【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす

文字の大きさ
84 / 211
悠久の王・キュリオ編2

現れた王の思念体

しおりを挟む
 キュリオの目の前に現れたのは人を模(かたど)った……まるで日の光そのものだった。
 
「貴方は――」

 顔は見えない。薄っすらと弧を描いた口元がわずかに見えるばかりの神々しい光の塊。
 纏うローブのような長い衣さえ光輝いて、オーロラのように緩やかに靡いている。

"君の想像通りさ。遥か昔にこの肉体は滅んでしまっているけどね"

「……っ!」

(これは……<初代王>の思念体、なのか?)

 数万年も昔の王の力や残留思念が残ってるなど常識から考えれば有り得ない話だ。
 しかし、神具を与えられる王や、魔法の存在するこの世界では有り得ない話として片づけるには些か愚かである。

 キュリオが頭を下げる人物など今まで唯ひとり<先代王>セシエルだけだったが、相手がかつての<悠久の王>であるならば、そのすべての王たちは至極尊敬に値する存在である。

「お初にお目にかかります<初代王>。私は現<悠久の王>キュリオと申します」

 片手を胸に添え、半歩下がって腰を低くし空色の瞳を閉じたキュリオ。

"なんと……<悠久の王>らしい見事な器量だな。もう少し物怖じするかと思っていたぞ"

 感心したように頷いた<初代王>にキュリオは顔を上げると、恐らく彼の瞳のある場所を見つめ口を開いた。

「貴方はずっとここにおられたのですか?」

"そうだね"

「何の為です?」

"…………"

 急に口を噤んでしまった<初代王>にキュリオの冴えわたった頭脳は的を得て射貫いたようだ。

(<初代王>は後世の王へ伝えたいことがあるのだろう。そうでなければ数万年もの長い間、思念を留まらせる意味がない。もしくは……伝えていく過程で王を欠いた時代がすぐ訪れたか……)

 <先代王>から<次代の王>へと語り継ぐ情報量はそれはそれは膨大な量である。
 だからこそ数年に渡り共に過ごし、日々の生活の中で学び教えていくことが最良の選択であることを身を以て体験したキュリオは断言できる。重要な話であれば尚更、繰り返し言い聞かせることで<次代の王>は事の重大さを思い知り、今度はそれを<後世の王>へ伝え教える側となるのだ。

(彼自身が言い残したこと。もしくは、彼の意志を継ぐ者がどこかで欠如したか……)

 如何せん、憶測を巡らせるにも限界がある。<初代王>から数代先までの王の記録が残っていないのだ。
 この場所に彼がいるということは、その近くに手がかりが残されているということとなり、空白の時代が埋まるかもしれないという期待もあった。
 だが、当の本人の思念体が残っているということは、想像を越えた"何か"がそこにはある。キュリオの考えがそこに行き着くのは、絶滅した動植物や聖獣の生体、当時の生活を伝えるだけならば数万年もの間そこに存在し続けるなど途方もない一手を選ぶわけがない。

(……しかし数万年もの間、当時の姿と意志を保つなど……とてつもない力を持った御方であることは間違いない)

 キュリオの視線が鋭くなる。
 こんな不躾な視線を送るなどあってはならないことだが、<初代王>と顔を合わせるという奇跡よりも、その意味に深刻な事情が隠されているであろうことをキュリオは確信に近いものを得ているのだ。



"君は賢いな、キュリオ。
だが……後世の王というよりは、私は君を待っていたんだ"



 予想を上回るキュリオの明晰な判断に嬉しそうなトーンで答えた<初代王>だったが、まるで心を読む<冥王>のような物言いと名指しされたキュリオは大きな衝撃を受けた――。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在 唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話 中山加恋(20歳) 二十歳でトオルの妻になる 何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛 中山トオル(32歳) 17歳の加恋に一目ぼれ 加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する 加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる 会社では群を抜くほどの超エリートが、 愛してやまない加恋ちゃんに 振り回されたり落ち込まされたり… そんなイケメンエリートの ちょっと切なくて笑えるお話

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

処理中です...