしましょう? シャルトルーズさん。あなた方が大人しく長の座を明け渡してくだされば、スカーレットさんのことは秘密にしてあげないこともないわ」

 数段上から物を言う態度を変えないままに裾の長いドレスを翻す。本来ならば<三の女神>が決められぬようなことをここで決断させようとするミアハにも理由があった。

「……ミアハさん。言いたいことはそれだけかしら?」

 それまで黙っていたシャルトルーズがいよいよ口を開く。どうやらスカーレットの件に触れられたのが癪に障ったらしい。

「……"それだけ?" そんな簡単に片づけられるようなことではありませんわ!」

 まだ二十にも満たない小娘の口の利き方が気に入らないミアハの額に青筋が走る。

「私は姉たちと違って人の面倒を見るのは嫌いなの。努力もしない人間たちの面倒は特に。……なにが言いたいかお分かり?」

 冷めた目つきでミアハを見下げるシャルトルーズ。黄緑色の瞳はさらに温度を下げ、彼女が抱いている怒りがこれでもかと伝わってくる。

「……っなにがおっしゃりたいかさっぱりわからないわ!
私に対する侮辱と捉えますけれどよろしいのでしょうね!?」

「言っている意味がわからないのに怒りが芽生えるなんて……面白い人ね。
私はスカーレットしか適任者はいないと思っている。万が一にもミアハさんが長になるだなんて笑止千万だわ。いままで民のために何かなさって?」

「……っ! で、ですから! スカーレットさんは……!!」

「少なくともスカーレットは他人の弱みに漬け込むような卑怯な人間ではないわ。
自慢の役に立たない下僕でも使って<二の女神>が好かれる理由を研究してみてはどうかしら?」

「……っな、なんですって!? 姉の影に隠れているだけの<三の女神>が偉そうな口をっっ!!」

 逆上したミアハがシャルトルーズに掴みかかろうとした瞬間、その広間の扉が音を立てて開いた。

――ギィッ

「待ってくれ!」

「まぁ……スカーレットさん……」

 まさかのドラマチックな王子様の登場に場にいた女神たちがザワつき、事態の収拾を期待する女たちの視線が一斉に彼女へと集まった。

「私から皆に説明させてほしい。
ウィスタリアの犯した罪、そして私の罪を――……」  
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